車は単価が高いので影響は軽微かも

AIブームで車も値上げへ。メモリ高騰が自動車業界に波及

多根清史

Image:Lee ji youn/Shutterstock.com

AIブームが引き起こしたメモリ不足・高騰は、PCやゲーム機だけでなく、自動車のコストや部品構成にも波及し始めていると報じられている。

世界中の自動車メーカーは、メモリ価格の上昇と供給逼迫への対応を始めている。直近では、ゼネラルモーターズ(GM)が第2四半期決算で、北米における車両価格が今年約0.5%上昇するとの見通しを示した。また、GMのポール・ジェイコブソンCFO(最高財務責任者)は今週、DRAM価格の上昇を含め、今年は150億~200億ドルのコモディティ(原材料・汎用品)由来の逆風に直面すると投資家に説明した。

この発言は、GMとフォードが将来の車載向けメモリやストレージを確保するため、Micronと長期供給契約を締結してから数週間後に出たものだ。その背景には、AIデータセンターが世界のメモリ生産を大量に吸い上げている状況がある。

今年初め、Tom’s Hardwareは、OpenAIの「Stargate」のような大規模データセンタープロジェクトでは、毎月数十万枚ものDRAMウェハーが追加で必要になると報じた。これは世界のDRAM生産量のおよそ40%に相当する。

AI需要の急激な増加を受け、SK hynix、サムスン、Micronといったメモリメーカーはデータセンター向けを優先しており、その影響で消費者向けの供給が圧迫されている。昨年末にはMicronが一般消費者向けブランド「Crucial」を終了させたが、その後もメモリ不足や価格高騰はさらに深刻化している感がある。

こうした危機は一般に「RAMpocalypse」(メモリ市場が終末級に逼迫した状態)と呼ばれており、アップル製品やXbox、Steam Machineの値上げにもつながっている。

メモリ価格の上昇は、ほかの自動車メーカーにも及んでいる。日経新聞の英字メディアNikkei Asiaは、中国のEV大手BYDが今年初め、単体販売している運転支援機能の価格を20%引き上げたと報じた

韓国でも、現代自動車グループの自動車部品子会社Hyundai Mobisが、サムスンを含む国内23社・機関に対し、自動車向け半導体のサプライチェーン強化に向けて協力を呼びかけていた

こうした動きは、自動車の高機能化に伴い、必要なメモリ容量が急増しているなかで起きている。Micronは2023年時点で、平均的な自動車にはRAMとNANDストレージを合わせて約90GB搭載されていると説明していた。また、2026年までにその容量は約278GBへ増加し、一部の高級車では2TB近くに達すると予測していた

さらに最近では、同社は平均的な自動車には約16GBのDRAMが搭載されており、レベル4自動運転に対応する車両では300GBを超えるDRAMが必要になる可能性があると説明している

もっとも、自動車は単価が高いため、コスト上昇を価格へ転嫁しやすく、売上への影響は比較的限定的となる可能性もある。むしろ、AIデータセンターに加え、自動車業界までメモリ需要を押し上げることで、スマートフォンや家庭用ゲーム機など、価格転嫁が難しい分野ほど厳しい戦いを強いられるのかもしれない。

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