【連載】山本敦の発見!TECH最前線 第5回

完全自動運転車両から空飛ぶタクシーまで、Uberの「次世代モビリティサービス」を体験した

山本 敦

アラブ首長国連邦(UAE)は7つの首長国からなる連邦国家だ。その中でも、とりわけドバイとアブダビは先端テクノロジーの導入に積極的な地域として知られている。

米Uber Technologies(以下、Uber)は両首長国において、完全自動運転車両によるロボタクシー、さらにeVTOL(電動垂直離着陸機)を活用したエアタクシーなど、都市の交通インフラを支える次世代モビリティの実装を進めている。3月までにはドバイとアブダビの両都市で、Uberアプリからロボタクシーを配車できるサービスが本格的に始まる予定だ。

Uberは2月25日と26日の2日間、世界各国から60人以上の報道関係者をUAEに招き、「交通システムの未来(Future of Transportation)」をテーマにプレスツアーを開催した。筆者もその取材に参加した。

米Uber Technologiesが海外のパートナーと組んでアラブ首長国連邦(UAE)の都市に導入する、完全自動運転車両によるロボタクシーのサービスを体験した

世界各都市の交通インフラを支えるUberの配車サービス

筆者が参加したUberのプレスツアーは、同社が次世代モビリティのサービスを展開するドバイとアブダビの両都市近郊で開催された。基調講演が開催されるドバイのホテルに滞在したため、空路は東京からドバイのルートをエミレーツ航空の飛行機で移動した。往路は片道約11時間、復路は約9時間。

プレスツアーの開催日はいずれも快晴。日中の気温は30度近くまで上がり、陽射しも強いが、両日は湿度も低く過ごしやすかった。2月末は2026年のラマダン期間にあたる時期だったことから、ビジターとして訪れる我々も、日中屋外での飲食や服装に気を配るように注意を促された。筆者は夕方の日没後にドバイの観光名所、ブルジュ・ハリファのふもとにある「ドバイ・モール」でショッピングを楽しんだが、とても活況を呈していた。

Uberはモバイルアプリによる「配車サービス」を事業の大きな柱のひとつとしている企業だ。中東地域における配車サービスは2013年にドバイでテスト運用を開始し、現在はUAE内の複数の地域で、ライドシェアベースの商用サービスを提供している。

発展を続けるドバイ首長国。Uberによるライドシェアベースのアプリ配車サービスが既にこの都市にも実装されている

同社は中東地域にも確立した交通インフラ網の中に、自動運転車両によるサービスを追加・拡充する。皮切りとして、2025年11月には中国のWeRideとの提携により、アブダビの観光地区であるヤス・アイランドのエリアで完全自動運転(ドライバーレス)のロボタクシーによる配車サービスの商用運行がスタートした。

このヤス・アイランドには、F1アブダビGPの舞台として有名なレーシングサーキット「ヤス・マリーナ・サーキット」や、屋内型テーマパークの「ワーナーブラザースワールド・アブダビ」などのエンターテインメント施設が多数集まっている。いわば人気の観光・アトラクションスポットだ。

今年の3月以降には、Uberと中国のBaiduが提供する自動運転ロボタクシー「Apollo Go」のサービスと連携する形で、ドバイの一部地域でもドライバーレスの完全自動運転車両が走り始める。

中国の大手テック企業であるBaiduも、Uberとパートナーシップを組んでドバイの都市部で自動運転車両によるロボタクシーのサービスを始めようとしている。これまでにテスト走行が都市の各所で実施されてきた

UberのアプリからWeRideのロボタクシーが呼べる

今回筆者はアブダビで、WeRideとUberが提供する商用ロボタクシーのサービスに試乗した。

Uberアプリから配車をリクエストする際に、オプションとして表示される「Autonomous(自動運転)」が選べる。同じルートで利用価格を比較すると、最もスタンダードな「UberX」に対して「Autonomous」を選んだ場合でも、価格差は3〜5AED(UAEディルハム:1AEDは約42円)程度に収まる。

アプリから明示的にロボタクシーを選んで乗れるので、乗車中に人間によるドライバーとのコミュニケーションが不要になることを利点として捉えるならば、値頃感のある価格設定だと思う。

アブダビではUberアプリからロボタクシーを指定してリクエストできる。人間のドライバーによるUberXの料金と大きく変わらない

車種はWeRideが開発したワゴン型の「GXR」だ。ドライバー席を除く最大5つの座席にパッセンジャーが乗車できる。

配車のリクエストや、ドアの解錠はUberアプリから行える。車体には自動運転走行のために必要なソリッドステート式のコンパクトなLiDARセンサーやイメージセンサーを複数搭載する。車体の色はブラック。

WeRideが開発したワゴン型の自動運転車両「GXR」。5人のパッセンジャーが乗車できる

アメリカで提供するWaymoのロボタクシー、ジャガー「I-PACE」はルーフトップの液晶ディスプレイにユーザーのイニシャルを表示して、リクエストした車両であることを知らせる仕組みも設けているが、GXRにはこれがない。ナンバープレートを確認し、アプリ画面に表示されたリクエスト車両の番号と照らし合わせる。

試乗体験は期待していた以上に快適だった。GXRは座席の足もとスペースが広いので、脚を伸ばしたり、荷物もゆったりと置ける。体験当日はヤス・アイランド地域で大きな催しがなく、交通量が少なかった。そのため約10分間のドライブを経て、目的地までとてもスムーズに到達した。同じコースをもう1・2周したくなるほど、心地よく楽しいドライブだった。

ルーフトップのLiDARセンサーはサイズもコンパクト。車の外観はひと目ではロボタクシーであることがわからないほど、良い意味で普通だ
車内のスペースもゆったりとしている。特にドア付近の乗客は脚を思い切り伸ばしながら乗車できた

ロボタクシー企業がUberとのパートナーシップを推進する理由

Uberは2026年2月現在、アメリカではフェニックスとアトランタ、オースティンではAlphabet傘下のWaymoと組み、ダラスではテキサス州のテック企業であるAvrideをパートナーに得て、ロボタクシーによる商用サービスを運行している。

プレスカンファレンスの壇上では、Uberの自律型モビリティ・デリバリー部門責任者であるサルフラズ・マレディア氏が「2026年末までに世界15都市への拡大を目指し、さらに2029年までには商用自動運転トリップの世界最大のファシリテーターとなる」ことを当面の目標に掲げた。

Uber Technologiesが持つ配車サービス、そしてAIに関連する様々な知見が次世代の交通システムの進化も加速させると語る、自律型モビリティ・デリバリー部門責任者のサルフラズ・マレディア氏

同時に、マレディア氏はUberの配車サービスは人間のドライバーとロボタクシーによる「ハイブリッド・マーケットプレイス」が確立されているからこそ、優位性が発揮できるのだと強調する。

2009年にアメリカで創業したUberは、2011年に本格的な配車サービスを起ち上げて、以降から現在まで70か国以上、15,000以上の都市に拡大してきた。同社が経験により培ってきたテクノロジーを活用すれば、AIによる機械学習のアルゴリズムを組み合わせて、需要と供給をリアルタイムに最適化しながら、自動運転車両と人間のドライバーによる車両の稼働率を最大化できる。

例えばロボタクシーでは対応が難しい高速道路、ピーク時の交通量が激しい大都市の中心部、空港などを人間のドライバーが補完する体制を整えている。

加えて、同社にとってはビジネスパートナーである人間のドライバーの雇用を支え、経済活動を循環させる大事な役割も担っている。

Waymo、Avride、WeRideのように、単独でも限られた台数の自動運転車両によるロボタクシーサービスを展開できる企業は少なくない。実際に、特定エリアにおいて自社技術と運行体制を整え、小規模ながら商用サービスを開始している例もある。

一方でUberと提携することで、既存の配車ネットワークや人間ドライバーを含む「ハイブリッド・マーケットプレイス」を活用できる点は大きな強みとなる。需要の創出やユーザー基盤への迅速なアクセス、供給の柔軟な補完といった面で立ち上げ期のオペレーションを効率化し、事業拡大を加速できる可能性がある。

Uberが長年に渡る配車サービスの実績から獲得したデータと経験が、次世代のロボタクシーを組み込んだ「ハイブリッド・マーケットプレイス」の確立に役立つと語るマレディア氏

もっとも、車両の調達や規制対応といった供給側の制約も依然として存在するため、スケールの速度は各社の戦略や市場環境に左右される。それでもUberにような広い顧客接点を既に持つプラットフォームとの連携は、事業展開の選択肢のひとつとして今後さらに注目を集めるだろう。

Jobyが開発したUberの “空飛ぶタクシー” も商用サービス化へ

今回のプレスツアーで、Joby Aviation(ジョビー・アビエーション)が開発するeVTOL(電動垂直離着陸機)「Joby S1」の飛行デモンストレーションを見ることもできた。同社はUberと組んで、2026年内にドバイで商用サービス「Uber Air powered by Joby」の開始を目指す。

Joby S1は、6基の可動式チルトプロペラを備えた5人乗り(パイロット1名と乗客4名)の電動エアタクシーだ。最高速度は時速320km、1回の充電での航続距離は約160kmに達する。

Joby Aviationが開発を進めるeVTOL(電動垂直離着陸機)「Joby S1」が、ドバイの郊外で飛行デモンストレーションを行った

特筆すべきはJoby S1の静音性能だ。飛行時の騒音は従来のヘリコプターの約100分の1に抑制されている。機体の開発・製造には筆頭株主であるトヨタ自動車が戦略的パートナーとして参画しており、自動車産業の量産ノウハウを導入することで、高度な安全性と生産能力の両立を図った。

商用サービスの開始後はドバイの都市部で、一般の乗客が既存のUberアプリからこのエアタクシーを予約できる見込みだ。

利用の流れは、まず出発地から最寄りのバーティポート(専用発着拠点)までUberの自動車で移動し、そこからエアタクシーに搭乗する。空中移動後の目的地までの移動もUberの配車サービスが担い、アプリ内で一連の旅程が完結するシームレスな体験が提供される。

バーティポートまでは自動車で移動した後に、各バーティポートの間をエアタクシーに乗りながら「渋滞の上を飛ぶ」ことができる

運用開始当初はドバイ・マリーナ、パーム・ジュメイラ、ダウンタウン、ドバイ国際空港(DXB)の4カ所にバーティポートが設置される予定だ。例えば、地上交通だけでは渋滞により1時間以上を要することもあるドバイ・マリーナから空港までの移動が、空路であればわずか11分に短縮されるという。

料金体系の詳細は後日発表されるが、プレミアム配車サービスである「Uber Black」に近い価格帯での利用が想定されている。

この取り組みは、都市の交通渋滞を回避する垂直方向の新たなインフラとして機能する。ドバイでのローンチを皮切りに、今後は米国のニューヨークとロサンゼルスにも商用サービスを拡大する計画がある。今回のプレスツアーでは空を飛ぶJoby S1に試乗することはできなかった。いつかまた、このエアタクシーでドバイの空を飛べる日が来ることを楽しみにしたい。

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