【連載】佐野正弘のITインサイト 第212回

KDDIの新技術でローソンをどう変わる? 大阪「ハッピーローソンタウン」に見る戦略

佐野正弘

2024年にコンビニエンスストア大手、ローソンに出資して同社の経営に参画した、通信大手のKDDI。通信・ITを主体とする企業がコンビニエンスストアを経営することには疑問の声も少なからずあったが、KDDIとローソンはその後、互いの強みを生かした積極的な取り組みを進めている。

その1つとなるのが2026年6月4日に、大阪府池田市で1号店をオープンした「ハッピーローソンタウン」である。これは少子高齢化で多くの課題を抱える地域に、KDDIの技術を活用して地域コミュニティの核となるローソンの店舗を展開することにより、街の再創生を目指すものだ。

大阪府池田市の伏尾台地区にオープンした「ハッピーローソンタウン」第1号店。KDDIの技術を活用し、街の再創生に繋げる地域の核となる店舗となるようだ

実際、第1号店の「ハッピーローソンタウン池田伏尾台店」を展開する池田市の伏尾台地区は、1970年代に設立したいわゆる「オールドニュータウン」である。最盛期には人口が7000人を超えていたものの、その後の少子高齢化により4700人以下に減少。高齢化率も47%とほぼ半数に達し、多くの社会課題を抱えている状況にある。

とりわけ大きな課題となっていたのが買い物だ。伏尾台地区は山間部を切り開いた高台にあるため、住民が日用品を買うことのできる店舗が近隣にない。コンビニエンスストアも28年前に撤退しているそうで、高齢者を中心に、長らく住民の買い物には不自由が生じていた。

そこで池田市が、2022年までバスの営業所が設置されていた土地を取得。その活用を企業から公募した結果、ローソンが手を挙げてハッピーローソンタウンの1号店を展開するに至ったとのこと。そうしたことから同店舗では、伏尾台地区の住民と直接対話し、その要望を反映し、通常のローソンとは異なる要素をいくつか盛り込んでいる。

実際同店舗には、提携関係にあるエイチ・ツー・オー リテイリングの協力を得て、同社のグループ会社の工場から直送したベーカリーや生鮮品などを販売。イートインスペースも、コンビニエンスストアで一般的な1人用のスペースではなく、大人も子供も同じ時間を過ごせるよう、小上がりもある非常に広い空間を用意するなどの工夫がなされている。

住民の声を反映し、店内には通常のローソン店舗にはないベーカリーや生鮮品の販売コーナーなどが設けられている
イートインスペースの一角には小上がりが用意されるなど、親子が過ごしやすい環境も整えられている

一方で、同店舗にはKDDIが持つ技術を活用したさまざまな仕組みも積極的に導入している。その代表例の1つが「Pontaよろず相談所」だ。

これはローソン店内で、行政や家電、暮らしなど、さまざまな困りごとをリモートで相談できるサービス。KDDIのほか、池田市役所、家電量販店のジョーシン、清掃用品レンタル大手のダスキンなど、地元企業とも連携して幅広い分野の相談にリモートで応えられる体制を整えたという。

リモートでさまざまな相談ができる「Pontaよろず相談所」の手前には、話しかけることでAIがよろず相談や地域情報の案内などをしてくれる「池田市AIサポーター」も用意

そしてもう1つはドローンの活用だ。同店舗にはローソン店舗として初めてドローンポートを常設しており、平常時は上空からの見回り活動やインフラの点検などに活用する。大規模災害などの有事には被害情報の把握や、住民への注意喚起、避難誘導など地域の防災活動にも活用していくようだ。

店舗の外にはドローンポートが常設され、非常時だけでなく平常時も住民の見守りなどに活用。奥にあるのはStarlinkのアンテナになる

災害対策ではもう1つ、店内のサイネージも商品のプロモーションや行政情報を届けるだけでなく、災害発生時には顧客や従業員に向けて即時に災害情報を発信する仕組みを整備しているとのこと。衛星通信の「Starlink」も備えており、平時だけでなく有事の際にも、技術を活用して地域の拠点となる取り組みが進められているようだ。

店内のサイネージには商品のプロモーションや行政情報が流されているが、災害発生時には店内の顧客や従業員に向けた災害情報の発信にも活用される

こうした技術の1つ1つは、実はKDDIがローソンや他の様々な取り組みで活用を進めているものでもある。実際「Pontaよろず相談所」は、2025年6月にKDDI本社のある「TAKANAWA GATEWAY CITY」にオープンした、「Real×Tech LAWSON」1号店で既に展開がなされている。

またドローンの活用に関しても、2024年12月に能登半島地震で大きな被害を受けた石川県で、ローソン店舗を活用した「地域防災コンビニ」で実証が進められている。2026年2月に千葉県富津市にオープンした「災害支援ローソン」1号店でも常設に向けた活用が検討されているほか、KDDIと協定を結んだ複数の自治体とも本格導入に向けた検討が進められている状況にある。

それゆえ、これまでKDDIとローソンの取り組みを追ってきた筆者からすると、今回のハッピーローソンタウンにおけるKDDIの技術活用に、あまり新しさは感じられない。だがKDDIの狙いは、あえて同じ技術を横展開することにより、ハッピーローソンタウンの取り組みを継続することにあるといえよう。

過疎化が進む自治体でのハッピーローソンタウンのような取り組みをすること自体は、企業が社会貢献をする上で非常に重要だ。だが一方で、ビジネス面でのうまみは少なく利益を出すのが非常に難しい。そこに新しい技術を積極的に活用するとなれば一層大きなコストがかかるため、採算が合わず事業を継続できない可能性が高まってしまう。

ローソン代表取締役社長の竹増貞信氏は、ハッピーローソンタウンの展開は「赤字で続けられるものではない」と話し、採算をとった事業運営によって得られたものを地域に還元するという、好循環を実現したいと話していた

それだけにKDDIが力を入れているのが、社会貢献に寄与するドローンなどの技術活用を1つのパッケージにまとめ上げること。それを全国の多くの地域で横展開していくことにより、新技術を活用しながら利益を出し、事業を継続できる体制を作り上げようとしているわけだ。

こうした施策は、ある意味でフランチャイズビジネスを主体としているローソンに近しい部分があり、ハッピーローソンタウンにおけるKDDIの技術活用は親和性が高いとも感じる。ただそうした取り組みを、住民がどこまで受け入れてくれるかという点まで、店舗オープン時に見えているわけではない。

実際、Pontaよろず相談所などは、テクノロジーに馴染みのない地域住民が、リモートによる対応をすんなり受け入れてくれるかどうか、不透明な部分が大きい。ドローンに関しても、平常時に利益を得るための活用事例がまだ多いとは言えない実情がある。

ハッピーローソンタウンは今後全国に100店舗を展開する予定としている。だが、そこで活用するテクノロジーを地域や住民に受け入れてもらうには、乗り越えるべき課題がまだ多いというのが正直な所ではないだろうか。

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