第5位の大株主に
任天堂の株式約5%をサウジ系ファンドが取得。ゲーム企業に多数投資、表現の自由に懸念も
サウジアラビアの政府系ファンドが、任天堂の株式の5.01%を取得して第5位の大株主になったとBloombergが報じている。また、英Financial Timesは取得額を29億8,000万ドル(約3,840億円)と推測している。
この株式取得は、サウジアラビアの実質的な支配者とされる、ムハンマド・ビン・サルマン皇太子が率いる「Public Investment Fund」(PIF/サウジアラビア政府が100%出資)が行ったものだという。任天堂の広報担当者はBloombergに対して、「この投資は報道で知ったことであり、それ以上のコメントは控える」と回答している。
今回の動きは、PIFがゲーム業界に対して行ってきた一連の投資のうち、最新かつ最大のものだ。今年初めには、カプコンと韓国企業ネクソン(東京証券取引所に上場)の株式を5%取得。さらに2020年後半にも、米ゲーム大手パブリッシャーのElectronic ArtsやActivision Blizzard、Take-Twoに出資をしていた。
またムハンマド皇太子の財団は、『メタルスラッグ』や『THE KING OF FIGHTERS』で知られるSNKのほぼ全株式(約96%)も保有している。
なぜ、PIFはゲーム業界への投資を加速させているのか。同ファンドは、サウジアラビア政府の富を増やし、世界のエネルギー源が石油からその他に移行するにあたる今後も国家経済を支えるために存在している。石油とガスが輸出の70%、国内総生産の約半分を占めている同国では、天然資源に代わる収入源を確保する必要に迫られている。
ほかPIFはUberの大株主でもあり、ディズニーやFacebook、ボーイングの株も小規模だが保有している。ゲーム業界は重要な投資先ではあるが、その1つに過ぎないといえる。
ただし問題は、ムハンマド皇太子が反体制派記者、ジャマル・カショギ氏の死亡に深く関わっていると見られることだ。また、サウジアラビア政府は表現の自由に対する弾圧が絶えず、スパイウェア「Pegasus」によりジャーナリストを監視していたとの疑いもある。今後は投資を受けたゲーム企業各社も、何らかの対応を迫られるのかもしれない。