シンガポール政府と交渉中とのこと

TSMCがシンガポール工場の建設を検討しているウワサ。半導体不足の解消のため

image:TSMC

iPhoneやMac向けのチップ等を製造する台湾TSMCが、世界的な半導体不足に対応するため、シンガポールに新工場の設立を検討しているとの噂が報じられている。まだ最終決定はされておらず、計画の詳細も議論中ながらも、同社はシンガポール政府と交渉中とのことだ。

米The Wall Street Journalは、この新工場がレガシー(旧型)チップ、つまり最先端技術を使わない半導体に対応したものと伝えている。計画に詳しい関係者は、TSMCは7-28nmのチップ生産ラインの実現可能性を検討している、と述べているそうだ。

ちなみに、「10nm」「7nm」などは半導体の回線幅を意味しており、プロセスルールと呼ばれる。この数値が小さくなればなるほど、一般的には処理能力は向上し、消費電力は削減される傾向がある。iPhone 13シリーズに搭載されたA15 Bionicは5nmであり、それより2年前のA13(iPhone 11搭載)が7nmだ。

これらレガシーチップは、旧式の技術・製造装置で作られており、自動車からスマートフォンまで幅広いデバイスに使われているものだ。ゆえに、それらの生産不足はアップルを含めて、サプライチェーンが支障をきたす最悪のボトルネックともなっている。

このWSJ記事でいう「政府との交渉」とは、「資金援助をする可能性」、つまりは工場の建設に当たって優遇措置を求めていることを意味している。

また米9to5Macは、シンガポールでの新工場は、TSMCの自国(台湾)への一極集中を緩和することにも繋がると指摘している。一箇所に生産能力が集中するリスクが高いことは、中国・上海がロックダウンしてMacBook Proの納期が大幅に延びていることでも証明されている。また、米政府が「中国の台湾侵攻」に警鐘を鳴らすなかでは、TSMCが自国の外に生産拠点を分散したほうが賢明とも思える。

今回の新工場はあくまで検討段階にすぎず、実現したとしても建設には時間がかかり即効性はなさそうではあるが、長期的に見ればレガシーチップの安定的な供給に繋がるかもしれない。

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