【連載】佐野正弘のITインサイト 第22回

iPhone切り崩しの使命を帯びた“縦折り”Galaxy。若年女性をつかめるか

毎年注目を集める秋の新iPhone発表だが、今年も日本時間の9月8日未明に、新モデル「iPhone 14」シリーズが4機種が発表された。

その内容は既に報道されている通りだが、衛星通信を活用した緊急SOS機能の搭載、そして上位モデル「iPhone 14 Pro」シリーズには新しいチップセット「A16 Bionic」や、iPhoneシリーズでは初となる4,800万画素のイメージセンサーを搭載するなど、話題の多い内容だったといえる。

そして、同日朝に発表会を実施したのがアップルのライバル、サムスン電子の日本法人であるサムスン電子ジャパンである。同社は同日、日本でスマートフォン新機種「Galaxy Z flip4」「Galaxy Z fold4」を9月29日に発売すると発表したのだ。

「Galaxy Z Fold4」「Galaxy Z Flip4」

これら2機種は、既に海外で発表されていた折り畳み型スマートフォンの最新モデル。その内容は本連載でも以前触れているが、両機種ともに、従来モデルをさらにブラッシュアップしてサイズや強度面での強化を図るなど、大きな変化こそないものの、洗練度を高めているのがポイントとなっている。

だが注目すべきは、新iPhoneの発表日に日本での新製品発表をぶつけてきたことだろう。従来サムスンが、そのような対応を取ることはなかった。今回の動きから、日本市場で明確にiPhoneと対抗し、iPhoneからユーザーを奪おうという姿勢を見て取ることができる。日本市場におけるサムスンの存在感は、アップルと比べかなり低いというのが実状なのだが、なぜ同社が日本市場で、そこまで強気の姿勢を取るに至ったのだろうか。

強気の姿勢を取るに至った2つの要因

そこには、大きく2つの要因が働いているものと考えられる。その1つは、同社が育ててきた折り畳みスマートフォンが拡大基調にあり、商品力が高まっていることだ。

実際に同社の調査によると、折り畳みスマートフォンは世界で既に1,000万台以上販売されているなど市場が急成長しており、その中でも同社は7割のシェアを獲得し、非常に優位性のあるポジションを獲得している。

だが、より注目されるのが、折り畳みスマートフォンの販売比率である。折り畳みスマートフォンといえば、タブレット並みの大画面で利用できる、横開きの「Galaxy Z fold」シリーズをイメージする人が多いが、同社によると実は、大画面スマートフォンを折り畳んでコンパクトにできる「Galaxy Z flip」シリーズが、販売数の約3分の2を占めているというのだ。

折り畳みスマートフォンといえば「Galaxy Z fold」のイメージが強いが、実際は「Galaxy Z flip」シリーズの方が高いシェアを持っているという

Galaxy Z flipシリーズは、主として若い女性をターゲットとしているが、その購入者の約30%は他社スマートフォンから乗り換えて購入しているとのこと。一方日本では、iPhoneの利用者は女性を中心とした若い世代に多い傾向があり、若い女性をいかにiPhoneから乗り換えさせるかが、競合のスマートフォンメーカーにとって非常に大きな課題となっている。

Galaxy Z flipシリーズは若年女性をターゲットに据えているが、4世代となる今回の「Galaxy Z flip4」で完成度が大きく高まったことが、戦略面でも大きな影響を与えているようだ

実際サムスン電子も、世界的に人気となった韓国の人気ボーカルグループ「BTS」をプロモーションに起用するなど、ここ最近は若い世代へのプロモーションを強化していた。だがiPhone利用者を乗り換えさせるにはそれだけでは足りず、ターゲット層から支持を得る商品を必要としていたのも確かだ。

そこで、若年女性層からの評判が良いGalaxy Z flipシリーズの完成度が高まったことを機として、今回日本市場で勝負をかけてきたのではないかと考えられる。

実際サムスン電子はGalaxy Z flip4に関して、従来のNTTドコモとKDDI(au)だけでなく、新たに楽天モバイルからの販売を発表するなど販路拡大も打ち出しており、Galaxy Z flip4の販売に強い期待を抱いている様子がうかがえる。

サムスン電子は韓国の人気グループ「BTS」をプロモーションに起用しており、Galaxy Z flip4で日本に投入されたカラー「ボラパープル」は、BTSのイメージカラーであるパープルを意識したものだという

そしてもう1つは、日本市場の端末販売動向である。いくつかの調査によると、サムスン電子は2021年、これまで市場シェア2位の座を堅持していたシャープを抜いて、Androidスマートフォンメーカーでは首位の座を獲得しているのだが、市場動向を考慮すると、同社にとって好ましいかたちでのシェア拡大ではない様子も見えてくる。

昨年シャープがシェアを落とした要因は、1つに主力のミドルクラスのスマートフォン「AQUOS sense 5G」で問題の報告が相次ぎ、評価を落としたこと。そしてもう1つは、政府の端末値引き規制や3Gユーザーの巻き取りニーズの高まりなどによって、低価格スマートフォンのニーズが3万円台から2万円台に移った一方、2022年に「AQUOS wish」を提供するまで、その価格帯を埋めるラインナップをシャープが用意できなかったことが大きい。

一方でサムスン電子は、世界トップシェアで充実したラインナップを持つことを生かし、「Galaxy A」シリーズで2万、3万円台といった低価格帯のラインナップを安定的に押さえることができた。それが昨年のシェア拡大につながったと考えられるのだが、販売が伸びているのは低価格帯が主であり、利益が大きい高価格帯モデルの販売は厳しい状況が続いている。

世界トップシェアを誇るサムスン電子はラインアップの幅広さを生かし、2021年はハイエンドモデルだけでなく「Galaxy A22」など低価格モデルの充実も図っている

サムスン電子には、日本での収益性を高める上で、シェアを拡大させるだけでは足らず、フラグシップモデルの販売を伸ばすことが求められているのだ。それだけに、スマートフォンに高い性能を求め、なおかつiPhoneを好む若いユーザーにターゲットを絞り、高額な折り畳みスマートフォンをアピールして販売を強化したいと考えているのではないか。

懸念される端末価格の問題

ただしiPhoneからユーザーを奪う上で、気になるのは端末価格である。執筆時点で唯一価格が公表されている、楽天モバイルでのGalaxy Z Flip4の販売価格を見ると、13万9,800円となっている。ここ数日で大幅な円安が進んだ執筆時点の為替レートを考慮するならば、米国での販売価格(999ドル/約14.4万円)より安いのだが、10万円を超えるだけに購入しやすい価格とは言えない。

むろん、競合となるiPhone 14シリーズも円安の影響を受け、日本におけるアップルのオンラインショップでの販売価格は軒並み10万円を超えているようで、購入しやすいと言い難いことに変わりはない。ただそこで大きな差となってくるのが、端末を販売する携帯電話会社によるサポートの違いだ。

というのも、日本の携帯電話会社はアップル製品の販売に非常に力を入れる傾向にあり、iPhoneはサムスン電子をはじめ他のスマートフォンメーカーの端末と比べると、値引き施策で優遇される傾向が強い。

実際携帯各社はここ最近、一部機種を「一括0円」など非常に安い価格で販売する手法を用いるケースが増えているが、その対象となるのはiPhoneであることが多かったことから、現在も携帯各社がiPhoneの販売を優先している様子がうかがえる。

そうした状況を考えると、今回の施策でサムスン電子がiPhoneのシェアを大きく切り崩すのはまだ難しいと筆者は考える。

ただ、若年女性の熱狂的なiPhone信仰が変わらなければ、日本のスマートフォン市場のシェアが大きく変わることもない。それゆえ、チャレンジし続ける姿勢を維持していくことが、今後同社に求められるところではないだろうか。

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