ダイヤモンドと同等の熱伝導率?!
熱伝導率が「銅の3倍高い」金属発見。幅広い電子機器の冷却用に期待

カリフォルニア大学ロサンゼルス校(UCLA)の研究者らは熱伝導率が銅のおよそ3倍もある新素材を発見したとScience誌に発表した。これはすべての金属中、最も高い熱伝導率だという。
熱伝導率とは、材料が熱をどれだけ効率的に伝えることができるかを示す数値のこと。金属材料としては銀(420W/m・K)が最も高く、それに続くのが銅(398W/m・K)、そして金(320W/m・K)の順になっている。
電子・半導体デバイスは温度が高くなると性能/信頼性/エネルギー効率が低下する。これらを放熱・冷却させるヒートシンクには、熱伝導率の高い材料が必要不可欠だ。銅は現在、世界の市販熱管理材料の約30%を占めている。
金属材料では、熱は自由移動する電子と原子振動(フォノン)によって運ばれる。電子とフォノン間には強い相互作用があり、さらにフォノンとフォノンの間でも発生する相互作用もあって、金属内における熱伝導率は制限されている。
UCLAが主導する研究チームは、タンタル原子が窒素原子と六角形のパターンで交互に配列する特異な原子構造を持つΘ相窒化タンタル(Θ-TaN)の理論モデルが、異常に効率的な熱輸送を示す可能性を示唆しているのを発見した(窒化タンタルにはε相、Θ相、δ相が存在し、ε相は化学安定性や生体適合性に、Θ相は電子デバイスの拡散バリア層としての特性に、δ相は超電導性に優れるとされる)。
そして、シンクロトロンX線散乱法や超高速分光法など、複数の手法を用いてこの材料の性能を確認した結果、電子-フォノン相互作用が極めて弱く、熱伝導率約1100 W/m Kという、従来の金属に比べはるかに効率的な熱伝導が明らかになった。これは熱伝導率が非常に高いダイヤモンド(1000〜2000W/m・K)に匹敵する値だ。
研究者らはこの超高熱伝導率材料が、AI機材を含むマイクロエレクトロニクス分野、データセンター、航空宇宙システム、量子プラットフォームといった、熱の発生による制約が厳しい分野に大きな影響を与える可能性があると述べている。
「AI技術の急速な進展により、現在、放熱に対する要求は銅などの従来の金属の性能限界に達しつつある。チップやAIアクセラレータにおける銅への世界的な依存度の高さが重大な懸念事項となりつつある」と、研究を主導したUCLA Samueliの工学部教授Yongjie Hu氏は説明している。
ちなみにHu氏は、2018年にも自らの研究グループとともに、高い熱伝導性を持つ半導体材料であるヒ化ホウ素を実験によって発見。その後、ヒ化ホウ素を冷却に用いた高性能熱インターフェースと窒化ガリウムデバイスを実証して、ヒ化ホウ素が将来の半導体技術において有望な材料になる可能性を示した。
今回発見されたΘ相窒化タンタルも、AIデータセンターを始めとする、高い熱交換効率が求められる現場において、非常に有望な材料になるかもしれない。なお、タンタルは高性能コンデンサーの材料としても使われているが、レアメタルの一種であり、ヒートシンクのような使い方をするには、コスト面がネックになる可能性はありそうだ。
- Source: Science UCLA Samueli
- via: The Engineer
