相乗効果になればいいけれど
JALが出資するBoom、AIブームに乗りガスタービンに注力。静音超音速旅客機の2029年就航予定に懸念も

静音超音速旅客機を開発するBoom SupersonicのCEO、ブレイク・ショール氏は先日、「エネルギーと超音速飛行のルネッサンスの時が来た」と宣言し、同社がコロラド州センテニアルでAIデータセンター向けガスタービンの製造のため建設を進めている新工場を発表した。
同社は2029年までに航空機として認証を取得し、最初の商用飛行を実現することを目標としてきた。すでにアメリカン航空、日本航空(JAL)、ユナイテッド航空は、返金不可のデポジット(金額非公開)を支払い済みであり、Overtureが引き渡し可能になり次第、それを購入できることになっている。
しかし、ユナイテッド航空のスコット・カービーCEOは、Boomの超音速旅客機「Overture」の納入が、予定される2029年には実現しない可能性があると、10月28日に配信されたポッドキャスト番組『Office Hours: Business Edition』で述べた。
カービー氏は、「『2029年』が、彼らの公式なスケジュールだ」と述べたが、BoomがOvertureの開発を進め、米連邦航空局(FAA)による認証取得が可能になるま克服しなければならない多くの課題」が残っていると指摘し、これまでのショールCEOらの仕事ぶりを称えつつも「彼らがその課題を乗り越えられるという保証はない」と述べた。
Ars Technicaによると、Boomは2024年に、ノースカロライナ州にあるピードモント・トライアド国際空港内にOvertureの製造施設を完成させている。しかしこれまでのところ、この施設はほとんど稼働していない模様だ。
そして冒頭で伝えたように、現在のBoomの主な関心は、AIデータセンターに電力を供給するための42MWの天然ガスタービン「Superpower」の開発に向いているようだ。

10月22日、同社はコロラド州センテニアルに、データセンター向けの「Superpower」と呼ばれる42メガワットの天然ガスタービンを生産する新たな工場の建設を発表した。
工場はまだ建設中だが、同社によるとすでにガスタービン用の部品の製造は開始しており、2027年半ばにはAIデータセンターを建設する顧客に向けた最初のガスタービンの納入を目指しているという。そして、2028年には25基、2029年までに50基へと、年間生産数を拡大していく計画だという。
つまりBoomはいま、超音速旅客機に乗客を乗せるよりも、自らがAI「ブーム」に乗ることに集中している、というわけだ。
なお、この発表にはコロラド州のジャレッド・ポリス知事とともに、クリス・ライト米エネルギー省長官が出席した。これは、米国政府がBoomの取り組みに関心を寄せ、後押しする姿勢を示すものといえそうだ。
AIデータセンター向けガスタービン事業にも不安要素がないわけではない。ショールCEOは9月25日のXへの投稿で、Boomのガスタービン29基を12.5億ドルで購入する計画だったCrusoeとの契約が破談になったことを報告している。CrusoeはGoogle、マイクロソフト、Oracleなどのデータセンター建設を請け負ってきた会社だ。
とはいえBoomは、データセンター向けガスタービンの開発は、Overture向けエンジンの設計にもプラスの効果をもたらすと主張している。同社は来年にも、非公開の顧客向けに約250MWの「Superpower」ガスタービンを納入する予定だとしている。そして、将来的にそのSuperpowerと超音速旅客機用ジェットエンジン「Symphony」の両方に使用可能なコアエンジン「Sprint Core」の試作版を完成させたと述べている。
Sprint Coreは、コロラド航空宇宙港(旧フロントレンジ空港)で11月下旬にも初の点火試験が行われる計画となっているという。これは具体的な開発におけるひとつの節目となるものだが、今後同社がAIデータセンター向け事業と超音速旅客機事業の両方を軌道に乗せていくためには(ユナイテッド航空のCEOが言うように)まだまだ課題が多数残っている。
- Source: Office Hours: Business Edition(YouTube)
- via: Boom Supersonic Ars Technica Forbes
- Coverage: TechCrunch
