WECも検討中

テスラ抜きEV販売世界一のBYD、F1への参戦を検討中との報。実現の可能性は?

Munenori Taniguchi

Image:BYD

中国の電気自動車メーカーBYDが、自動車レースの最高峰、F1世界選手権への参戦を検討しているとBloombergが報じた。

BYDは昨年、電気自動車販売台数でテスラの163万台に対して225万台以上を販売した。これによって同社はテスラを抜き、世界で最も電気自動車を販売している企業の座についた。

BYDは、中国国外での販売台数を前年比150%となる100万台超に伸ばした。だが、依然として半数以上はまだ中国国内での販売であり、同社は2026年の国外販売台数を130万台にまで伸ばしたいと考えているという。ただし、現段階では検討をしているとのことで、まだ決定は下されていないという。

同社は、欧州などの主要な国外市場でショールームの設置や現地マーケティングへの投資を進めているが、現状ではまだ同社が望むほどには市場でのブランドイメージ向上には結びついてはいないようだ。

そこで、有効な手段として検討されているのがF1への参戦、ということらしい。今年から、F1はマシンに関するルールが大きく改定され、ハイブリッド式パワーユニットの出力比率がモーターとエンジンで50:50になったことも、内燃機関のみの車の生産をやめ、バッテリーEVとPHEVに製品の集中に舵を切ったBYDにとっては、魅力的なのかもしれない。

Bloombergによれば、BYDはF1への参戦方法に関して自前のチームを立ち上げることや、既存のチームを買収することなど、何通りかの選択肢を検討しているという。だがその実現可能性は高いのだろうか。

もし、新たにチームを結成してF1に参戦しようとするならば、そのためにかかるコスト負担は非常に大きなものとなる。

F1では各国のテレビ放映権料とレースの開催権料、サーキットに設置される広告からの収入などをF1の興行面を管理運営する組織であるFormula One Management(FOM)に集め、そこから各チームに、前年度のランキングに応じて分配している。

そこに新規参戦のチームが加わることになれば、当然ながらチームごとの取り分は目減りしてしまうことになる。ランキング上位のチームは分配金も多いため影響はそれほどでもないかもしれない。だが、下位チームになるほど分配金は少なくなり、またチームが用意できる予算も不足する傾向があるため、新規参戦チームが現れると、運営が苦しくなるチームが出てくる可能性もある。

そのため、F1およびF1チームの間の協定により、新規参戦しようとするチームは、参戦によって目減りする各チームの分配金減少分を補償する額を、あらかじめF1に提出する決まりになっている。

今年は、この方法によってアメリカからキャデラックがF1に参戦を果たした。Bloombergによれば、キャデラック(の親会社であるGM)は補償金としてF1に4.5億ドルを支払ったという。もちろん、キャデラックはこれとは別に、チームを組織し、マシン開発からテスト、レースに参加するための運営資金も投じている。こちらは推定で5億ドルと言われている。

これらは決して安くはない金額だ。とはいえ、現在のBYDの収益は数千億ドルとされており、資金的な問題はBYDにとってはそれほど大きくはないかもしれない。

ただ、キャデラックは、F1統括団体であるFIA(国際自動車連盟)やFOMなどとの参戦に関する交渉に、数年の時間を要した。

もしBYDが早期のF1参戦を望むなら、現実的な選択肢は既存チームの買収ということになる。そうすれば、上記のようなコスト負担や面倒な交渉ごとはかなり軽減され、早ければ1~2年で参戦が可能になるはずだ。ドイツのアウディは、昨年までのザウバーF1チームを買収して、今年からF1に参戦を果たした。

だがこの方法も、これから潜在的買収対象チームを探すとなると、すんなりと決まる話でもなさそうだ。現在のF1参戦チームのなかで、買収提案に応じる可能性がありそうなチームがあるとすれば、可能性としては、このところ成績不振が続くアルピーヌF1チームが考えられる。最近伝えられたところでは、アルピーヌF1チームの株式の24%を保有するオトロ・キャピタルは、その株の売却先を探しているという。

しかし、アルピーヌの親会社であるルノーのルカ・デ・メオCEOは「F1はアルピーヌブランドの信頼性にとって不可欠」「チーム売却はしない」と公言しており、同チームを手放す気はないようだ。BYDが買収を実現しようとするならば同氏を説得しなければならない。

なお、BYDはF1のほかにも、ル・マン24時間レースで知られるWEC(世界耐久選手権)を含む、複数の世界選手権シリーズを検討しているとされている。近年のF1は非常に人気が高まっているが、その起爆剤になっているのはNetflix『Formula 1: 栄光のグランプリ』や、アップルの映画『F1/エフワン』であり、特に米国を中心とした盛り上がり方をしている。だが、BYDは、主に高い関税と市場規制のため、米国で同社のクルマを販売していない。F1が本当にBYDにとって最適な選択肢かどうかは、少し冷静に考える方が良いのかもしれない。

国際的なモータースポーツに関わっている中国の自動車メーカーとしては、すでに10年以上にわたりフォーミュラEに参戦しているNIOがある。また、Cheryはル・マン24時間レースへの参戦を検討していると報じられている。Geelyは、かつてボルボのファクトリーチームだったCyan Racingを通じて国際ツーリングカーレースに参戦した。

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