高齢者の過去の記憶を思い出させる
過去のラジオ風コンテンツをAI生成する「RADIO TIME MACHINE」発表。介護施設で導入検証へ

TBWA HAKUHODOは、過去のラジオ番組のような音声コンテンツをAI生成するデバイス「RADIO TIME MACHINE」を発表。3月5日からニチイ学館の介護施設への導入を検証するプロジェクトを開始する。発売時期は未定だが、商業展開の際はリースでの導入を想定している。
RADIO TIME MACHINEは、生成AIを使用することで、過去のラジオ番組を模したニュース原稿を自動生成できるデバイス。介護業界におけるテクノロジー活用の一環として開発された。デザインは介護施設の利用者になじみのある1950年代から60年代のラジオ機器をモチーフに設計。あえて実際のラジオデバイスにすることで、高齢の利用者だけでも自由に使用できることを目指した。

ダイヤルを回転させるだけで利用でき、回転させると周波数ではなく西暦を切り替えられる。使用日と同じ日付のものを生成する仕様となっており、たとえば2026年3月5日に操作した場合、過去の3月5日のコンテンツを再生できる。自ら積極的にダイヤルを回す行為を生むため、利用者の身体機能の向上に寄与できると考えているという。

再生するコンテンツは、ニュースが流れるパートとヒット曲が流れるパートに分けて生成。ニュースは独自に作成したニューストピックリストに基づき、Wikipediaに掲載されている過去の出来事を参照し、当時のラジオ番組を模したニュース原稿を自動生成させる。使用モデルは非公開。Wi-Fi接続することで利用できる。

ヒット曲については、独自のヒット曲リストから楽曲データを再生する仕組み。現在再生している楽曲については版権元から許可を得たものを使用しているが、今後は音楽ストリーミングサービス提供企業との連携を検討したいとしている。
AIボイスについては、30名以上の声を収録したものをもとに生成する。当時のラジオ番組を思わせるような懐かしく自然な語り口を再現するため、過去のラジオ番組にみられる話し方、抑揚、テンポから規則性を構築し、時代感を反映しつつ音声として都度生成するという。
生成するコンテンツの時間は自由に調整でき、数分間から数時間まで選べる。現状では利用者が気兼ねなく楽しめるよう、20分間でコンテンツがループされるように設定しているという。利用法としては、介護施設のオープンスペースに設置し、自由に利用者が使ったり、レクリエーションの時間にスタッフのサポートして使ったりすることを想定している。

ニチイ学館では、今年の1月下旬から2月下旬に、同社の介護施設において複数利用者を対象に実証実験を実施。過去の記憶を思い出すことで、表情解析では笑顔の値が平均8.7%、骨格推定を用いた身体活動解析では身振りや手振りが平均100%、1分あたりの発話量が平均10.8語増加したという。なかには、笑顔が23.8%上昇した利用者もいたという。
この結果について、同社GENBA SMILE Labs所長の松本裕美子氏は、「思い出が思い起こされ、心理的安定やさらなる安心感に繋がり、日々の生活により一層の彩りをもたらすことができる」と説明。利用者同士の交流による刺激や、介護スタッフと利用者の相互理解・関係性構築に繋がる、といったことに繋がるとした。

今後は、TBWA HAKUHODOと北里大学医療衛生学部が共同研究を実施する予定とのこと。本デバイスによって、落ち着かない、怒りっぽい、意欲が低い等の行動・心理症状を抑制する作用を検証していくという。
現在はRaspberryPiを使用して作成しているが、今後は量産しやすいかたちを目指していく。たとえばニチイ学館との導入プロジェクトでは、スマートフォンに箱を被せダイヤルを付けるといった必要最小限の廉価版を作成することで、数十・数百の規模で検証できるよう協議しているという。
