364,800円の価値はあるか?

「iPhone Duo」実機レビュー。初の“折りたたみiPhone”ならではの魅力と伸びしろ

山本 敦

初の折りたためるiPhone、iPhone Duoをレポートする

アップル初の折りたたみスマートフォン「iPhone Duo」が10月23日に発売される。価格は内蔵ストレージ256GBのモデルが364,800円(以下、税込表記)から。発売前の実機を数日間試した。

最も印象に残ったのは、いい意味で「ふつうのiPhoneをフォルダブルにした」ことによる親しみやすさだ。一方で、7.6インチの大きなインナーディスプレイにはもっと自由に操作したくなる場面もあった。

ハードウェアの完成度が高い

まずは特徴的なハードウェアを押さえておこう。チップは2nmプロセスで製造されるAppleシリコン「A20 Pro」。5.4インチのアウターディスプレイを備え、開くと7.6インチのインナーディスプレイが現れる。閉じればコンパクトに持ち歩けて、必要な時にだけ表示領域を広げられることがフォルダブルスマホの醍醐味だ。

5.4インチのアウターディスプレイ。片手に収まるサイズ感としている

開閉を支えるヒンジは、100点以上の小さな部品から構成されている。滑らかな開閉動作時のハンドリング感を生み、開いた画面の中央を支えて平坦に保つための精密な機構だ。内部設計にも工夫がある。

左右それぞれの空間に形状と容量が異なるバッテリーを収め、独自の制御により電力のバランスを調整する。物理SIMのスロットを持たないeSIM専用設計も、バッテリーのための空間確保に寄与している。

100点を超えるパーツで構成されるiPhone Duoのヒンジ

さらにベイパーチャンバーに加え、ヒンジを通る柔軟な熱伝導材によってチップ側から反対側にも熱を逃がす。折りたたむための機構だけでなく、両側の空間を電池と放熱に活かす設計が、日常の使いやすさを下支えしている。

ヒンジは開閉操作時の動作がとても安定している

実際に使って納得したのは、アップル純正アプリを中心とする大画面への最適化だ。「メール」や「設定」などは、単に文字や画像を大きくするのではなく、広がった領域を情報の整理に使っている。アウターからインナーへ、ディスプレイ上に美しく自然にコンテンツの表示が引き継がれる視覚効果も美しい。

開閉時にはアウターディスプレイで表示していたコンテンツが、インナーディスプレイの側へスムーズに移動するような視覚効果が楽しめる

新しい画面を開くたびに、操作を覚え直すような身構えは要らない。いつものiPhoneの延長で使い始められ、表示が広くなったところで便利さに気付く。iPhoneを長く使ってきたユーザーが初めてフォルダブルを選ぶなら、この親しみやすさは大きな価値として感じられると思う。

高精細なディスプレイがDuoらしい体験を生む

両面がSuper Retina XDRディスプレイであることにより、表示される映像の画質はiPhoneらしくとても安定している。

インナーディスプレイのみNano-texture仕上げを採用しているので、光の映り込みが抑えられ、指紋の付着などもアウターディスプレイに比べると目立ちにくい。動画・写真の再生、電子書籍による読書、ウェブブラウジングなどはインナーディスプレイで楽しむ方がより心地よいと思う。

インナーディスプレイはNano-texture仕上げ。ディスプレイの強度を高めるとともに、折り目を目立ちにくくしている

本体に内蔵するスピーカーはステレオ仕様だ。インナーディスプレイを開いた状態では、左側のトップと、右側のボトムにスピーカーの開口部が配置されている。

本体を手に持ってみたり、テーブルに置いた状態でサウンドを再生してみても、わずかに右側ボトムのスピーカーの音量が大きいように感じる。中低音域には力強さがあり、音場の広がりも豊かだ。内蔵スピーカーだけでも映画や音楽の視聴には十分な没入感がある。

本体にステレオスピーカーを内蔵。没入感の高い空間オーディオ再生が楽しめる

インナーディスプレイを180度開ききる手前で、ヒンジに角度を付けてポジションを固定できる。本体を山形に立てるテントスタイルや、ノートPCのように途中まで開くクラムシェルスタイルで、置く場所に合わせて視聴スタイルが選べるのも便利だ。飛行機のテーブルにiPhone Duoを置いて、映画やアニメを視聴してみたくなった。

本体を山形に立てたテントスタイルによるコンテンツ視聴にも対応する

バッテリー持ちも好印象だった。今回の数日間の使い方では、大きな画面を備えているからといって、電池残量を過度に気にする感覚はなかった。連続再生時間を測るような検証ではないものの、普段のスマホとして使ううえで十分に長く持つ手応えがある。

筆者が気に入ったのが「スタンバイ」モードだ。iOS 17からiPhoneで利用できる機能だが、Duoの場合は本体を立てた状態でデジタルフォトフレームのようにしたり、あるいはテントスタイルにして卓上カレンダーや時計のように、単体でも色々な活用スタイルが選べる。

本体を立てた状態でスタンバイモードが利用できる。インナーディスプレイの左右に異なるアプリのコンテンツを表示

筆者はスタンバイモードの楽しさを初めて実感したように思う。大画面の価値を考えると、つい仕事の効率や動画の迫力に目が向きがちになるが、お気に入りの写真を身近に置けることも毎日使うツールへの愛着につながる。コンパクトなサイズ感であることも含めて、操作していない時間にも愛でられるところにiPhone Duoの魅力がある。

iPhone Duoはワイヤレス充電にも対応する

もの足りない部分は今後の改善に期待

反対に仕事のツールとしては、いくつかの物足りなさも感じた。ひとつはインナーディスプレイに複数アプリを同時に立ち上げて動かすマルチタスキングには、もう一歩の自由度が欲しい。

Split Viewで並べられるアプリは2つまでで、表示比率も1対1に固定される。3つのアプリを分割表示できるGalaxy Z Fold8や、ウインドウのサイズと位置を変えられる現在のiPadOSに慣れていると、ひと世代前の仕様に感じる。PixelのFoldシリーズも基本は2アプリだが、画面分割の表示比率を調整できる。

資料を広く、メモを狭く表示するなど、作業に合わせて画面を配分したい場面で、画面分割の比率調整の有無が効いてくるだろう。

インナーディスプレイによるマルチタスキングは同時に2つのアプリを起動して動かせる。左右に1対1の表示比率に固定される。iPhone Duoにまだ最適化されていないGoogleマップのようなアプリを表示すると、右側に配置されたDockの領域が占有される

iPhoneとしては大きな前進だ。それでもウインドウを自在に扱える環境に慣れていると、Split Viewが登場した頃のiPadへ戻ったようなもどかしさがある。アプリ単体の表示が丁寧に最適化されているだけに、アプリを組み合わせる自由度にもっと踏み込んでほしい。

一般的に、フォルダブルスマホには重さという代償もある。iPhone Duoも本体質量がiPhone 18 Pro Maxの249gよりも少し重い254gなので、長い時間にわたって片手で支えながら操作すると疲れてくる。筆者の場合、気付けばアウターディスプレイをメインに使っている時にも、Duoを両手で操作していることが多かった。

閉じたときのコンパクトさを、そのまま片手持ち操作の軽快さと受け取らない方がよい。両手で持ったり、机に置いたりする使い方まで含めて、自分の使い方に合うスマホなのかを確かめることが大事だ。

48MP Dual Fusionカメラシステムを採用。中味がぎっしり詰まっているiPhone Duoは、質量が18 Pro Maxよりも少し重い254gある

また今回の試用期間中、アウターディスプレイにYouTubeやNetflixの動画を表示した時に、iPhone Duoでは画面右端に新しく配置されたDockの領域が、太い黒帯のように残ることがあった。限られた表示領域を十分に活かせず、コンテンツへの集中が削がれる。ただ、この点については発売後に各アプリ側による最適化が期待できると思う。

カメラの機能も選択のポイントになる。iPhone Duoはメインカメラによる光学品質の2倍望遠撮影に対応するものの、望遠専用カメラは搭載していない。遠くの被写体を大きく捉える撮影を重視する方には、iPhone 18 Proシリーズの方が適しているだろう。

iPhone Duoはマクロ写真の撮影には対応しており、カメラシステムの構成や使い勝手は現行モデルではiPhone 17に近い印象がある。そしてiPhone Duoならではの撮影スタイルも楽しめる。

例えばアウターディスプレイに構図をプレビューしながら、48MP Fusionメインカメラを使って高精細なセルフィ写真やビデオを撮影できる。こうした折りたたみ構造を活かした撮影体験は一般的なiPhoneにはない魅力だ。

インナーディスプレイ側の「アンダーディスプレイFaceTimeカメラ」でセルフィを撮影。画質はやや粗め
アウターディスプレイにプレビューしながら、48MP Fusionメインカメラでセルフィを撮影。解像感の高い写真が撮れる

Apple Pencil対応に期待。AppleCare+加入も要検討

iPhone Duoは、どのようなユーザーのためのスマートフォンなのか。

筆者は何より、iPhoneの使い勝手を保ちながら、iPad miniに求めるような広い表示領域でコンテンツを楽しむ体験を求める方に向いていると思う。閉じた状態で、パスポートサイズに近いコンパクトなフォルダブルスマホであることにも魅力を感じる。

創作のためのデジタルツールとしても期待がある。アップルが間もなく予定しているソフトウェアアップデートにより、USB-C対応のApple Pencilが使えるようになる予定だ。

今回筆者はまだ試せていないが、メモやスケッチ、書類への書き込みがスムーズにできるようになると、大きな画面を開く理由はさらに増えるだろう。外出先にiPhoneとiPadを合わせて2台持ち出す手間も省ける。

左は8.3インチのiPad mini。iPhone DuoもApple Pencilによる手書き入力に対応した後に、iPadに迫る使い勝手が得られるようになるのか注目したい

FaceTimeなどのビデオ通話も、テーブルなどに端末を置いてハンズフリーで使うスタイルと相性がよい。会議アプリの表示や操作がさらに洗練されれば、映像を見ながら会話し、情報を共有する遠隔コミュニケーションツールとしてビジネスシーンでも活用できる。

本機の購入時には、AppleCare+も一緒に検討したい。アップルは国内向けに提供するiPhone Duoの修理サービスの見積額を公開した。

例えば過失や事故によりインナーディスプレイを損傷してしまった場合、通常は182,800円の修理費用がかかってしまうが、AppleCare+適用時には12,900円にまで軽くなる。アウターディスプレイの損傷は通常修理代金が64,800円。対してAppleCare+の適用時は3,700円となる。別途プランの加入料金として月額2,980円、または年額29,800円が必要だが、画面を破損した際の負担の差は大きく、毎日持ち歩くうえでの安心感が高まる。

インナーディスプレイ表面の保護レイヤーについても、アップルは損傷時にApple Storeや正規サービスプロバイダで交換できる設計としている。「カバーレイヤーの損傷」の見積額は、AppleCare+適用時は3,200円だ。画面本体の損傷とは分けて修理項目が設けられていることも心強い。ただし、保護レイヤーを交換できることと、折り目の経年変化がすべて補償されることは、現時点ではわけて考えるべきだろう。

さらにiPhone Duoには、修理サービスを受けられる通常のAppleCare+に加え、盗難・紛失も補償する項目が用意されている。所定の条件を満たせば盗難や紛失に備えることもできる。36万円を超えるスマホを日々持ち歩くことを考えれば、加入を検討する価値はある。画面や保護レイヤーの修理費用、補償の範囲についてApple Storeで事前に相談し、納得したうえで加入を決めるのもよいと思う。

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