自分では出せないアイデアが欲しいときに便利そう
映画などの脚本執筆を手伝うAI「Dramatron」、DeepMindが発表
Google(Alphabet)のAI開発子会社DeepMindが、映画やドラマ、演劇の脚本執筆を手助けするAI「Dramatron」を発表した。このAIはタイトルから舞台背景、登場人物の設定、あらすじ、台詞などのアイデアを生成する「共同執筆者」として機能する。
Dramatronの仕組みは、OpenAIが開発したテキスト生成AI「ChatGPT」と似ている。脚本を作成するには、最初にログラインと呼ばれる、これから執筆しようとする話をかんたんに説明した一文を入力する。するとAIは、その文を元にまずタイトルを生成。さらに登場人物をいくつか作りだし、それらに関する簡単な情報を求めてくる。これに対する回答を入力してやれば、Dramatronは話の場面ごとのプロットを出力するので、人間の執筆者がさらに足りない部分を埋めていくことで、一連の文章が次第に脚本として出来上がっていく。
Dramatronの開発チームは、このAIについての研究を発表する論文の中で、15人の劇作家および脚本家を招いて、それぞれ2時間ずつDramatronとともに脚本を執筆する「勉強会」を行ったという。ただ、劇作家たちはこのツールではAIの出力が定型的になる可能性があるとして、「脚本ツクール」とでも呼べそうなこのAIで、オリジナルの脚本を執筆することはないとした。ただ、大まかな世界観を構築したり、プロットの要素や登場人物を違った者に変更したい場合などには便利かもしれないとしている。また「何かクリエイティブなアイデアをひねり出し」たい場合にも役立つ可能性があると述べた。
ある劇作家はすでに、Dramatronを用いて書いたものを「大幅に手直し」した脚本4本を舞台化して上演している。DeepMindはこの公演について、アドリブのスキルに長けたベテランの役者たちによる「解釈と演技がDramatronの脚本に意味を与えた」と評価した。
ただ、DramatronのようなAIシステムを利用して作り出されたコンテンツは、著作権や脚本への貢献に関する対価を、誰が受け取るのかという問題をはらむかもしれない。英国の控訴裁判所は昨年、法的に特許案件の発明者としてAIを認めることはできないとの判決を下した。DeepMindもまた、Dramatronが学習に使用したテキストの断片を吐き出すことがあるとして、盗作を指摘される可能性があると指摘した。これについては、すぐに取りうる対策として人間の共同執筆者が、出力されたテキストから盗作の可能性がある部分を検索し、特定して書き換えることをDeepMindは提案している。
そのほかDramatronには、AIを鍛える際の資料データに含まれていた偏見や攻撃的な内容、現在の社会においては不快と感じられる表現を生成する可能性があるとのこと。研究者らはインターネット上に存在するヘイト投稿や言論を自動検出する機械学習モデル「Perspective」を活用する対策を提案しており、これを利用するにはPerspectiveのAPIキーを用意する必要があると説明している。