あらかじめ決められた動作を好むとのこと

アップル、AIキーマンのフェデリギ氏は「AI懐疑派」との報道

多根清史

Image:Apple/YouTube

アップルのソフトウェア責任者クレイグ・フェデリギ氏が統括するAI部門について、ニュースメディアThe Informationが詳細な内部情報を報じている。焦点となっているのは、同氏が長らく抱いてきたAI懐疑論と、それがアップルのAI組織に与えてきた影響だ。

報告によると、フェデリギ氏は「給与を厳しく管理し、成果が明確でないリスクの高いプロジェクトへの投資をためらう倹約家」だという。この姿勢が、同氏が2022年までAIブームに距離を置いてきた理由の一つであり、現在も「フェデリギ氏をAI部門トップに据えることの潜在的リスク」として指摘されている。

具体例として、「チームの支出を細部まで精査し、オフィスのバナナやスナック類の予算にまで目を光らせている」との証言が紹介されている。また、AIエンジニアや研究者を採用するには、アップルの経営陣より高い報酬が必要になる可能性があるとして、フェデリギ氏が難色を示してきたとも伝えられている。

アップルのAIグループ内部では、フェデリギ氏が出張を抑制し、業界カンファレンスへの参加機会が減るのではないか、という懸念も出ているという。

こうした状況の中で、フェデリギ氏の側近たちは「何年にもわたり」、同氏をAIに前向きにさせようと働きかけてきたとされる。

その一例が、iPhoneのホーム画面をAIによって「動的に」変化させる機能の提案だ。エンジニア側は新たな体験を狙ったが、フェデリギ氏は「アプリの配置を把握しているユーザーを混乱させる」として否定的だったという。

現在アップルが提供している「Siriの提案」ウィジェットは、AIが利用頻度の高いアプリを先回りして表示するものだが、あくまでウィジェット内の表示が変わるにとどまり、ホーム画面全体のレイアウトは固定されたままだ。フェデリギ氏が拒否したのは、ホーム画面そのものをAIが書き換える仕組みだった。

フェデリギ氏がAIに慎重だった理由の一つは、その予測不能性である。ソフトウェア機能を検討するデザインレビュー会議では、機能がどのように振る舞うのかを明確に説明することをチームに求めていたという。動的に挙動が変わるアルゴリズムよりも、あらかじめ決められた動作をするソフトウェアを好んでいたと、同氏と働いた経験のある関係者は語っている。

転機となったのは2022年後半だ。フェデリギ氏はChatGPTを実際に試したことでAIに対する見方を改め、「この種のAI技術の価値を理解した」と同僚に語り、アップル製品に組み込む方法を検討するようチームに指示したとされる。

現在、フェデリギ氏はアップルのAIグループ全体を統括している。Siriを担当するマイク・ロックウェル氏は、フェデリギ氏に報告する立場にあり、過去には「フェデリギ氏のソフトウェア開発姿勢は保守的すぎる」「アップルはもっと大きな発想をすべきだ」と語っていたとも報じられている。

もっとも、アップルの内部AIモデルでは力不足だと判断し、GoogleのGeminiモデル採用を推進したのもフェデリギ氏だという。

フェデリギ氏は昨年6月のインタビューで、「チャットボット構築を目的とせず、OSに統合されたAIに注力する」と明言していた。しかしBloombergは、今後のiOS 27で刷新版Siriがチャットボット化すると報じている。

さらにBloombergは、アップルがチャットボットをGoogleのサーバー上で直接ホストする案を協議しているとも伝えている。これは、Apple Intelligenceを自社のプライベートクラウドで補完し、「ユーザーデータを社外サーバーに出さない」としてきた従来の姿勢から、大きな転換となる。

フェデリギ氏のAIに対する基本姿勢は依然として保守的だが、一度方針転換を決めた後は、現実的な妥協も辞さないタイプなのかもしれない。

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