Houston, we have a "poo"blem...
NASA、約50年ぶり有人月周回ミッション「アルテミス2号」打上げ。1時間でトイレ故障もなんとか復旧

4月1日午後6時35分(現地時間)、NASAは1972年以来だれも到達したことのない月周回軌道へ4人の宇宙飛行士を送り出すアルテミス2号ミッションを開始した。
巨大ロケットSpace Launch System(SLS)に搭載されたオリオン宇宙船には、NASAのリード・ワイズマン飛行士、ヴィクター・グローヴァー飛行士、クリスティーナ・コッホ飛行士、そしてカナダ宇宙庁(CSA)のジェレミー・ハンセン飛行士が搭乗している。
液体水素燃料のRS-25 Dエンジン4基と固体ロケットブースター2基に火が入り、高さ92mの巨体が地面から浮上すると、わずか1分でロケットは音速に達した。そして、高度4万6000mに到達したところで2基のブースターを分離した。
コアステージにある残り4基のエンジンはさらに6分間燃焼したが、その間に、打ち上げ中止システムと、オリオン宇宙船を保護していた外装パネルが切り離された。エンジン停止後は40分以上の慣性飛行を続け、上段RL10エンジンの点火を前に、4枚の発電用太陽電池パネルを展開、オリオン宇宙船を安定した低地球軌道に乗せた。
こうして飛行士たちは1972年以来誰も到達したことのない、はるかに高い軌道に向かい、出発から数時間後にはすでに壮大な地球の景色を見下ろすことができた。
その一方で、有人深宇宙探査ミッションで初めて設置された本格的なトイレ設備にはさっそくトラブルが発生した。
オリオン宇宙船のトイレは、床面に設置され、カーテンで仕切ることでプライバシーを保護するようになっている。バキューム式に排泄物を吸い込み、尿は浄化してクルーの生活用水として再利用する。NASAはこのトイレの開発に2300万ドルを投じて、男女の体型両方にフィットして排便と排尿を同時に行う「Dual ops」にも対応するスグレモノだ。
だが、打ち上げから1時間後に電源が入ったトイレは、すぐに故障を示す警告ランプを点滅させた。
管制センターとトイレの修理にあたったクリスティーナ・コッホ飛行士は、警告ランプのほかに、本来ならビーズのようなものが詰められているはずの尿フィルターが空だと報告した。そして、少し水を出してみたところ、トイレの電源が落ちた。
NASAの関係者がフロリダの現地報道に語ったところでは、警告ランプの直接的な問題は、トイレを制御する電子機器の不具合だった。また、給水タンクのバルブにも問題があり、トイレへの水流を妨げていたという。 ヒューストンの管制官エイミー・ディル氏は、コッホ飛行士にトイレ問題の対処法を丁寧に説明した。その会話はNASAのライブ配信でしっかり流されていた。
幸いにも、飛行士たちにはかつてアポロ計画時代に飛行士が使用したのと同じ、排泄物収集袋が用意されていた。アポロ計画当時は、狭い宇宙船にはトイレを設置するスペースなどなかったため、飛行士らは月への往復中にもよおした場合、口を接着剤で封じることが可能な袋に排泄物を入れ、それにバクテリアを殺すための薬剤を入れて保管していた。
また、月面には当時の収集袋約96袋が廃棄されているという。これは、月面の石やレゴリスと呼ばれる砂を少しでも多く持ち帰り、かつ機体を軽くして地球へ帰還するためだった。
今回、オリオン宇宙船の飛行士がこの収集袋を使ったのかは定かではないが、トイレの修理完了後、コッホ飛行士は管制センターに無線で、トイレの故障中にいっぱいになった収集袋はいつ捨てられるのかと尋ねていた。
なお、今回のトイレ不具合は、最終的にNASAの管制チームによるトラブルシューティングが奏功し、トイレの「システムが適切な作動速度に達するまで待ち、使用後も少しの間作動させておく」ことで不具合の再発を回避できるようになったという。アルテミス2号のクルーがトイレを再び使用できるようになったのは、打ち上げから約5時間が経過した頃だった。

NASAは20年以上にわたり、人類を再び月に着陸させるべく、アルテミス計画に1000億ドル近くを費やしてきた。しかしその間に、宇宙開発分野では中国が台頭し、いまやNASAと月面への到達を競うライバルとなっている。
アルテミス2号は、約半世紀ぶりとなる月への有人探査だが、月面への着陸は行わない。今回のミッションは、NASAが宇宙飛行士を地球から月へ送り、ミッション終了後に帰還させるために計画する輸送システムの実証試験という位置づけになる。このミッションの最初の大きな節目となったのは、今回の打ち上げ成功であり、これによって、続く手動操縦の実証、軌道修正操作、生命維持システムの点検、そして月の裏側を通過する周回飛行が可能となった。
アルテミス2号ミッションは、順調に行けば、4月6日にはこれまで人類が到達したことのない、地球から最も遠い地点(地球から40万6840km)に到達し、飛行士たちは肉眼で月の裏側の姿を見ることになる。
その後、オリオン宇宙船は月周回軌道でスイングバイを行い、地球へ帰還する軌道に方向転換し、4月10日にカリフォルニア沖に着水する予定だ。
アポロ時代に比べると、21世紀の月面探査は民間企業によるNASAとの協力が大きな違いとなっている。SpaceXおよびBlue Originは、オリオン宇宙船から飛行士が月面に降り立ち、ふたたび月の軌道へと戻る有人着陸船の開発でNASAに協力している。またAxiom Spaceは、宇宙飛行士が月面で着用する新しい宇宙服を開発中だ。
- Source: NASA
- via: Space.com Ars Technica
