気づかぬうちに録画されていたケースも

Metaスマートグラスの映像、下請けが「見ている」ことが発覚。着替えやカード情報もまる見え

多根清史

Image:Tada Images/Shutterstock.com

Meta Ray-Banスマートグラスで記録された映像や音声が、ケニア・ナイロビの下請け労働者により手動レビューされ、プライバシーや金融情報など機密内容も見られていたと報じられている。

スウェーデン媒体の調査報道によると、これには浴室利用や着替え、性行為や銀行カード情報などが含まれていたとのこと。匿名の作業員は、ユーザーがベッドサイドにグラスを置き忘れ、パートナーが無自覚で裸になるケース等、気づかれぬ録画が多数あったと証言している。さらに顔ぼかしアルゴリズムが低照度で失敗し、個人が特定可能だったものもあるという。

この報告が公開された後、米国ではMetaに対してRay-Banグラスのプライバシー侵害をめぐる集団訴訟が提起された。訴状では、MetaがRay-Banの映像利用につき誤解を招く説明を行い、プライバシーを危険に晒したと同社を非難している。Metaは映像データが「デバイス上に留まる」と主張し、販売店スタッフも「ローカル処理」と述べていた事例もあったが、実際には外部サーバーに送信されていることが確認されている。

この下請け業者はMetaのAI訓練作業の一環として、Ray-Banが撮影した私的な動画を確認していた。映像にある物体に手動でラベルを付け、同社のAIが現実世界のなかで認識できるようにするものだ。これはAIモデルでは一般的なプロセスであり、Metaは利用規約で人間によるレビューを認めている。それでも、同社が「プライバシー重視」を宣伝していることと矛盾している。

米ZDNETの取材に対しAppOmniのAIセキュリティ担当ディレクターであるMelissa Ruzzi氏は、ほとんどのユーザーは利用規約にあるデータ利用の項目を読み飛ばしてしまうことや、個人情報の漏えいやフィッシング攻撃など深刻なリスクにつながる可能性があると警告している。

ウェアラブルAI機器には、この種の懸念は常につきまとう。スマートグラスは、同意なしに周囲の人々や私的空間を録画できてしまうからだ。こうした懸念から、多くの企業が職場でのスマートグラス使用を禁止しているとも報じられている。

特にMeta Ray-Banグラスは2025年内に700万台以上も販売されており、データ漏えいリスクへの懸念も高い。実際、英国の情報委員会を含む欧州の規制当局は、GDPR(EU一般データ保護規則)違反の疑いで調査していると報じられている

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