アップルは「国家支援型スパイウェア」として対策済み

米FBI、犯罪捜査にスパイウェア使用を検討していた

Image:motioncenter/Shutterstock.com

イスラエル企業NSO Groupが開発した「Pegasus」というスパイウェアは、数年にわたり政府機関や法執行機関に販売された。その購入者の多くが人権を侵害している国々だとして国際人権NGOアムネスティ・インターナショナルも報告書を発表しており、アップルもNSOを提訴。今年秋のiOS 16等では、その対策としてロックダウンモードも追加している

そうした悪名高い“国家支援型”スパイウェアを、米連邦捜査局(FBI)が犯罪捜査に使うことを検討していたと報じられている。

米The New York Times(以下「NYT」)が閲覧したFBIの内部文書や裁判記録によると、2020年末~2021年初めにかけて、同局の職員はPegasusを幹部に説明する計画を立てていたという。また連邦検察官向けには、FBIがスパイウェアを使っていた場合、裁判中にどのように(証拠資料を)開示するかのガイドラインも作成していたそうだ。

内部文書などを見るかぎり、FBIが米国市民あるいは外国人のスマートフォンをハッキングすることを考えていたかどうかは不明とのことだ。今年初め、NYTはFBIが米国内の電話番号(を持つスマートフォン)をハッキングできるバージョン「Phantom」をテストしていたとも報じていた。

もっとも2021年7月までに、結局はFBIはPegasusを犯罪捜査に使わないことを決定したという。それはWashington Post誌が、殺害されたサウジアラビア人記者ジャマル・カショギ氏と親しい女性2人のスマホにPegasusが使われていた、と報じたのと同じ月である。

しかし裁判文書によると、FBIは将来の捜査にスパイウェアを使うことに関心を持ち続けていたという。先月FBIが提出した法的概要には「最終的にこのツール(Pegasus)を犯罪捜査に利用しないと決定したからといって、犯罪者が使う暗号化通信にアクセスするための他の同様のツールをテスト、評価、展開しない可能性がないことにはならない」と書かれており、Pegasus以外のハッキングツールを使う余地を残しておきたいようだ。

米連邦議会による非公開の公聴会では、FBI長官のクリス・レイ氏はPegasusを購入したと認めつつ「もしも我々の捜査で誰かの証拠を集めたり標的にするためにPegasusを使ったことがあると言われるなら、答えはノーであることを私が保証する」と回答していた。

では、なぜPegasusを購入したのかといえば「例えば悪人がどのように使う可能性があるのかを把握できるようにするためだ」とのことだ。あくまで犯罪者の手口を研究するためとの主張のようだが、FBI内部の認識とは食い違っているのが気になるところだ。

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