増え続ける衛星やデブリに対処が必要との考え

使用済み衛星を軌道から退出させる「5年ルール」米通信当局が提案

Image:CG_Alex/Shutterstock.com

米連邦通信委員会(FCC)は、わずか2年前に制定したスペースデブリに対処するための規則を更新し、軌道上で役割を終えた人工衛星は5年以内に処分しなければならないとする「5年ルール」を提案した。

現状のルールとしては、退役した人工衛星はミッション終了直後に軌道から取り除かれるか、25年以内に軌道から退出させるべきとされている。これは、まだ人工衛星そのものや打ち上げが非常に高価で、実質的に政治的、経済的な大国にしかそれを実行することができなかった1990年代に出されたNASAの勧告だ。

しかし2020年代のいまや、民間企業が一部再利用可能なロケットを頻繁に打ち上げてメガコンステレーションを構築したり、また小規模な団体でも安価なキューブサットを制作したり、クラウドファンディングなどで資金を集めて人工衛星を軌道に投入することが可能になった。

そのため、FCCは提案の中で「地球低軌道(LEO)の使用済み衛星を軌道退出させるまでに何十年も放置することは、もはや持続不可能だと考えている」と述べ、もはや機能していない衛星は可能な限り早急に、また任務終了後5年以内には廃棄を完了するよう求める5年ルールを採用したいとした。

この提案は、NASAの勧告ではなく遵守すべきルールとしてのものであり、採用されれば法的拘束力を持つ。ただし、すでに軌道上にある衛星などは適用除外とされる。また提案された規制を承認するかを決める投票が行われる9月29日から、2年間の施行猶予を設けるとしている(採用された場合)。さらに、特に科学研究ミッションについては、ケースによって5年ルールの適用除外も認めるとのことだ。

FCCがこのような提案をすることになったのは、今後、地球低軌道の人工衛星が劇的に増加することが予想されるからだ。いくつかの民間企業は数千~数万もの小型衛星を軌道に配置する、衛星コンステレーションの構築を進めており、特にSpaceXのStarlinkは、約1万2000基の衛星を打ち上げる許可をすでに得て、さらに3万基の許可を申請中だ。また衛星通信会社OneWebも、高度約1,200kmでブロードバンド衛星を運用しており、米Amazonも今後数千基の衛星を打ち上げることを計画している。

そしてスペースデブリについても、2021年にロシアが衛星を破壊する実験を行ったことで無数のデブリが軌道上に放出されるなど、近年は問題が顕在化しつつある。ロシアがバラ撒いたデブリは時折、スコールのように他の衛星に接近するなどの問題を引き起こしている。

なお、SpaceXはStarlinkの衛星は自律的に他の物体との衝突を避ける機能を有していると主張し、増加するSpaceX衛星群がもたらす軌道上のデブリのリスクについて反論している。

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