アップル幹部の自画自賛は鵜呑み厳禁

iPhone 14 Proの「Dynamic Island」開発をアップル幹部が振り返る

Image:Apple

今年のiPhone 14 Proシリーズの新要素として、最も好評なのは「Dynamic Island」だろう。いまだ画面の上部にはパンチホール2つは残っているが、それを巧みに取り込み、インタラクティブに変化する新たなインターフェースとして人気を獲得しつつある。

このDynamic Islandの発想や開発プロセスについて、アップルのソフトウェアエンジニアリング担当上級副社長のクレイグ・フェデリギ氏とヒューマンインターフェースデザイン担当副社長のアラン・ダイ氏が取材に応じ、詳しく語っている。

フェデリギ氏によれば、Dynamic Islandは「iPhone Xが登場して以来、5年ぶりの大きな操作の変更」とのことだ。2017年発売のiPhone Xではホームボタンがなくなり、ロック画面を解除したりホーム画面に戻ったり、アプリを切り替える操作が一新されていたが、それに匹敵するというのだ。

「iPhone X」(Image:Apple)

具体的には「iPhone上で起きている出来事を、この小さくインタラクティブな場所に集約する」ことだと表現されている。たしかに電話をかけている最中であれば受話器ボタンが、音楽アプリであれば再生中の曲が小さなアイコンで表示され、「起きていること」が集約されている印象だ。

また先月の「Far Out」イベントでDynamic Islandを発表したダイ氏は、その誕生プロセスをハードウェアとソフトウェアの境界がさらに曖昧になった「アップルらしい開発」の好例だと呼んでいる。

すなわち「ハードウェアとソフトウェアの担当パートナーが同じスタジオに集まり、一緒に問題を解決していく」スタイルであり、新機能そのものも「アラートや通知、進行中の操作などを、ハードウェアとソフトウェアの境界を意識することなく、リアルタイムに表示する」ことが可能になったという。

では、そもそもの発想はどこから生まれたのか。ダイ氏は「画面上のセンサー領域(顔認証のTrueDepthカメラなどを収納したノッチ)がもっと小さくできたら余剰のスペースで何ができるか」と考えたことが原点だったと語っている。

そこに「アップルでは、アイデアの源泉を辿るのは至難の業だ。なぜなら、われわれの仕事は異なるグループの人々と重ねた膨大な議論の上に成り立っているからだ」と付け加えているのが興味深いところだ。誰かのアイディアだと特定しないことで、のちのち権利関係で揉める事態を避ける意図があるのかもしれない。

Image:Apple

ダイ氏いわく、(画面上部の)ステータスバーの領域は、小さいながらもiPhoneの体験の中で決定的に重要な部分だと述べている。「1ピクセルあたりに込められた我々の努力が、もの凄く大きな効果を発揮するエリアだ」としつつ、「どうせなら、この部分でもっとスペシャルなことをしよう」という話が発展したそうである。

またフェデリギ氏は、Dynamic Islandが初公開されたときに驚きの声が上がったことに触れ、社内でも同じような反応があったと振り返っている。「個人的には、まるでiPhoneに命ある新しいアイデンティティが宿ったかのように感じた」とのことだ。

もちろん、数年前に自画自賛していたMacBook ProのTouch Barは、最新モデルでは採用しない傾向があるなど、アップル幹部の言うことを額面通りに受け取ってはならない。しかし実際にDynamic Islandは、iPhone 14 Proモデルを手にした人々から好評を得ており、ここ数年でアップルの最高のデザインの1つという呼び声もあるほどだ。

とはいえ、記事執筆時点では、サードパーティ製アプリで十分に活用されているとは言いがたい。来年の「iPhone 15」では標準モデルでも実装が噂されていることもあり、今後は時間をかけてDynamic Islandが豊かな島になることを楽しみにしたいところだ。

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