想像以上に快適

Meta Quest 2に最強装備が誕生。「Proコントローラー」を使ってみた

編集部:平山洸太

Metaから10月にVRヘッドセットの上位モデル「Quest Pro」が発売されたが、226,800円(税込)と、買うのには勇気のいる値段だ。もし気になって「Quest 2」から買い換えようとしても、手の出せないユーザーが多いだろう。

記者もそんなユーザーの一人だが、このQuest Proで得られる体験の一部を、普及価格帯のQuest 2で体験する方法がある。それが、Quest Proの付属コントローラーをQuest 2で使うことだ。

実はこのコントローラー、「Meta Quest Touch Proコントローラー」として、公式ストアでアクセサリーとして販売されている。価格は37,180円(税込)とやや高く、発売当初にQuest 2を買った方ならヘッドセット本体とほぼ同じなわけだが、実際に使ってみると思いのほか良かった。

コンパクトなデザイン

ひとつめのポイントは、VRヘッドセットのコントローラーにありがちな「リング状のデザイン」がないこと。記者はVRゲームに夢中になってしまうと、ついコントローラー同士をぶつけてしまうことが多いが、このリングがないことでそれも起きにくくなる。

熱中しているとついコントローラー同士がぶつかることも

Quest 2のコントローラーでは、リング部分に赤外線LEDが搭載されていて、これをヘッドセット側のカメラで読み取ることで、コントローラーの位置を捉えている。一方、Quest Touch Proコントローラーには、本体に3つのカメラが搭載されていて、その映像を用いてトラッキングを行うことでコントローラーの位置を割り出す仕組みだ(セルフトラッキングと同社は説明)。

表側に1つ、裏側に2つのカメラを搭載する

このような仕様のためか、Quest Touch Proコントローラーは、通常のコントローラーよりも重く、持つと中まで機構が詰まっているような塊感もある。そういった面で高級感を感じるし、グリップの裏面にはラバーが貼ってあるなど、やはり値段が高いだけはあると感じる。また従来は乾電池1本だったのに対して、Quest Touch Proコントローラーは充電式になっている。

重くなることで、「Beat Saber」のようにコントローラーを振り回すゲームにはデメリットがあるかと思ったが、実際にプレイしてみるとそんなことはなかった。むしろリング部分がないことで重心が手の中にくるので、逆に安定するように感じたくらいだ。

セルフトラッキングでデメリット解消

また試して驚いたのは、Quest Touch Proコントローラーでは、体の背面などに持ってきたとしても問題ないことだ。これまでのコントローラーでは、先述のようにヘッドセット側のカメラでコントローラーの位置を捉えていたため、コントローラーが隠れるような位置に持ってくると、動きが止まってしまう。しかし、Quest Proのコントローラーではそれがない。

このような位置にコントローラーを持ってきても問題ない

基本的にコントローラーは手を前に向けて使うので関係ないと思うかもしれないが、ゲームでいえば「Holopoint」など、弓を使うゲームだと特にありがたみを感じるはず。弓を引くとどうしても片手が後ろになってしまうが、そこでトラッキングが途切れると、引いた後の角度調整がしづらくなる。

こういった “後ろでもコントローラーがトラッキングされる” というのは、htcのVIVEシリーズなど、アウトサイドイン方式のモデルのメリットだった。一方で外部センサーの設置が必要だったりと、導入コストも高い。Questシリーズのようなインサイドアウト方式では、逆に本体だけで完結するので手軽だが、上記のように背面はトラッキングできないデメリットがある。

左がProコントローラー、右がQuest 2の付属コントローラー

たとえば、アウトサイドイン方式の「VIVE Cosmos Elite」は10万円以上するし、同機はスタンドアローンではないので高性能なPCも必要だ。スタンドアローンで動くQuest 2が128GBモデルで約6万円ということを考えると、約3.7万のQuest Touch Proコントローラーを組み合わせても安い(リンク機能を使えばQuest 2でもPCを使ったVRは可能)。

やや話が脱線するが、ソニーから気軽にモーションキャプチャーが行える「mocopi」が来年1月に発売される。これまではアウトサイドイン方式のメリットとして、センサーを追加することで足や胴体などの動きもトラッキングできる部分があった。mocopiを使えばQuest 2などでも全身の動きをキャプチャーできるので、「VR Chat」などで交流したいユーザーにとっても、インサイドアウト方式が選択肢に入る時代になった。

Image:SONY

振動による没入感が向上

2つめのポイントは、Quest 2のコントローラーと比較して、振動の質が良いことだ。端的に言うと、Quest Touch Proコントローラーは、振動にエッジがある。

検証のためにQuest 2初期アプリの「Oculus First Contact」を立ち上げたが、ボタンを押した際の感覚も、ピストルを撃った際の感覚もまったく違う。これまではボタンを押すと「振動が来る」くらいの体験だったが、「押したときと離したときの違い」まではっきりと分かる。

スクリーンショットだと分かりづらいが、ボタンを押しているところ

ピストルについても、撃った際に振動があるのは同じだが、Quest 2のコントローラーでは「ヴォン」というような振動なのに対し、Quest Touch Proコントローラーでは「コツン」というような硬質さがある。また振動にエッジがあるからか、振動自体も大きいように感じる。

もちろんホーム画面でアプリを選択する際の振動も違うし、Beat Saberで切った際の感覚も違う。たかが振動と思うかもしれないが、没入感にかかわる大きな要素の一つなので、その向上は体験の質が高まることに繋がる。

同社はこの振動を「TruTouchハプティクス」と呼んでいる。公式サイトには「局所的なトリガーと親指の反応により、新たなレベルのインタラクションとリアリティを実現します」と説明されているが、トリガーと親指については、今回の検証では体感できなかった。

なおQuest 2は、振動の大きさを最大にすると、振動がはっきりわかるほど振動音が聞こえる。一方でQuest Touch Proコントローラーでは、振動音はあまり聞こえないレベルに留まっているので、これは地味に嬉しいポイントだ。

高いけど欲しくなる

冒頭で触れた通り、Quest Touch Proコントローラーは37,180円(税込)と、コントローラー単体の値段としてはかなり高額に思える。しかしQuest 2に買い足すことで体験を向上できることを考えると、高いことはわかったうえでその価値があるように感じた。

今回はメーカーからお借りして検証したが、正直、返却するのが惜しい。2023年後半の発売と噂されている「Quest 3」がどう進化するか気になるところだが、引き続きProコントローラーに対応するだろうし、コスト的に同レベルのものが付属する可能性は低そうなので、一年のご褒美としてポチるか悩みどころだ。

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