イナゴでガン検診が実現する?

ガンを「ニオイ」で検知できる“サイボーグイナゴ”の研究

Image:GoodStudio/Shutterstock.com

新型コロナウイルスが世界に蔓延し始めた頃、とある研究者は犬の嗅覚で感染者を嗅ぎ分けられるのではないかと考え、実験によってそれが可能であることがわかった。しかし、いざ実用化…となると、犬の訓練にかかる時間、訓練に携わることができる人材面で現実的ではなかった。

ただ、人の病気を発見するのに動物を活用しようというアイデアは、あちこちにあるものだ。ミシガン州立大学の研究チームは、イナゴを使ってガンの発見をしようというアプローチを思いつき、その研究内容について生物学のプレプリントリポジトリbioRxivに発表した

昆虫は、触覚で匂いを検知できる。たとえばカイコガのオスは、メスが発するフェロモンを数km離れた場所からその触覚で嗅ぎつけ、飛んでくることができるとされる。

研究者はガンを発見するシステムに、近年研究が進んでいる昆虫のなかでもイナゴを選んだ。そして脳に電極を挿入し、触覚の信号から匂いをどう感じているかを調べた。

さらに研究者らは、口腔ガンを患っている人とそうでない人から、3種類の口腔内の細胞を採取・培養し、それらが発するガスをイナゴの触覚に送った。その結果、イナゴの脳は3種類の細胞それぞれに異なる反応を返し、病気を患う細胞を検知できることがわかった。

研究者によると、現状明確な信号を取得するには40個のニューロンからの記録が必要とのこと。その数を得るには6~10個のイナゴの脳が必要になるが、研究者らは、これを1つだけで実現したいと考えているようだ。そして、どこでもイナゴの脳と電極を使ってガンを調べられるよう、ポータブルなシステムにしたいという。

将来、会社や自治体などのガン検診で脳に電極を差し込まれた “サイボーグイナゴ” とにらめっこをさせられるのかといえば、まだわからない。研究はまだ査読を受けていない段階であり、技術的に実現可能だと認められても、米食品医薬品局(FDA)がそれを承認する保証もない。それでも今後の研究の進捗は気になるところだ。

Image:University of Michigan, Saha et al

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