実際に使って分かった違い
新Apple Watch、買うべきは「Ultra」か「Series 8」か。2週間試した結論
2022年のApple Watchは、新しい「Ultra」を含む3シリーズが揃った。特に上位モデルのUltraとSeries 8については、どちらのモデルを選ぶべきか迷っている方も少なくないと思う。両方の最新Apple Watchを約2週間試した筆者のインプレッションを報告しよう。
UltraとSeries 8はバッテリーの持ちがとてもいい
2015年にApple Watchが登場してから、毎年進化を重ねてきた定番の最新モデルがSeries 8だ。そして今年、過酷なアウトドア環境での仕様にも耐えるタフネスモデルのUltraが追加された。ほかにも廉価モデルのApple Watch SEが第2世代にアップデートしている。アップル独自設計によるウェアラブル向け最新SiP(システム・イン・パッケージ)「S8」は、3つのモデルに共通して採用された。
上位のApple Watch Series 8、Apple Watch Ultraの新しい「低電力モード」は、デバイスのバッテリー持ちを驚くほどに向上させるwatchOS 9との連係機能だ。おそらく多くのユーザーにとって、新しいApple Watchの進化を最もわかりやすく感じさせてくれるだろう。
本体のコントロールセンター、または「設定」からバッテリーのメニューを選択して「低電力モード」をオンにする。Apple Watch Series 8では最大18時間のバッテリーライフが最大36時間まで伸びる。Apple Watch Ultraの場合、今秋後半に予定するソフトウェアアップデートを待たなければならないが、通常で最大36時間のバッテリーライフが最大60時間(約2日半)まで、フル充電状態から連続して使えるようになる。
以前までのApple Watchは、「省電力モード」をオンにすると時刻表示以外のメイン機能が使えなくなった。新しい低電力モードはウォッチのバッテリーを節約しながら、アクティビティやワークアウトの計測、転倒検出など、Apple Watchの重要な機能がそのまま使えるところが大きく違う。
ただし低電力モードをオンにすると、ディスプレイの常時表示や心拍数/血中酸素ウェルネスのバックグラウンド計測はできなくなる。またペアリングしているiPhoneが近くにないと、Wi-Fiやセルラーによるモバイルデータ通信、着信通話と通知も使えなくなる。GPS+Cellularモデルの場合は特に注意したい点だが、バッテリーが残り少なくなった緊急時などに、低電力モードのメリットが存分に発揮される。
低電力モードは「オンにする期間」を1〜3日の間で選べる。日数を長く選択しても良いが、先に触れた通り、一部使えなくなる機能があることには注意して、設定を選ぼう。オンにする期間が選択されていない場合、次にバッテリーを80%以上チャージすると、低電力モードは自動的にオフになる。
将来はこの低電力モードが布石になって、Apple Watchの根本的なバッテリー持ちがより長くなることを期待したい。
メッセージやLINEの返信を日本語キーボードで打てる
UltraとSeries 8が利用できる「日本語キーボード」も即戦力になる新機能だ。watchOS 9にアップデートしたSeries 7でも使える。
メールやメッセージ、LINEの文字入力が日本語キーボードから正確にタイピングできるので、特にGPS+CellularモデルのApple WatchならiPhoneが手元にない時にも快適に返信ができてしまう。もっとも、日常生活の中でiPhoneを持たずにいられる時間は少ないかもしれないが。
ただしこの日本語キーボード、本稿執筆時点では、FacebookメッセンジャーやMicrosoft Outlookは対応していなかった。多くのユーザーに選ばれているコミュニケーション系アプリは、今後watchOSの日本語キーボード対応を急ぐべきだ。
Ultraは腕時計としての存在感が際立っている
Apple Watch Series 8の魅力は「本体が軽いこと」だが、強さ・軽さを併せ持つ航空宇宙グレードのチタニウムをケースに採用するUltraも十分に軽いと筆者は感じた。睡眠計測のため、眠っている間に着けていても苦にならなかった。
むしろApple Watch史上最も大きな49mmのケースによる「腕時計としての存在感」が際立った。筆者のまわりでは、今までApple Watchに目もくれていなかった、同世代のアナログ腕時計ファンも、Ultraに色めき立っているようだ。
従来のApple Watchよりケースは大柄とはいえ、デザインはとてもシンプルでスタイリッシュだ。49mmのケースは、45mm/44mmケースのApple Watchに対応するバンドと互換性がある。Ultraと同時に発売されたアウトドアっぽいバンドを、メタルやレザー系のバンドに交換すると、ビジネス/フォーマルな装いにも合わせやすく、文字盤も含めた外観カスタマイズによってだいぶ印象も変わる。
Apple WatchがIoTリモコンになる
筆者はUltraに新設された「アクションボタン」が面白いと感じた。ボタン押し操作に「ショートカット」を割り当てると、様々なIoT的な活用もできるからだ。
このショートカットとは、iOS/iPadOSに標準搭載されているアプリだ。複数のタスクを組み合わせた独自のショートカットを作成できる。そして、iPhoneでつくったショートカットはwatchOSから呼び出して動作させられる。
Apple Watch Ultraの場合、任意のショートカットをアクションボタンの操作に割り当てて一発で呼び出せるのだ。例えば「Shazamして保存」するショートカットが楽しく、自宅のダイソンの空気清浄機を「オフ」にするショートカットは意外と便利だった。
Series 8でも同じように、アプリを呼び出せばショートカットは使える。だが、Ultraのようにボタンから一発で呼び出せるところにロマンがあるし、使いこなせるようになると、改めてショートカットそのものの便利さに気が付かされた。
今年のイチオシはやっぱり「Ultra」
Apple Watch Ultraを身に着けて1週間以上過ごしてしまうと、腕時計としてのしっかりとした存在感に馴染んでしまう。そこからSeries 8に付け替えると、やはりUltraでないと物足りなく感じられてしまった。
もしこれからApple Watchを買う計画があるのならば、筆者は少し背伸びしてでも「Ultraを選ぶべき」だと思う。Apple Watchが築き上げてきたフィットネス&ヘルスケアの先進的な用途も網羅しているし、堅牢性も高いので「長く愛用できるスマートウォッチ」になってくれるはずだ。
見方を変えれば「Ultraは長く愛用したくなるスマートウォッチ」であり、愛着をもって腕時計を使い込みたい方に向いている。一方で、毎年またはある程度の頻度で買い換え、最新のApple Watchを楽しみたいガジェットファン向きではないと受けとめることもできる。
Series 8のGPSモデルは59,800円、GPS+Cellularモデルは74,800円から買える。かたやUltraは124,800円からだ。今年はSeries 8を選び、今後Apple Watchのハードウェアに由来する大きなイノベーションが到来した場合、都度買い換えるという楽しみ方もアリだと思う。
どちらにせよ、これから「初めてのApple Watch」を買うという方に、筆者は廉価モデルのSEではなく、Series 8かUltraをすすめたい。血中酸素ウェルネスや心電図アプリ、そして筆者が今回イチオシした日本語キーボードなど、Apple Watchの最先端を余すところなく体験してから、Apple Watchの良し悪しを判断すべきだと思うからだ。
そして、今回の記事では紹介しきれなかった機能も多くあるので、ぜひ手にとって楽しみ尽くしてみてほしい。