ジョブズのスタイラス嫌いとどう折り合う?

アップル、iPhoneでも使える新型Apple Pencil100万本を廃棄との噂

Image:mokjc/Shutterstock.com

iPad用スタイラスとしておなじみのApple Pencil。実はアップルが、iPhoneでも使える新型Apple Pencilを計画していたとの噂が報じられている。

この噂話の発信源は、中国SNSのWeiboである。記事執筆時点では削除済みだが、米9to5Macなど複数のブログやメディアが確かに目撃したと述べている。

中国の情報源を伝えることで知られるリーカーDuanRui氏によると、そこにはアップルが9月のイベントで新型Apple Pencilを発表する予定だったと書かれていたそうだ。価格は約49ドルだったが、なんとiPhoneにも対応していたというのだ。

しかしプロジェクトは発表直前に打ち切られてしまい、当時100万台(本)以上の在庫まで用意していたが、すべて廃棄されてしまったそうだ。

このWeibo投稿は、ほとんど実績がないソースであり、そのまま受け止めることは危険だ。とはいえ、コードネーム「Marker」とされる新型Apple Pencilの情報には、かなり興味深い点があり、アップルの戦略的にも辻褄が合っているようにも思われる。

まず約49ドルという低価格と、筆圧感知や内蔵バッテリーが省かれているとの説明は、コスト削減という点で符合している。充電式バッテリーの代わりに「チップを使って画面からスタイラスに電力を供給する」という方式は、サムスンがS-Penで行っていることと似ている。

また最も興味深いのは、「iPhoneで使えるApple Pencil」という箇所だろう。これまでのApple Pencilは、初代と第2世代、ともにiPhoneでは使えない。そもそも共同創業者で元CEOのスティーブ・ジョブズ氏が、「誰もスタイラスなんて欲しくない(中略)生まれながら持ってるポインティングデバイス、10本の指を使う」とスタイラス嫌いを標榜していたこともある。

しかし、一時期「次のiPhoneこそApple Pencil対応」との予想は何度となく浮上していたのも事実だ。アップルのサプライチェーン情報に精通するアナリストMing-Chi Kuo氏も、「iPhone 11はApple Pencilがサポートされない」とわざわざ言っていたほどである。

そして9to5Macは、この廉価版Apple Pencilを本当に必要としているのは、最新の第10世代iPadであると指摘している。

最新の無印iPadはUSB-Cポートを備えながらも、Lightning端子を備えた初代Apple Pencilしか使えず、ペアリングや充電に変換アダプターが必要という奇妙なことになっているからだ。少なくとも給電が不要となれば、格段に使いやすくなるということだろう。

また「iPhone用Apple Pencil」の噂話が絶えないのは、競合するサムスンのGalaxy NoteやGalaxy SシリーズがSペンに対応しており、アップルもスマートフォンでスタイラス使用を望むニーズが根強いと認識しているから、との見方もある。

もしも実現した場合、ジョブズの「スタイラス嫌い」発言とどう折り合いを付けるのかは興味深いところだ。

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