宇宙にはまだ謎がたくさん

宇宙に謎の「幽霊光」発見。20万枚におよぶハッブルの画像解析で判明

Image:NASA、ESA、Andi James (STScI)

夜空には無数の星や光の点が見えるものだが、大きな都会に住む人々は、周囲の灯りが強すぎて暗い星や銀河の淡い光を見ることができない。これは天体観測でも同じで、われわれが非常に遠い天体や銀河を観測する際にも、太陽系内の光がそれらをかき消してしまう場合がある。

アリゾナ州立大学がリーダーとなり、米国とオーストラリアの多数の大学機関、NASA、宇宙望遠鏡科学研究所(STScI)などで構成されている「SKY-SURF」プロジェクトの研究チームは、地球から観測できる光をカタログ化し、どれだけがわれわれと同じ太陽系からの光か、どれぐらいがもっと遠くの宇宙にある星や銀河からのものか、を明らかにすることを目指している。

そしてこのプロジェクトでは、ハッブル宇宙望遠鏡によって取得された20万枚に及ぶ画像データを分析。太陽系内、太陽系外の既知の天体からの光、さらに太陽系内の塵による太陽光の反射(黄道光)などをすべて差し引いてみた。しかし、それでも宇宙にはどこから来たのかわからない幽霊のような明かりが、全天に拡がる闇に約10匹のホタルを飛ばした程度に淡く残ることを確認した。

2021年3月1日にユタ州スカル バレーに現れた黄道光(Image:NASA/Bill Dunford)

この「ゴーストライト」について、2020年に太陽圏を脱出した探査機ニュー・ホライズンズが太陽系外を観測したデータと照らし合わせた結果、太陽系の外側よりも内側で強く出ていることも判明した。

研究の執筆者のひとりであるTim Carleton氏は、この明かりについて、ハッブルの画像における「残光の測定値は、ニュー・ホライズンズのデータよりも高いため、それが太陽系の遠く外側からではない、ローカルな現象だと考える」と述べ、「これまで仮説としてはあったものの、定量的に測定されたことのなかった、太陽系内のなにか新しい要素かもしれない」と、認識されていない塵の反射などによってゴーストライトが引き起こされた可能性を唱えている。またその塵は、太陽系外から飛来した彗星に含まれる物質が太陽の熱で蒸発し、尾として放出され、その後太陽系内に拡散したとの見方が有力だ。

一方、ニュー・ホライズンズが検出した太陽系外に残る余分な光については、まだ謎が多い。研究者らは、ハッブルでは捉えきれないほどわれわれの位置から遠い、暗い未知の銀河などからかすかに届いた光や、あるいは暗黒物質の崩壊といった現象によるものの可能性などを指摘するものの、証拠はまだ何もみつかっていない。ただ、今後ジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡を使った観測によって、仮説のひとつである未知の銀河が発見される可能性はありそうだ。

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