IoTに電池は必要なくなる?

光合成で発電する藻類を使った電池、IoT機器を1年以上駆動可能

実験で使用した藻類発電システム(Image: Paolo Bombelli)

ケンブリッジ大学の研究者らが、藻類を使った環境発電システムを開発したと発表。この単三電池ほど大きさの機器は、光合成の際に電流を発生する藻類を内部に含み、IoTデバイスのCPUを1年以上駆動する実証実験に成功した。

藻類には、その種類によって水素を生成したり、排水を浄化したり、大気中のCO2除去、バイオ燃料の原料になるなど、様々な方法でクリーンな技術を発展させる可能性があり、注目されている。ケンブリッジ大学の研究者らは、この藻類が発電する能力もあることに着目した。

このシステムは一般的に入手可能かつ安価、そしてリサイクル可能なパーツで作られている。構造的には、小さな容器にシネコシスティスと水を入れただけのものだが、この藻類が発生する電気はアルミニウムの電極を通じて外部へ供給できるようになっている。そして共同研究者としてこの研究に協力しているチップメーカーのArmが、テスト用プロセッサーの「Arm Cortex M0+」を搭載した機器やデータ収集用のクラウドインターフェースなどを提供して実験を行った。

研究者らはこのシステムを屋内および半屋外環境に設置してその動作を確認してみた。その結果、IoT機器が駆動できる程度の電力であれば、長期間にわたり確実に生成・供給可能なことが確認できた。また、昼間だけでなく周囲が暗い夜間にもある程度の電力を発生していることもわかった。どうやら日中に夜間のための “エサ” となる物質を生産し、暗くなればそれを消費して電力を発生しているようだ。

また、Energy&EnvironmentalScienceに発表された論文では、システムは6ヶ月のあいだ動作し続けたと報告されているが、研究の筆頭著者パオロ・ボンベリ博士は「その後1年を過ぎた現在もシステムは動作し続けている」と述べている。

IoT機器は低価格のコンピューターチップとワイヤレスネットワークにより構成される。その用途はスマートウォッチから工場の温度センサーまで幅広く、ケンブリッジ大学は2035年までには世界で1兆ものIoT機器が利用されるようになることが予想されると述べている。そして、仮にそのひとつひとつにリチウムイオン電池で電力を供給しようとすれば、必要なリチウムの生産量は現在の3倍に膨れ上がるとのことだ。

今回の藻類環境発電システムが、将来実用に供するようになれば、環境負荷の大きな削減が期待できるかもしれない。研究者らは5年以内に商用利用が可能になると予想している。