人工筋肉は動きがしなやか
3Dプリントで作った人工筋肉。自重の1,000倍を持ち上げられる
テスラは最近、人型ロボット「Tesla Bot」の開発のために、モーターやアクチュエーターを設計開発するエンジニアの採用を進めている。これはTesla Botが、その手足の関節を電気モーターで動かすからであるが、ロボットを動かすための技術としては、ゴムなど弾性を持つ素材を、あたかも人間などの筋肉のように伸縮させて動作させる「人工筋肉」を使う方法も研究されている。
最近Science Roboticsに掲載された研究では、その人工筋肉を3Dプリンターで作ることを可能としている。イタリア技術研究所(IIT)とサンターナ大学院大学(SSSA)の研究者らが開発した、GRACE(GeometRy-based Actuators able to Contract and Elongate)と称するこの空気圧駆動システムなら、一般的なホビーユーザーでも、手軽に人工筋肉を使ったロボットを作ることが可能になるかもしれない。
発表された人工筋肉は、膨張したもみじ饅頭のような形をしたプラスチックの容器だ。この容器に空気を注入すると、横方向には膨張し、縦方向には縮むように変形する。また内部の空気を抜いていくと、今度は胴まわりが細まり、縦方向に伸長する。
そしてこれをロボットの指に組み込めば、空気圧で動作するアクチュエーターが作れる。この人工筋肉は3Dプリンターで作れるため、用途に応じてどんな大きさや形状のアクチュエーターでも作れる。また、プラスチックの材質や厚みなどにもバリエーションを持たせることで、アクチュエーターの伸縮量や伸縮方向、動作させるのに必要な空気圧などのパラメーターも調節できる。
研究チームは、このGRACEアクチュエーターを18ヶ所に組み込んだ、人の手のような5本指が実際に動作するロボットハンドを製作した。説明によれば、このロボットハンドはアクチュエーター内の空気圧をコンマ数%変化させるだけで、指の曲げ伸ばしや、握る、開く動作、手首を動かすことも可能だという。しかも、約8gしかないアクチュエーターひとつあたり、約8kgもの重量を支持できるとのこと。
人工筋肉による動きは、サーボモーターなどを使用した方式とは異なりかっちりした動作は難しいかもしれないが、より生身の身体に近い動作方式と言える。研究者は、今回のロボットハンドには柔らかい樹脂素材を用いたことで、硬い樹脂よりも広い可動域が得られたと説明しており、この将来の改良で「優れた引張特性を備えた新しい樹脂が開発されれば、それらを使用した3Dプリントデバイスの活用範囲が広がるだろう」と述べている。