空港で使うには注意が必要かも

「レーザー避雷針」開発。落雷対策が進歩する可能性

Image:University of Geneva

ジュネーブ大学、パリ工科大学、スイス連邦工科大学ローザンヌ校他からなる欧州コンソーシアムが、高出力レーザーで雷を誘導する実験を行い、成功したと発表した。

落雷は、家電製品を故障させたり、停電を引き起こすだけでなく、ときには火事や直撃による死傷者を出すこともある厄介な自然現象。ほとんどの人は、まさか自分に雷が落ちることはないと考えているだろうが、世界中では年間およそ2万4000人が雷に撃たれて死亡しているそうだ。

雷対策としては、かのベンジャミン・フランクリンが1752年に発明した避雷針が今も一般的に使われていて、高層ビルの屋上や煙突、一般家屋に至るまで最も地上から突き出たところに設置して、雷の電力を、電線を通じて地面に逃がす役割を担っている。しかし、避雷針だけでは完全に被害を無くすことはできない。

欧州コンソーシアムは、レーザー避雷針(Laser Lightning Rod:LLR)と称する技術を開発し、スイスの山頂で実際に落雷させる実験を行った。

Image:University of Geneva

LLRは、雷を伴う荒天時に、レーザーを雲に向けて照射することで、空気中に電気抵抗の少ない経路を作り出す。レーザーは光なので、避雷針よりも簡単に、はるかに長く空に向けて伸ばせる。

研究の著者のひとりであるJean-Pierre Wolf氏は「非常に高出力のレーザーパルスを大気中に放出すると、非常に強い光のフィラメントがビーム内に形成される」「このフィラメントは空気中に存在する窒素分子と酸素分子をイオン化してプラズマを発生させ、このプラズマが導電体になる」ことで雷を誘導すると説明している。

実験では、平均出力1kW、1パルスあたり1ジュールのエネルギーを放出し、秒間約1000パルスを発生させるレーザーシステムを、年間約100回も落雷があるというスイス・ゼンティス山頂の塔に設置した。

その結果、2021年6~9月の間にシステムを起動した状態で4度の落雷を誘導することに成功したとのこと。「(雷による)放電がタワーに到達する前にほぼ60mもレーザービームに追従し、保護面の半径が120~180 mに増加することがわかった」とWolf氏は述べた。

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研究者らは、このシステムがもっと雷を確実に誘導することが可能になれば、さまざまな場面で雷保護が効果を発揮する可能性がある。たとえば、宇宙ロケットの発射場やその周辺でこのシステムを使うことで、ミッションが延期になる可能性を引き下げることができるかもしれない。また空港や発変電所の各種工場の雷撃による故障停止、森林火災の発生などを避けるのにも役立つ可能性がありそうだ。

今回の実験を行ったLLRプロジェクトの最終的な目標は、レーザーで10mの避雷針の効果を500mにまで拡大することだと、チームは述べている。

ちなみに、雷を誘導する実験としてはオーストラリア国立大学、ニューサウスウェールズ大学、テキサス A&M 大学、カリフォルニア大学ロサンゼルス校からなる研究チームが、グラフェンの微粒子を中空のレーザー光に閉じ込めて照射する仕組みを試していた。このときの研究者らも、レーザーがガスをイオン化するだけの出力があれば、グラフェン微粒子が不要になる可能性があると考えていた

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