1/4スケールの機体で試験飛行、目標は2025年量産
水面スレスレを高速飛行。電動地面効果翼機「Seaglider」が初試験飛行
米ボストンに拠点を置く航空機スタートアップのRegentが、世界初をうたう水中翼式地面効果翼機プロトタイプの試験飛行を実施し、成功したと発表した。
地面効果翼機とは、翼の形状を持つ物体が地面や水面に近い位置を移動する際、翼と地面の間の空気の流れで起こるグラウンドエフェクト(地面効果)を利用し、揚力を増大させて浮かぶ乗り物のこと。ただ、揚力は増大するものの、地面効果は翼と地面(水面)の間の感覚が狭くなければ機能しないため、高度数mという超低空飛行での移動になる。
過去には、旧ソビエトでエクラノプランと呼ばれる地面効果翼機が活躍した時期があり、1990年代には日本でも実験研究用の機体が開発されたこともあった。しかし、超低空の飛行は船舶などとの衝突リスクもあり、現在までに主要な旅客用や輸送用の手段として定着はしていない。
Regentは、自動車が電動化に向かう一方で、航空機やモーターボートの電動化についてはバッテリーのエネルギー密度の面から停滞していることに着目。水との抵抗を大きく減らして高速に水上を“走行”できる水中翼船と、コンパクトな翼飛行ができる地面効果翼機の効率性を組み合わせることで、水上輸送の電動化が可能ではないかと考えた。
Regentが開発したSeagliderは、底面を船のようにV字型にした船体を浮かべ、ボートのようにゆっくりとスタートするものの、速度が上がると水中翼によって機体が持ち上がり、水面をスムーズに滑走しつつ機体を空中まで持ち上げる。水中翼船の利点である水の抵抗の低さによって、離水可能な速度まで加速するのに必要なエネルギー消費も削減できる。なお、この水中翼は離水後は機体に収納され、着水時に再び展開する。
Seagliderは高速かつ静かで、快適な電動式の沿岸輸送機だとRegentは説明する。現在市販されているバッテリーを使うことで、時速約300kmでの移動が可能。運用コストは航空機の半分で、船舶の6倍の速度で移動できる。なお、Regentは最大150人乗りまで機体を大型化することを視野に入れているという。
今回試験飛行を行ったのは、実際のSeagliderの1/4スケールの試作機で、低速から速度を上げての水中翼走行、そして離水、巡航の様子をダイジェスト的に捉えている。そしてRegentは次の段階として、2024年に1/1スケール、翼幅19.8mの有人の試験機を開発。さらに2025年までに量産にまで持っていきたいとの考えだ。
「2025年までに」というのは、かなり野心的な目標だが、現在のところ資金的な問題はない様子だ。また地面効果翼機は、FAAの型式証明が不要なのも、eVTOLの新規開発などに比べてスケジュール的に有利だという。