とにかく装着感が良い
「Pixel Watch」速攻レビュー。Google初スマートウォッチの実力は?
Google初となるスマートウォッチ「Pixel Watch」が本日発売される。事前に試す機会を得られたので、実際に使って分かった新情報も盛り込みつつ、本機のレビューをお伝えしていこう。
Pixel Watchの価格は、Bluetooth/Wi-Fiモデルが39,800円(以下、税込表記)、加えて4G LTEに対応するモデルが47,800円。アップルの廉価モデル「Apple Watch SE」(40mm)はGPSモデルが37,800円、GPS+Cellularモデルが45,800円なので、ほぼ同様の価格帯に位置する。
一方でPixel Watchの機能は、Apple Watch SEというより、上位モデルの「Apple Watch Series 8」(59,800円から)に近い。Apple Watch SEで省略されている血中酸素センサーや、心電図測定(日本では現状使えないが)用の多目的電気センサーを搭載し、ディスプレイの常時点灯にも対応している。
円形でシンプルなデザイン
まず本体を見ていくと、ベゼルが目立ちにくい円形のデザインが目を引く。側面の半分までガラスで覆われていて、ディスプレイとベゼルの境目がわからないようになっている。ディスプレイは320ppiの有機ELで、色域はDCI-P3に対応し、最大輝度は1,000ニト。ちなみにベゼルは意外に太く、測ってみたところ5mmほどあった。
今回試したカラーは、Polished Silverケース/Chalkアクティブバンドの組み合わせ。全部で4種類が用意されており、このほかChampagne Goldケース/Hazelアクティブバンド、Matte Blackケース/Obsidianアクティブバンド、Polished Silverケース/Charcoalアクティブバンドがラインナップされている。バンドについては、布製や革製のものも別売で用意されている。
ケースの素材にアルミではなくステンレスが使われていることもあってか、全体的に高級感がある。バンドはマット調で肌触りもよく、Appleのスポーツバンドと同じフルオロエラストマー素材なので、安価なシリコン素材よりも耐久性が期待できそうだ。
一方で、ガラスの曲面部分をぶつけて割ってしまうのが少し怖いが、もちろん入念なテストを行っているだろうし、コーニング社の強化ガラス「Gorilla Glass 5」を採用しているようなので、簡単には割れないと信じたい。
側面にはデジタルクラウンとボタンを1つずつ備えている。デジタルクラウンで各種スクロール操作が行え、ボタンでGoogleアシスタントの起動や最近使用したアプリが一覧表示できる。
またデジタルクラウンは押し込めるようになっていて、1クリックでアプリ一覧や時計画面などの切り替え、2クリックでGoogle Payの起動が行える。ほか側面部分には、マイクとスピーカーも備えている。
バンドは取り替え可能で、最初は分かりづらかったのだが、本体のロック部分を押し込んでバンドをスライドさせると、簡単に外すことができた。Apple Watchのようにスライドさせてはめ込むのではなく、カチッと取り付けるような具合で、軽い力で着脱が行える。
バンドはSサイズ(手首周りが130~175mm向け)とLサイズ(165~210mm向け)の2サイズが用意されている。記者はそこまで手首が細い認識はなかったが、大柄な欧米人を想定しているためか、Sサイズでちょうどよかった。
背面には他のスマートウォッチと同じように、各種センサーが備わっている。本機に搭載されているセンサーは、光学式心拍数センサーや血中酸素センサーをはじめ、多目的電気センサー、周辺光センサー、コンパス、高度計、加速度計、ジャイロスコープ。さらにGPSやGLONASSなどの衛星測位システムに対応する。
想像以上に良い装着感
実際に腕に装着してみたが、思いのほか装着感が良く、実際に数日間ほぼつけっぱなしにしても、気になることはなかった。個人的にはApple Watchより良いかもしれない。特に肌にあたる背面のガラス部分の形状が、滑らかなドーム状となっていて、肌への圧力を分散してくれる。腕から外した際に跡も残らないので(Apple Watchは残った)、そういった点からも、フィット感が良いことが分かる。
今回はPixel 7 ProとPixel Watchを接続して使ってみたのだが、Pixel Watchの電源を入れるとすぐ、「Fast Pair」によってPixel 7 Proの画面下部にポップアップが表示された。そこから「Google Pixel Watch」アプリのインストールが促され、指示に従って進めていくだけで接続完了。最後にFitbitアプリをインストールするよう案内された。
Google Pixel Watchアプリでは、ウォッチフェイスのカスタマイズをはじめ、アプリごとの通知オンオフ設定、ディスプレイの常時点灯の設定、カレンダーの表示項目など、各種項目が設定できる。音量など一部項目は表示されないものの、傾けた際に画面をオンにするかの設定など、スマートフォンの大きな画面で操作できるのはありがたい。
Wear OS搭載でアプリが使える
次に、Pixel Watchのスペックについて触れておこう。本機は、Googleのスマートウォッチ向けOS「Wear OS 3.5」を搭載するモデルだ。Appleの「watchOS」と同じように、アプリストアからアプリをインストールして使えるなど、多くの機能を利用できる。今冬リリース予定の機能ではあるが、転倒検出機能にも対応する。
Googleの公式サイトを見てみると、Googleマップによる道案内、Gmailによるメールのチェックと返信、Googleカレンダーでのスケジュール確認、YouTube Musicを使った音楽再生などがアピールされている。もちろんPlayストアではSpotifyやLINEなどの人気アプリも楽しめる。またGoogleアシスタントも利用可能だ。
なお、本機のようなWear OS搭載モデルは、Android搭載デバイスとの接続が前提(Pixe WatchはAndroid 8.0以降対応)であり、iPhoneには接続できない。スマートウォッチはGoogleやApple以外にも、ガーミンやファーウェイ、OPPO、Xiaomiなど、独自のOSを搭載するモデルが数多くあり、こういったものはAndroid/iOSに両対応している場合が多い。
SoCはサムスンの「Exynos 9110」で、コプロセッサ「Cortex M33」を搭載。Exynos 9110といえば2018年に発表されたものであり、4年前とやや古いこともあってか、動作はスクロールやアプリの展開時など、ややもたつく感は否めない。ただ個人的にはストレスが溜まるほどではなく、最低限の性能は備えているように感じる。
またメモリは2GBで、ストレージは32GB。YouTube MusicやSpotifyの音楽をストレージ内に保存し、接続したBluetoothイヤホン/ヘッドホンからオフラインで再生することもできる。
Suicaは定期券など非対応
Pixel Watchで注目されたトピックの一つが、Felica搭載による「Suica」への対応だろう。定期券などへの対応を期待しているユーザーも多いと思うが、こちらについてはすでに、JR東日本のプレスリリースで「定期券・Suica グリーン券・おトクなきっぷは非対応」と明言されている。
実機でも確認してみたが、Google Payに登録しているモバイルSuicaをPixel Watchに追加しようとしたところ、新規Suicaの発行を促されてしまった。どうやら既存のSuicaを使うことができず、新しく発行する必要があるらしい。
個人的にはオートチャージ機能が使えないと厳しいので、Pixel WatchのSuicaは使わず、スマートフォンのモバイルSuicaを使い続けることになりそうだ。今後のアップデートで改善してくれることを願いたい。
また新規発行で表示されるのはSuicaのみで、PASMOやICOCAなどは、そもそも選択肢としても表示されない。一方でiDやQUICPay、Visaのタッチ決済などについては、Google Payに登録されているものを選ぶだけでPixel Watchに追加できるようだ。
Fitbit譲りの健康・フィットネス計測
そして注目したいのが、本機の健康およびフィットネス機能に、昨年Googleが買収したFitbitの技術を活用しているということ。Fitbitはいわずと知れたスマートウォッチ/フィットネストラッカーのブランドであり、世界で初めて心拍計測をトラッカーに導入したのも同社だ。
そのため本機は、Google初のスマートウォッチとはいえ、健康とフィットネスの計測/分析においては、Fitbitの長年にわたる知見が活かされている。また本機はWear OS搭載と先述したが、その前身となる「Android Wear」(2014年に発表)から進化を続けており、そういった意味ではApple(初代Apple Watchは2014年)と同じくらい、Googleもスマートウォッチに関わってきたといえる。
ちなみにGoogleは、先週の「Made by Google」イベントでPixel Watchを発表した際に、「FitbitとGoogleの機械学習チームの専門知識を結集し、Pixel WatchはFitbit史上最も正確な心拍数トラッキングを搭載した」と説明していた。
話を戻すが、本機はFitbitと連携していることもあり、計測したデータについてはFitbitアプリから確認できる。
なおGoogleは「Google Fit」という健康管理サービスを提供しているが、現時点ではFitbitアプリとGoogle Fitのデータは基本的に連携されないのは面白いところだ。
つまりPixel Watchは、Googleのデバイスでありながら、Google Fitにデータを保存できない。もっともFitbitのサービスはGoogleとの統合を進めつつある。Google FitがFitbitに統合されるのか、それとも逆なのか、今後の対応が楽しみだ。
Fitbitアプリを開くと、歩数や登った回数、歩行距離、消費カロリーなどが確認できる。またストレス管理や睡眠計測、エクササイズ記録など様々な情報が確認可能だ。Fitbitの有料サービス「Fitbit Premium」にも対応していて、登録することでより深い情報も確認できる。6ヶ月の無料特典もついているので、まずは試してみて、半年後に継続するか判断してもいいかもしれない。
また睡眠記録ではFitbitならではの「睡眠スコア」をはじめ、浅い睡眠や深い睡眠、レム睡眠などの睡眠ステージが確認できる。こういった睡眠計測では、数値を見ても「自分の睡眠の質が良いのか悪いのかわからない」というユーザーも多いと思うが、Fitbitでは睡眠スコアを算出してわかりやすく理解できるようにしたり、同年齢・性別と比較できたり、といった工夫を行っている。自分の睡眠を客観的に分析しやすいのは良いところだ。
なお本機には血中酸素センサーが搭載されているが、これが動作するのは睡眠時のみ。Fitbitでは「Sense 2」「Versa 4」など、多くのモデルで日中の血中酸素ウェルネスのモニタリングに対応しているので、より健康やフィットネスを気にする方は、Fitbitブランドを選ぶべきということなのかもしれない。また前述の通り、Pixel Watchはハードウェア的に心電図測定に対応しているものの、日本では現時点で利用できないようだ(心電図アプリはプリインストールされている)。
1日問題なく使えるバッテリー
最後にバッテリーについて触れておくと、本機の動作時間は公式で「最大24時間」とされている。実際に試してみたところ、画面の常時を表示オンにした状態で、100%から0%になるまでの時間が約26時間だった(睡眠中も装着)。あまりヘビーな使い方をしていないため、通知の回数が多かったり、音楽を再生したり、マップで道案内をしたりなどすれば、 もう少し短くなるだろう。
次に画面の常時表示をオフにしたところ、24時間使っても41%残っていた。記者の場合、Apple Watchでは同じ使い方で半分以上残っていたので、それと比べると残量が少ない印象ではあるが、極端にヘビーな使い方でなければ1日1回の充電で一日中装着できそうだ。
また充電は、Pixel Watchのセンサー部分に、付属の充電器をマグネットでくっつけて行う。5V1Aの5Wとなっており、公式では「2時間30分で100%充電」と案内されている。
こちらも控えめな数値のようで、実際に試したところ、0%から100%まで1時間17分で終えることができた。急速充電とまではいかないが、1日中装着したい方であっても、入浴前に外して寝る前に付けるなどの工夫で、問題なく運用できると思う。
“Google純正”のスマートウォッチ
まだ数日間しか試せていないが、装着感の良さをはじめ、初めてのスマートウォッチとしては完成度が高いと感じた。一方でここまでは言及していなかったが、振動の弱さによるハプティックの物足りなさ(強度調整もできない)、意外と画面部分が小さいのでLINEのテキスト入力が難しいなど、細かい不満点はいくつかあったりする。このあたりの使い勝手は、今後のモデルなどでフィードバックを盛り込み、改良されていくだろう。
Android対応のスマートウォッチは様々なメーカーから発売されているが、選択肢が多いため、どれを選べばいいか迷うユーザーも多いはず。その中でPixel Watchの「Google純正」というポイントは、初心者にも安心感がある。絶対的な価格はそれなりだが、Apple Watchとスペックを含めて比べると安く、「スマートウォッチがどんなものか試してみたい」というAndroidユーザーの選択肢に入る製品だと思う。
そして、AndroidにおけるPixelシリーズのように、Wear OSにおける “リファレンス” モデルが誕生したのは喜ばしいところ。まだまだPlayストアのウォッチ向けアプリも少なく、またPixel WatchもWear OSのアップデートで進化できる余地が多くあるはずなので、これをきっかけに、さらなる発展を期待したい。