小型の通信衛星でも燃え尽きない可能性もある

Starlinkなどの“衛星コンステレーション”が落下して「人に当たる確率は40%」との分析

Munenori Taniguchi

Image:Starlink

大量の小型通信衛星を軌道上に打ち上げ、協調動作させることで特定のサービスを構築するのが衛星コンステレーションと呼ばれる。Starlinkがその代表だが、OneWebやジェフ・ベゾス氏のAmazon Leoなど、同種のサービスは他にもたくさんある。GPSなども、衛星コンステレーションサービスに含まれる。

だが、衛星コンステレーションが普及すればするほど、軌道上には人工衛星があふれかえることになる。そして新たな研究によると、現在稼働している11種類のメガ衛星コンステレーションが、その衛星の寿命を迎えて地球の大気圏に突入するようになるとどんなことが起きるかを調査した結果、再突入で燃え尽きなかった衛星の残骸によって死傷者が出る可能性が全体で40%にも上るという、衝撃的な数字が導き出されたという。

カナダ・ブリティッシュコロンビア大学の研究チームは、衛星コンステレーションに供している全7万3369基の人工衛星群について調査し、それらが地上に落下することをモデル化して集団的な死傷リスクを計算した。

あらかじめ前置きしておくと、研究者らはまだこれらの衛星の落下の際に何が起きるかの「科学的理解」は完全ではないとしている。だが「衛星が完全に大気圏で燃え尽きない可能性」はあるとし、落下する衛星の、たとえ「小さなかけら」でも焼失せずに残った場合、上記数万の衛星のどれかが落下してくる際に、運悪くだれかにそれが衝突してしまう可能性が「かなり」高くなる可能性があると研究結果は述べている。

チームは最初、「各衛星からの最小致死量のデブリが燃え尽きずに無傷で地面に到達した場合、何が起こるのか?」との疑問を考えた。そして、衛星の材料として使われるアルミニウムなどの融点の低い材料は、完全に燃え尽きる可能性が高いが、燃料タンクやリアクションホイールなどの材料になるステンレススチール、ベリリウム、チタン、タングステン、炭化ケイ素といった素材は、燃え残ってしまう可能性が高いという。

人工衛星は、大気圏に再突入すると、空気力学的な力が加わることで破砕される。そしてこのとき発生する高熱により、衛星を構成する材料は微粒子レベルにまで分解されるとのことだ。だがチームは「多くの衛星・特に大型の衛星は完全には燃え尽きない」と述べ、「宇宙物体が制御不能状態で再突入する危険な状況は、常態化させず例外的なケースに留め置くべきだ」と述べている。

もちろん、衛星を設計する人々は、再突入時にそれが完全に焼失することを考えてはいるかもしれないが、研究チームによれば、衛星が完全に燃え尽きるまでにはかなりの不確実性がある。

チームの研究者の一人、ユアン・ライト氏は「既存の多くの基準やガイドラインは、個々の衛星のみを考慮したもの」であるため、大量の衛星を一度に打ち上げ、それらが寿命を迎えて大量に再突入することによる「累積的な影響」は想定されていないと主張した。

そして、衛星コンステレーション事業者が、もし衛星が燃え残っても安全な場所に落ちるよう「制御された再突入」を行わない限り、制御不能状態で落下してくる衛星の燃え残りは、予測不能な時間に予測不能な場所へと落ちてくることになるとした。

それは地上にいる人たちばかりでなく、たまたま居合わせた航空機の乗客を危険に晒す可能性もある。もし落下地点がどこかの国の軍事施設や原子力発電所だったりすればさらに大事になるかもしれない。

Image:Sebastian_Photography/Shutterstock.com

そして、ライト氏らは衛星コンステレーションについて「本当にそんなに多くの衛星が必要か」との疑問を投げかけ、もっと大容量で高出力かつ高品質な、長寿命の衛星を使えば、もっと少ない数で同様の仕組みを構築できるはずだとし、それにより地上への累積的リスクを軽減できるとした。

衛星コンステレーションの多くは、小型の通信衛星を大量生産することでコストを下げ、大量に打ち上げることで、冗長性を確保しているため、単純により高性能な衛星に置き換えるだけで同じことが出来るわけではないはずだ。とはいえ、たしかに無制御状態で人工物が落下する機会が増えれば、やはり航空機などにとってリスクは大きい。

研究チームは、「国や州などの規制当局は、衛星の完全な『破壊性』の主張について独立した検証を義務付けるべき」であり、今回の研究結果によるリスクを評価し「公正、公平、かつ世界的に適用可能な、管理された再突入の枠組みの構築と円滑な移行」をすべきだと提案している。

衛星コンステレーションには、大量の衛星が上空を通過することにより、天文学者らの学術的観測に「光害」をもたらすという問題も指摘されている。たとえば上記のAmazon Leoは、まだ打ち上げた衛星の数こそ少ないが、同サービスの衛星がStarlinkのそれに比べ高高度にあるせいで夕暮れから夜間にかけて太陽の光を地上に反射しやすい。

Amazon Leoは今後数年間で約3200基の衛星を展開する計画であり、その規模は観測の状況を今より劇的に悪化させる可能性が懸念されている。もちろん、最新のAmazon Leo衛星は天文学界からの苦情により、2023年に打ち上げられたバージョンに比べ、いまではかなり光の反射は弱められているという。

Starlinkも同様に衛星からの反射を抑える改善を続けている。だが、現在構築が進められている中国の衛星コンステレーションは、国際天文学連合(IAU)が推奨する輝度制限も遵守していない模様だ。

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