【連載】佐野正弘のITインサイト 第199回

20万円超の新フラグシップスマホを日本で売る、サムスンとXiaomiの販売戦略

佐野正弘

2026年3月2日から、スペイン・バルセロナにて携帯電話業界最大の見本市イベント「MWC Barcelona 2026」が開催されている。筆者はあいにく諸事情により今年の取材は見送ることとなったのだが、その開催に合わせてスマートフォンメーカー各社が、国内でも発売するフラグシップモデルの新機種を相次いで発表している。

その1つが韓国サムスン電子である。同社は米国時間の2026年2月26日に、フラグシップモデルの新機種「Galaxy S26」シリーズ3機種を発表している。その詳細は既報の通りなので詳細については既存の記事を参照いただきたいが、簡単に振り返ると、大きな特徴の1つは同社が力を入れている「Galaxy AI」の進化だ。

サムスン電子が発表した新しいフラグシップモデル「Galaxy S26」シリーズ。今回は3機種を日本市場に投入することとなる

今回はユーザーの行動を先読みして必要な情報を提示する機能などに力が入れられており、メッセンジャーアプリで相手から届いたメッセージをAIが読み取り、必要に応じてカレンダーや写真などのアプリと連携して情報を提示する「Now Nudge」などが、その代表的な機能といえるだろう。

ハード面でも、カメラの機能・性能強化に加え、最上位モデルの「Galaxy S26 Ultra」には新たに「プライバシーディスプレイ」が追加されている。これは画面ののぞき見を防止する機能なのだが、ディスプレイを直接制御することで画面全体だけでなく、通知など見られたくない一部分だけののぞき見を防止できる点が、従来にない大きなポイントとなっている。

最上位の「Galaxy S26 Ultra」に搭載された「プライバシーディスプレイ」。画面全体だけでなく、通知など画面の一部分だけをのぞき見防止することが可能だ

そしてもう1つ、今回のMWC Barcelonaに合わせてフラグシップモデルのグローバル展開を発表したのが中国のXiaomiである。同社は2026年2月28日にグローバルでの新製品発表イベントを実施しており、中国では既に発表しているフラグシップモデル「Xiaomi 17」シリーズの海外展開を発表している。

中でも注目を集めたのは、フラグシップモデルの中でも最上位モデルの「Xiaomi 17 Ultra」だろう。これは2025年発売の「Xiaomi 15 Ultra」の後継モデルに当たり、独ライカカメラと共同開発したカメラがより大幅に強化されていることが大きな特徴となっている。

Xiaomiが新たに発表した最上位のフラグシップモデル「Xiaomi 17 Ultra」。ライカカメラと共同開発したカメラが一層強化され、暗所や望遠での撮影により一層強くなった

実際、Xiaomi 17 Ultraの広角カメラには、新しい1インチイメージセンサーの「Light Fusion 1050L」を搭載。「LOFIC」という技術を用いることで、花火のように暗い場所で高い輝度の光を放つシーンにおいても、その明るさを抑えて鮮明に表現できるようになった。また望遠カメラには、2億画素のイメージセンサーを搭載するだけでなく、新たに75mm〜100mmの間の可変式光学ズームを搭載。遠くの場所をより鮮明に撮影できる。

加えてもう1つ、注目を集めたのが「Leica Leitzphone powered by Xiaomi」であろう。これはカメラ機能だけでなく本体デザインなどもライカカメラが監修したスマートフォンであり、Xiaomi 17 Ultraをベースに開発されている。

Xiaomi 17 Ultraをベースに、デザインなどもライカカメラが監修した「Leica Leitzphone powered by Xiaomi」。シャープからXiaomiへと開発パートナーを変更して世界展開するようだ

Leitzphoneといえば、日本ではシャープが開発し、ソフトバンクが販売したライカカメラ監修のスマートフォン「LEITZ PHONE」シリーズを思い出す人も多いことだろう。今回のモデルはそのコンセプトを引き継ぎながらも、パートナーをシャープからXiaomiに変えて世界展開を図るモデルへと変化している。

冒頭でも触れた通り、サムスン電子とXiaomiが発表した、これらのフラグシップスマートフォンは、既にいずれも国内投入の発表がなされている。だがいずれも最上位モデルはほぼ20万円、あるいは20万円を超える価格で、円安とインフレに苦しむ日本の消費者がとても容易には購入できないことも確かだ。

それだけに重要になってくるのが、いかにして少しでも多くの人に高額なスマートフォンを購入してもらうかという日本での販売戦略だ。しかし両社の発表内容を見ると、その戦略は180度違うといっても過言ではないくらい、大きな違いが出ているのが興味深い。

まずはサムスン電子だが、同社は投入するモデル数と販路を大きく拡大し、より幅広い層にアピールする戦略を取るようだ。実際サムスン電子はスタンダードモデルの「Galaxy S26」と最上位モデルのGalaxy S26 Ultraに加え、その中間に位置する大画面モデルの「Galaxy S26+」も日本で販売する方針を打ち出している。

サムスン電子は「Galaxy S26」(右)に加え、従来日本に投入してこなかった大画面の「Galaxy S26+」(左)も国内初投入するという

これまでのGalaxy Sシリーズで、「+」が付く大画面モデルは国内向けの投入が見送られてきた。だがGalaxy S26シリーズではあえてGalaxy S26+を投入することで、大画面は欲しいが予算的に最上位モデルの購入は難しいという、従来の隙間となっていた人達も取り込み少しでも販売を増やそうとしていることが分かる。

また販路に関しても、従来Galaxy Sシリーズを販売してきたNTTドコモとKDDIに加え、2025年からサムスン電子製品の取り扱いを再開したソフトバンク、そして新たに楽天モバイルからも販売することを発表。あらゆる販路を活用して販売を広げることに注力している様子がうかがえるだろう。

Galaxy S26シリーズは携帯大手3社に加え、新たに楽天モバイルからも販売されることが発表。販売拡大のため販路を大きく広げようとしていることが分かる

そうしたサムスン電子の拡大戦略に対し、Xiaomiは逆に販路もモデル数も絞り、ファンを狙い撃ちする戦略に出ているようだ。そのことを示しているのが、Xiaomi 17 Ultraと同時にグローバルでの展開が発表された、Xiaomi 17シリーズのスタンダードモデル「Xiaomi 17」の国内投入を見送ったことだ。

2025年に発売された「Xiaomi 15」シリーズにおいては、最上位のXiaomi 15 Ultraに加え、スタンダードモデルの「Xiaomi 15」も国内で販売されていた。だがXiaomiは今回、スタンダードモデルの国内投入をあえて見送っており、こうした点からもXiaomi 17 UltraとLeica Leitzphone powered by Xiaomiという、高額な最上位モデルの販売に徹したい様子を見て取ることができよう。

「Xiaomi 15」シリーズでは「Xiaomi 15 Ultra」だけでなく、スタンダードモデルの「Xiaomi 15」も国内投入していたが、Xiaomi 17シリーズではXiaomi 17の国内投入が見送られている

また、Xiaomi 17 UltraとLeica Leitzphone powered by Xiaomiは、いずれもFeliCaに対応する国内向けのカスタマイズをしておらず、携帯大手からの正式な販売もなくSIMフリーモデルのみの展開となる。一方で、グローバル発表の2日後となる2026年3月2日に国内発売を発表、3月5日に発売を開始するとしている。新製品をできる限り早く国内投入することで、いち早く新機種を手にしたいファンへの訴求を強め、狭く深く売る戦略を取ろうとしていることが分かる。

Xiaomi 17 Ultraなどはいずれも2026年3月5日発売と、グローバル発表から間髪を置かずに国内でも発売されるようだ

このように、同じ最上位のフラグシップモデルを販売する上でも、2社の戦略にはかなり大きな違いが生じていることが分かるだろう。それは市場環境が非常に厳しいが故に、メーカー側の模索が続いていることの裏返しでもあるのだが、どちらの戦略がより市場に評価されて販売を伸ばすことができるのか、しばらくその推移を見守る必要があるだろう。

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