【連載】佐野正弘のITインサイト 第211回

発表が秋から春にずれた「Xiaomi 17T」シリーズ、Xiaomiの日本戦略に大きな変化

佐野正弘

2026年初頭から相次いでスマートフォン新機種を日本市場に投入している中国のXiaomi。そのXiaomiは、2026年5月28日にも新しいスマートフォン「Xiaomi 17T」シリーズの2機種、「Xiaomi 17T Pro」と「Xiaomi 17T」の発売を発表している。

Xiaomiは2026年5月28日に「Xiaomi 17T」シリーズ2機種を発表。前機種「Xiaomi 15T」シリーズから1年が経過することなく、新機種が発売されることとなった

その詳細は他記事に譲るが、Xiaomi 17Tシリーズは「T」が付くだけあって、Xiaomiの中ではフラッグシップモデルではないものの、高い性能を持つハイエンドに分類されるモデルだ。

それゆえXiaomi 17T Proはチップセットにメディアテック製の「Dimensity 9500」を、Xiaomi 17Tは「Dimensity 8500-Ultra」を搭載するほか、カメラは共に独ライカカメラと共同開発した3眼カメラを搭載するなど、機能・性能面での充実度は高い。

上位モデルの「Xiaomi 17T Pro」はハイエンド向けのチップセットに3眼カメラ、7000mAhのバッテリーを搭載。FeliCaにも対応するなど、機能面での充実度は高い

ただ価格を見ると、市場想定価格はXiaomi 17T Proは11万9800円から、Xiaomi 17Tは8万9980円からと、前機種の「Xiaomi 15T」シリーズからはやや値段が上がってしまっている。そこにはもちろん、昨今の円安やメモリ不足、そして中東情勢などが影響しており、コストパフォーマンスに強みを持つXiaomiとはいえ、その影響からは逃れられないようだ。

ただ同社としては、それでも価格を抑えるべく販売面での施策を強化している。実際同社はXiaomi 17Tシリーズの発売に際して、従来実施している事前予約者に向けた早割りキャンペーンに加え、下取りプログラムを利用した際の「下取りボーナス」や学生向けの「学生割引」を追加した。

それに加えて分割払いが可能な後払い決済サービス「アトカラ」を利用して購入することで、1万円のキャッシュバックが得られるキャンペーンも新たに実施。一連の割引やキャッシュバックを合計すると、Xiaomi 17T Proの最も安価なモデルで実質10万円を切る価格を実現するとしており、なんとかお得さを実現しようとしている様子がうかがえる。

Xiaomi 17Tは値段が上がった分販売施策に力が入れられており、Xiaomi 17T Proの場合、全ての施策を適用するとモデルによっては実質10万円を切る価格で購入できるとしている

なぜXiaomiが、Xiaomi 17Tシリーズでそこまで価格にこだわるのかといえば、携帯大手からの販売がないことも少なからず影響しているのではないかと筆者は見る。Xiaomiブランドの「T」が付くモデルは、これまで日本では主力モデルの1つとして展開され、KDDIやソフトバンクが販売したモデルもある。

だがXiaomi 15Tシリーズに続いて、Xiaomi 17Tシリーズも携帯大手からの販売がなされていない。それだけにXiaomi自身の販路でいかに多く販売するかが求められ、より購入しやすいことに重きを置いた戦略が必要になってきた、と見ることもできよう。

日本法人である小米技術日本(シャオミ・ジャパン)の社長である呂暁露氏は、Xiaomi 15TシリーズとXiaomi 17Tシリーズに関して、携帯各社と情報交換はしていたと話す。ただ性能の進化が大きかったことや、開発スケジュールに変更が生じたことなどもあり「情報がキャリアに届くのに時間がかかってしまい、採用に値するか検討する時間が足りなくなった背景がある」と、スケジュール面で課題があった様子も示している。

小米技術日本の呂氏はXiaomi 17Tシリーズなどに関して、製品開発スケジュールの影響で、携帯各社に情報を伝えるタイミングに課題が生じていたと話している

それだけに、携帯各社への採用を進めるならばスケジュール面での改善が求められる所だが、そのスケジュールに関して、Xiaomi 17Tシリーズではかなり大きな変化が生じている。従来、XiaomiブランドのTが付くモデルは秋に発売されており、Xiaomi 15Tシリーズも2026年9月に発売されていたのだが、Xiaomi 17Tシリーズは2026年6月の発売と、大幅に前倒しがなされているのだ。

これはXiaomi全体の戦略変更によるものだそうで、呂氏は「中国とグローバル(中国外)との発売タイムラインをできるだけ合わせ、発売の時差をなくそうとしている」ことがその理由だと話す。

小米技術日本のプロダクトプランニング本部本部長である安達晃彦氏も、フラッグシップモデル「Xiaomi 17 Ultra」でブランドを構築した後に、下位モデルのXiaomi 17Tシリーズをすぐ展開できることから、Xiaomiブランド全体で見ると今回のスケジュール変更が製品展開のバランス的にもメリットのあるものだと話している。

小米技術日本の安達氏は、Xiaomi Tシリーズの発売スケジュール変更で、製品展開のバランスが取りやすくなると話している

それゆえ今後はXiaomiブランドのTが付くモデルは、現在のタイミングで発売されるようになると考えられる。ただそれが携帯各社の戦略にマッチするとは限らない。Xiaomi自身のスケジュール感と携帯各社のスケジュール感の相違は、携帯電話会社向けのビジネスをしていく上では引き続き課題となりそうな印象を受ける。

ただXiaomiは現在、どちらかといえば自社販路の拡大に大きく舵を切っている状況にある。実際、同社は実店舗の「Xiaomi Store」の展開に力を入れており、2026年3月から4月にかけては関西地区で4店舗を相次いでオープン。7月中旬には愛知県名古屋市にも店舗をオープンする予定で、東京・秋葉原のサポート拠点「Xiaomi Service Center」を含めると11店舗を展開することになる。

春にオープンが相次いだ関西地区に続き、2026年7月には名古屋でもXiaomi Storeをオープンする予定で、店舗網を急拡大している

呂氏はXiaomi Storeを拡大する狙いとして、「ブランド認知と、ユーザーのタッチポイントを増やすという、2つのメリットがあると考えている」と話す。Xiaomi Storeはショッピングモールを主体に展開しており、多くの人が立ち寄りやすい環境にあることから、製品に惹き付けられて顧客が訪れることにより、Xiaomiのブランドを知ってもらう流れができつつあるようだ。

ブランドの認知を高めて製品販売につなげるというのがXiaomi Storeの戦略といえそうだが、呂氏によると店舗展開は当面、東名阪の3大都市エリアに絞る方針も示している。全国に展開するとなると物流や管理にかかるコストが上昇してしまうことから、まずは消費者が集中している都市部で重点的に店舗展開を進め、知名度向上を図る考えのようだ。

そしてもう1つ、新たな戦略としてXiaomiは今回、日本でエアコンや冷蔵庫、洗濯機などの大型家電の販売を検討していることも明らかにし、製品ラインアップの幅をさらに広げる姿勢も見せている。呂氏はその理由について、「グローバルで大型家電を推進している」ためと答えている。

Xiaomiは新たな戦略として、2026年下期に向け、日本でも大型家電を導入することを検討していると明らかにした

生活に寄り添うXiaomi独自の機能で、海外の一部の国では大型家電でもある程度成功を収めていることから、「日本のユーザーにもできるだけ(製品を)ローカライズして提供したい」と呂氏は話している。ただ大型家電は、Xiaomiが従来販売している小型家電と比べ、設置やリサイクルなども求められ、さまざまな事業者の協力が必要になることから販売のハードルが高い。

それだけに呂氏も、設置やリサイクルなどに関しては「クリアするのにハードルが高いことを認識している」と答えている。現在は日本市場のリサーチを進めてユーザーに安心して使える環境をどこまで提供できるか、検討を進めている段階だというが、2026年内にはいくつかの製品を投入することを目標にしているとのことだ。

主力モデルの発売時期変更や自社販路強化、そして大型家電の販売検討と、Xiaomi 17Tシリーズに合わせて打ち出されたXiaomiの戦略を見ると、日本でも海外の販売戦略を踏襲しようとしている様子が見えてくる。これまで日本は独自性が強い市場とされてきたが、さまざまな環境変化によってその独自性が薄れ、他の国と同じ戦略が通用するようになったとXiaomi側が判断したが故だろう。

ただ以前より弱くなったとはいえ、携帯大手の販路が今なお大きいことに変わりはなく、コストのかかる自社販路と製品数の拡大で、それを超える販売を実現できるかはまだ見えていない。Xiaomiが独自路線に大きく舵を切るタイミングとして、現在が適切なのかどうかは議論を呼ぶところかもしれない。

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