マスク氏に半導体製造の経験ナシ

マスク氏の半導体工場「Terafab」着工へ。ペンタゴンやアップル本社が霞む巨大さ

多根清史

Image:SpaceX

イーロン・マスク氏が巨大な半導体製造施設「Terafab」建設プロジェクトを発表してから、まだ5か月も経っていない。それにもかかわらず、現地ではすでに建設が始まっている。巨大工場は構想から着工まで通常数年を要するため、異例のスピードといえる。

先週には、この施設の初期フェーズへの設備投資が168億ドル超に達すること、完成時には1億平方フィートを超える製造スペースを備えることが正式に発表された。それに合わせて完成イメージ映像も公開されたが、実際の規模感は伝わりにくい。

そこで、XユーザーのNic Cruz Patane氏が、Terafabの大きさを分かりやすく可視化した画像を公開している。

1億平方フィートは約929万平方メートルに相当し、単体の半導体工場としては桁外れの規模である。テスラの巨大工場「Giga Texas」(1000万平方フィート)、米国防総省の「ペンタゴン」(660万平方フィート)、Apple Park(282万平方フィート)、米国最大級の屋内ショッピング・娯楽施設「Mall of America」(560万平方フィート)の延床面積を合計しても、その約4分の1程度にすぎない。また、中国・成都の巨大複合施設「新世紀環球中心」の1890万平方フィートをも大きく上回る。

この広さは半導体製造施設としては途方もないように思えるかもしれない。しかしTerafabは、ロジック半導体とメモリ半導体を製造するだけでなく、リソグラフィー(露光/回路パターンをシリコンウエハー上へ転写する工程)、パッケージング、テストまでを一つの施設内で完結させるオールインワン施設となる予定である。複数の工場間でウエハーを輸送する工程を省き、大量かつ持続的なチップ生産を実現する狙いだ。

イーロン・マスク氏は2025年後半から独自の半導体製造施設の構想を語り始め、今年3月にこのプロジェクトを正式発表した。その背景には、SpaceXとTeslaの両社が少なくとも1TW(テラワット)相当の計算能力を必要とし、それが現在の世界全体の半導体供給量の10倍以上に達すると見込まれている事情がある。

NVIDIAのジェンスン・フアンCEOは、このプロジェクトについて「極めて困難」な挑戦になると警告している

一方で、マスク氏はこの計画のために莫大な資金とリソースを投入する構えだ。Terafabではインテルの14Aプロセス技術が活用される予定であり、同社のリップブー・タンCEOも「型破りな」半導体製造を模索する相手として「イーロン・マスク氏以上のパートナーは思い浮かばない」と期待を寄せている

Terafabへの総投資額は最大1190億ドルに達すると見積もられている。確かにマスク氏はSpaceXとTeslaという二つの製造業を成功へ導いた実績を持つ。しかし、半導体製造の経験はなく、短期間で有望な成果を挙げた前例もないと指摘されている。さらにSpaceX自身も、IPO向け登録届出書類の中で、この野心的なプロジェクトが「成功しない可能性」をリスク要因として認めている

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