登場する時代を間違えた製品はたくさんあります
MacBook Neoを購入した元マイクロソフト幹部、Windows RTを回顧し“失敗の理由”語る

元Windows責任者のスティーブン・シノフスキー氏は、アップルが先頃発売したMacBook Neoを入手したことをXに投稿し、「本当に驚かされた。これはパラダイムシフトを起こすコンピューターだ」とこの廉価版Macに高い評価を下した。そして、かつて自身がWindowsの歴史の中でも野心的な方向性を持つ製品を推進し、失敗におわった過去を振り返っている。
シノフスキー氏は、Xの記事で「今日Mac Neoが届くのを(すごく)楽しみにしていた。シトラスの512GBモデルだ」と、ウキウキな心境がにじみ出る文章で記事を書き始めた。
しかし、その心境は「少し憂鬱な気分になったのも事実だ」と揺れ動いていた。なぜなら、シノフスキー氏はWindows 8とWindows RTという、いまでは失敗作と評されるバージョンのWindowsを責任者として世に送り出した人物だからだ。

なかでもWindows RTは、従来のx86プロセッサではなくArmチップ向けに設計され、薄く、軽く、 低消費電力なモバイルPCの実現を目指したOSだった。だが、2012年当時のArmチップはx86アーキテクチャー製品に比べるとまだまだ非力だったうえ、従来のWindowsアプリとの互換性がないことなどもあり、ユーザーからの支持を得たとは言えないまま市場から姿を消してしまった。
アップルは、Windows RTの登場から8年後の2020年に、自社開発のArmチップであるApple Siliconを発表してx86シリーズからの移行を開始した。ここでアップルは、Mac向けに開発したMシリーズチップに、Macで採用していたインテル Core i シリーズと同等以上の性能を持たせ、さらにエミュレーション技術を用いてアプリケーションの互換性を可能な限り保つようにした。

その結果、Apple Siliconを採用するMacは毎年好評を博し、最終的に同社史上最も手頃な価格のノートパソコンであるMacBook Neoへと結実した。
シノフスキー氏はMacBook Neoを眺めながら「こうだったらよかったのに」と感じたと率直に感じたのだという。同氏はコンピューター業界の歴史においては、時代を先取りした製品を開発したにもかかわらず、その普及推進がうまくいかずに、失敗に終わるケースが往々にしてあると指摘し、Windows RTを搭載したSirface RTも「そういうものだったという結論に落ち着くことが多かった」と述べた。
だが、MacBook Neoを見たシノフスキー氏は、マイクロソフトもプレミアムでありつつ手頃な価格の高性能ArmノートPCを出せば、同様の成功を掴めたのではないかと考えている。同氏いわく、アップルは(特にiOSにおいて)長らく独自のアプリストアを中心に閉鎖的なソフトウェアエコシステムを維持してきたと指摘し、その結果、より効率的で安全なアプリが生まれる道が開かれたとの分析を述べている。
一方、マイクロソフトはWindowsのソフトウェアエコシステムにおいて、オープンであることを維持し続け、それこそがWindowsの成功の核心であり、神聖なものだととシノフスキー氏は述べている。だが、それは同時に、「変化を必要とする部分」でもあることが明らかだとした。
またアップルはMacにApple Siliconを導入する前に、iPhoneでArmチップについての知見を蓄積し、並行してMac向けのプロセッサーを開発したことも、マイクロソフトの戦略との重要な違いだった。シノフスキー氏は、この点については初代SurfaceにTegraプロセッサーを提供したNVIDIAの開発をうまく支援すれば、同様の成果を得ることもできたはずであり「マイクロソフトは早い段階から Windows RT に注力し続けるべきだった、そうすれば長期的には成果が出たはずだ」と考えている。
だが、同氏がマイクロソフトを去ったのちに「新しいリーダーたちに提案した救済策は、RTを企業向けChromebookとして発表されたばかりのものに変えること だった」。とし、「いま人々は、MacBook Neoについてどう語っているだろうか?それは、より優れたChromebookだ」と述べている。
とはいえ、同氏はRAM容量が8GBしかないMacBook Neoを一通り試した後で、「アプリや写真などをすべて起動してみたが、MacBook Airとの違いはまったく分からなかった」と彼は書いている。そして、「最初の数時間で最大メモリ使用量は7GB弱までだった…すべての『妥協点』は完全に許容範囲内で、私には全く気にならない」「Neoはこれ以上良くなる必要はない。ただ、優れた性能を維持し続ければいい」と評した。
- Source: Steven Sinofsky(X)
- via: PCMag
