SNSはデマの温床か
2026年8月12日に地球重力が7秒間消失、4000万人が落下死? トンデモ説が拡散も「NASA全否定」

最近の数週間、SNS上で「2026年8月12日に地球が約7秒間重力を失う」「その7秒のあいだに空中に浮かび上がってしまった人のうち4000万人〜6000万人が落下により死亡する」という荒唐無稽なうわさが拡散した。
さらにこのうわさは、2024年11月に「Project Anchor」という名前のNASA機密文書が流出し、宇宙機関がこの謎現象を認知し特別な準備を整えていたが、一般にはこれを隠していたと主張するものだった。
2025年12月31日、Instagramユーザーの@mr_danya_ofは、車内に座る無言の男性を撮影した短い動画を共有した。この動画のテロップには「2026年8月12日、世界は7秒間重力を失う。NASAは知っている。彼らは準備を進めているが、その理由を教えてくれない」と記していた。
@mr_danya_ofの投稿には、さらにこの謎現象について詳述したテキストが添付されていたが、このアカウントは1月6日前後に非表示化されている。
一方、Blueskyユーザーの@deardean22.bsky.socialは、「2024年11月に『Project Anchor』と題されたNASA の秘密文書がオンラインに流出した」と主張、890億ドルの予算が付与されたこのプロジェクトが目標とするのは、「2026年8月12日14:33UTCに予想される7秒間の重力異常を乗り切ることだ」とし、さらに「落下による死者4000万人」「インフラ破壊」「10年以上続く経済崩壊」「大規模なパニック」が発生するとの予測が綴られていた。
同様の主張はX、Facebook、Instagram、Threads、TikTok、Reddit、4chanと、主要なSNSや掲示板サイトのほぼすべてで確認されている。

状況を俯瞰してみれば、これは明らかにデマだとわかるはずだ。しかし、SNSという視野の狭くなりがちなサービスの一部界隈の一部のユーザーたちは、NASAが2019年に94.7%の確率で予測した、ブラックホールからの2つの重力波の交点で謎の重力異常現象が引き起こされるという主張を鵜呑みにしてしまった。
さらに、NASAがこの事態の発生時に政府指導者、科学者、軍関係者、そして「遺伝的多様性を持つ選抜市民」を安全に避難させるために「地下シェルターを建設中」だが、一般市民には隠しているという、どこかで聞いたことがあるような話をついつい信じてしまったようだ。
米国のファクトチェックサイトSnopesは、このトンデモなうわさについて調査を実施。Google、Bing、DuckDuckGo、Yahooといった主要検索サービスで「2024年11月前後にProject Anchorと言う名の機密文書が流出した」という信頼できる情報がないことを確認した。
また、FacebookやXでは特に2024年と2025年を対象に同様の情報を検索して探したが、ユーザーが「Project Anchor」について議論した投稿はみつからなかった。ただ、2026年8月12日については、NASAのウェブサイトで皆既日食が発生するとの情報がみられた。
SnopesがNASAにこの「機密文書が流出した」という話について問い合わせたところ、NASAの広報担当者は次のように述べた。
「2026年8月12日に地球の重力が失われることはありません。地球の重力、すなわち総重力は、その質量によって決まります。地球が重力を失う唯一の方法は、地球システム(核、マントル、地殻、海洋、地表水、大気の総質量)が質量を失うことです。皆既日食は地球の重力に異常な影響を与えません。太陽と月が地球に及ぼす引力は、地球の総重力には影響しませんが、潮汐力には影響します。これはよく理解されており、数十年先まで予測可能です」
要するに、地球の重力をなくそうと思えば、地球そのものがなくなってしまう必要があるということだ。2026年8月12日に皆既日食が起こったところで地球の重力には影響しないし、遠いブラックホールからの2つの重力波が交差したとしても地球の重力には影響しない。そもそも、「この予測された」と主張される2つの重力波の交差現象そのものが完全にデマだった。
もしそれでも、2026年8月12日にSFやファンタジーでたまに見る、人々が浮き上がり空高く舞い上げられてしまう現象が発生すると固く信じる、または信じたい人は、いまのうちに硬い地盤に固定されたコンクリート柱かなにかに大きめのアイボルトを打ち込んでおき、当日はこれにフックを取り付けられる胴ベルト型安全帯を着用しておくのをおすすめする。
仮に重力が消失して体が宙に舞い上がっても、安全帯のロープの長さ(数十cm)までで保持されるので、7秒後に落下しても大したことにはならないはずだ。
