モダンでありつつレトロな雰囲気も

ジョナサン・アイブがデザインしたフェラーリ初の完全電気自動車「ルーチェ」のコクピットが公開

Munenori Taniguchi

Image:Ferrari

フェラーリは「Elettrica」という開発名称で知られていた新型電気自動車「Luce(ルーチェ)」のステアリングホイールやメーターパネル、インフォテインメントディスプレイといった、コクピットまわりのインテリアを公開した。このインテリアを担当したのは、かつてアップルでデザインチーフを務めたジョナサン・アイブ氏のLoveFromだ。

フェラーリは2013年にLaFerrari(ラ・フェラーリ)でハイブリッドカーに参入して以来、常に何らかの電動車を販売してきた。しかし、今回のルーチェは、フェラーリの紋章であるカヴァリーノ・ランパンテを纏った初めてのBEV(完全電気自動車)であるという点で、フェラーリの歴史上特別なマシンになる。

アイブ氏が手がけたインテリアは、ブラックとアルミ(アルマイト加工)を基調としており、ミニマリズムを追求していたアップル時代の面影も感じられる。一方で、一見無機的に見えて、物理スイッチ類を備えるなど、利便性、実用性を考慮したものになっているようにみえる。

また、メーターパネルやインフォテインメントディスプレイには円形や四角形のモチーフで構成され、どことなくレトロモダンな雰囲気も感じられる。なお、アルミ材の部分はグレー、ダークグレー、ローズゴールドの3色から選択可能だ。

センターコンソールには左右対称のデザインが採用され、キーフォブをマグネット式のソケットに置くと、E Inkディスプレイにフェラーリのエンブレムが表示され、ゴリラガラス製のシフトレバーに光が灯るという、洒落たギミックも備えている。なお、iPhoneのディスプレイで有名なゴリラガラスは、メーターパネルのレンズをはじめ随所に使用されている。

Image:Ferrari

ステアリングホイールは下部分がショートカットされたD型を採用、パドルシフトや、ボタンではなくダイヤルノブを使った機能スイッチ類に、フェラーリのDNAであるモータースポーツの流儀を取り入れている。

Image:Ferrari

ステアリングの向こうに見える3連メーターパネルは「ビナクル」と呼ばれ、デジタルとアナログメーターを巧みに組み合わせた表示方式を採用。走行モードによって表示デザインが変わる。

ルーチェはエンジンを搭載しないため、モーターのトルクレベルを切り替えることで、擬似的にシフトチェンジするような走行フィールをドライバーに提供する。3連メーターのうちセンターは速度とバッテリー残量を表示する。

左側のトルクメーターは、いわばエンジン車のタコメーターのような役割を担っている。そして、右側のメーターはマルチファンクションとなっており、ドライバーにかかる慣性力(いわゆる”G”)の強さや、車体各部のステータス、バッテリー状態(温度など)、走行距離、各種電子制御、タイヤの空気圧を切り替えて表示可能だ。

Image:Ferrari

ダッシュボードセンターにある「コントロール・パネル」と名付けられた10.12インチのディスプレイは、空調、車両セッティング、そしてCarPlayなどのメディア表示を司る。

画面上部には走行モードや出力強度など、右上部に時計(時刻やストップウォッチ、またコンパスとしても機能)を表示する。また下部には6つのトグルスイッチと、ダイヤルノブが装備され、エアコンなどの操作が行える。このセンターディスプレイは、下部にあるハンドルを持って左右に旋回でき、ドライバーの好みの角度に調整できる。

このコクピットのデザインに5年もの歳月をかけたというアイブ氏は、この初公開の場で「非常に興奮」すると同時に「完全に恐怖している」と述べた。

だが、アイブ氏は現代の車には「昔のフェラーリで愛されていたものがいくつか欠けている」とし、「インターフェースに直感的かつ物理的につながる方法をできるだけ多く見つける必要があることは、われわれにとって非常に明確なことだった」と語った。トグルスイッチや、ステアリングのダイヤルノブなどが特にその命題に対する回答だったということだろう。

なお、アイブ氏は自動車という規制の厳しい業界でデザインの仕事を受け持ったことが最大の課題だったかもしれないと述べ、デザインや形状、機能も重要だが、それより何より安全性が最も重要で「とても大変」なことだったと感想を述べた。それでも、LoveFromチームはフェラーリとの仕事を心から楽しんでいると語り「本当に素晴らしい経験だった」とフェラーリのCEOベネデット・ヴィーニャ氏に感謝と称賛の言葉を述べた。

なお、ルーチェのエクステリアデザインは、フェラーリが正式発表を予定している5月まではわからない。インテリアデザインとエクステリアデザインがいかに調和し、かつ機能的、そして安全であるかは、それが走行する様子を見なければわからない。一方で、ルーチェの価格帯は、われわれ庶民の手が届くものではないことはほぼ間違いない。

ちなみに、日本人の大人にとって「ルーチェ」という名称は、ロータリーエンジンを搭載したこともあったマツダの高級車を思い出すものだろう。だが、マツダ・ルーチェの海外バージョンは「Mazda 929」、そしてロータリーエンジン搭載車には「RX-4」「RX-9」という名が付けられていた。そのため、フェラーリがルーチェという名称を用いたとしても、日本人以外は特に気にはならないだろう。

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