【連載】佐野正弘のITインサイト 第195回

「FOMA」終了まで残り2か月、NTTドコモは“有終の美”を飾れるか

佐野正弘

2月に入った2026年だが、実は携帯電話の歴史を語る上で大きな節目となる年でもある。なぜなら2026年3月31日をもって、NTTドコモが「3G」による通信サービス「FOMA」等を終了させる予定だからだ。

3Gは、現在主流となってきている「5G」の2つ前の世代となるモバイル通信方式。3Gに関しては既にKDDIが2022年3月、ソフトバンクが2024年7月をもってサービス終了している。

楽天モバイルはそもそも3Gのサービスを提供していないことから、今年NTTドコモがサービス終了することで、国内ではすべての事業者が3Gサービスを終了することとなる。

国内で3Gによるサービス「FOMA」を最後まで提供してきたNTTドコモだが、2026年3月末をもって終了することとなる。写真はFOMAに対応した最後の携帯電話「P-01H」

技術的にも古い通信方式を終了させ、より性能の高い新しい通信方式に移行することは、これまでも定期的に実施されている。ただ3Gは、NTTドコモの「iモード」の普及や米アップルの「iPhone」などの登場によって、携帯電話を音声通話からインターネットを利用するものへと変える転機をもたらした存在だけに、その終了を惜しむ声もあるのは確かだ。

とはいえ古い3Gを終了させることは、使われなくなったリソースを5G、そして現在も多く使われている1つ前の通信方式「4G」に用いることで、多くの人のモバイル通信環境を改善することにもつながるってくる。その代表例の1つが電波である。

NTTドコモは現在、3G向けとして800MHz帯と2GHz帯を、ダウンロードとアップロードを合わせて5MHz×2幅ずつ、合計20MHz幅を使用している。

3Gの終了でそれらの周波数帯を他の用途に変えることが可能になり、例えばプラチナバンドの800MHz帯を4Gに転用した場合、現在10MHz×2幅だった4Gの800MHz帯を、15MHz×2幅に広げられる。つまり、広いエリアで通信品質の改善が図られる可能性がある。

3Gの終了に伴い、NTTドコモが3Gで使用していた800MHz帯や2GHz帯の一部は、今後4Gや5Gなど他の通信方式に用いられることとなる(Image:NTTドコモ)

もっとも現時点で、同社が3Gで使っていた周波数帯をどう活用するかは決まっていないとのこと。とりわけ2GHz帯に関しては、KDDIが衛星とスマートフォンとの直接通信によるサービス「au Starlink Direct」に活用しており、NTTドコモも2026年に同種のサービスを提供予定である。そちらでの活用が注目されるが、やはり現時点では検討中との回答にとどまっている。

もう1つ活用が期待されるのが、3Gの基地局があった場所だ。古い技術を用いた3Gの基地局は、4Gや5Gの基地局と比べサイズや重量が大きい。使わなくなった3Gの基地局を撤去することで、例えば大容量通信に強い「Massive MIMO」に対応した基地局などを設置しやすくなり、ユーザーの通信品質向上につながることが期待される。

3Gの基地局は4G・5Gより大型のものが多い。それだけに、サービス終了で3Gの基地局を撤去し、空いたスペースに「Massive MIMO」など新技術に対応した基地局を設置することで、通信品質改善が進むことも期待される

この点についてNTTドコモ側は、3Gと4Gとで共有している基地局は撤去ができないほか、同じ棚に4Gと3Gの基地局を一緒に収納している場合、撤去をしても場所が空くわけではないと答えている。ただ多くの場所で3Gの基地局を撤去してスペースが空くことは確かなようで、NTTドコモとしても、そちらを4Gや5Gの増強に活用していく方針であるようだ。

3Gの終了にはこうしたメリットがある一方で、これまで3Gを利用していた人達にさまざまなデメリットが生じてくることも、また確かである。その1つは、一部の機種で音声通話が使えなくなることだ。

実は4Gで音声通話に対応するには「VoLTE」という技術を導入する必要があるのだが、4Gが始まった当初はVoLTEへの対応が進んでおらず、データ通信は4Gだが音声通話は3Gでこなす機種がいくつか存在した。そうした端末を使っている人は、3Gが終了した時点で音声通話ができなくなってしまう。

また、VoLTEに対応した端末であっても、VoLTEでの通話がオフになっており、3Gで通話している人もいるとのこと。加えて、大規模災害時などで音声通話が規制されている場合、110番などの緊急通報にVoLTEで接続できない制限のある機種も存在する。これらのことから、NTTドコモでは利用者に対してWebやダイレクトメールなどで確認を呼びかけているという。

3Gの終了に伴い、4Gで音声通話をする「VoLTE」に対応していない端末では音声通話ができなくなるなど、さまざまな影響が出る可能性があることから古いスマートフォンを使っている人も要注意だ(Image:NTTドコモ)

だが、より大きな影響を受けるのは、3Gにのみ対応した端末とサービスを使っている人で、3Gが終了すると通話も通信もできなくなってしまう。それだけに、NTTドコモも3Gサービス終了を打ち出して以降、ダイレクトメールの送付や電話による移行の勧奨、4G・5G対応端末の割引など、さまざまな手段で3Gユーザーに移行してもらう手続きを進めてきた。

しかしながら3Gサービスを利用し続けている人の多くはシニアであり、使い慣れた環境を変えることに懸念を示す人も多い。

そこでNTTドコモでは、そうした人たちがどのような懸念を抱いているかをアンケートで調査。その課題を解決しながら移行の案内を進めるとともに、家族による “一押し” が必要なことも多いことから、3Gのユーザーが移行するとその家族にdポイントを進呈する「ファミリー紹介特典」なども提供してきたという。

その結果、3Gから4G・5Gへ移行したユーザーは6か月毎に1.6倍のペースで増えているとのこと。現在も3Gを利用する個人ユーザーは、個人契約者数のうち1%を切るまでに減少したそうだ。

現在も3Gのサービスと端末を使い続けているNTTドコモ契約者に対しては、ダイレクトメールや販売員による訪問、さらには家族の協力を得るなどあらゆる手段を用いて移行を進めており、6か月毎に1.6倍のペースで移行者は増えているという(Image:NTTドコモ)

ただ3Gへの移行を進める上で、より大きな障壁となるのが、1つにIoT、要は自動販売機などの機械で通信するために導入している、3G対応の通信モジュールを使用している企業の移行である。実は企業向けも含めると、3Gに残っている契約回線数は350万と、まだかなりの数に上っている。

それだけにNTTドコモも、3Gのサービスを契約している全ての企業と交渉しており、4G・5G対応のモジュールに切り替える、あるいは3Gの終了とともにその企業のサービスも終了するといった対応を進めているという。

もう1つはMVNOである。MVNOの中にもNTTドコモの3G回線を借りてサービスを提供してきた事業者があり、3Gが終了するとなれば当然その契約者にも影響が出てしまう。だが、MVNOの契約者はMVNOが管理しているため、NTTドコモが直接関与することはできない。

とりわけNTTドコモの回線は多くのMVNOに用いられていることから、同社としてもMVNOと協力し、MVNO各社からWebやダイレクトメールなどさまざまな手段で、移行に向けた取り組みを進めてもらっているとのことだ。

ただ非常に厄介なのが、その両者が組み合わさった場合である。具体的にはMVNOが提供する3G対応回線と、3Gの端末やモジュールを使ってビジネスをしている企業を、どう移行させるかだ。NTTドコモもMVNOで契約しているユーザーの端末までは把握できないだけに、MVNO経由で3Gを利用している企業の移行は、最後まで困難を極めることになりそうだ。

また、MVNOに与える影響として、「IIJmio」を展開するMVNO大手のインターネットイニシアティブが2026年1月20日、IIJmioの一部サービスで「iPhone 16e」「iPhone Air」など特定の端末を利用していると、3Gサービスの終了前後に4Gでの通信ができなくなったり、時間がかかったりすることを確認したと発表している。

NTTドコモでは、まだ原因の特定に至っていないという。だが、こちらは既存ユーザーにも影響を与えるものだけに、その原因究明と対応が急がれるところだ。

IIJは2026年1月26日、NTTドコモの3Gサービス前後に、「IIJmio」の特定プランと特定のiPhoneを利用していると、4Gでの通信ができなくなったり、接続に時間がかかったりする事象が生じることを明らかにしている(Image:IIJ)

これまでもそうであったように、特定の通信サービスを終了させることは避けられない一方、多くの人が利用してきたサービスだけに、終了には難しさを伴うのもまた確かである。

NTTドコモの3Gサービス終了まで2か月を切っている。大きなトラブルを生じさせることなく3Gの “有終の美” を実現できるかどうか、しっかり見守っておく必要があるだろう。

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