スペースシャトル退役後、軌道修正の手段なし
ハッブル宇宙望遠鏡、予想より早く大気圏再突入の可能性

1990年以来、約35年にわたって170万回以上の観測を実施し、人類が宇宙についての理解を深めるうえで極めて大きな役割を果たしてきたハッブル宇宙望遠鏡。最近のNASAの研究で、現在の予測よりも早期に、この宇宙望遠鏡が大気圏に再突入するかもしれないことが報告された。
ハッブル宇宙望遠鏡はもともと15年程度の運用期間を想定していた。そのため、運用期間中の補修作業や、徐々に低下する軌道の再配置、そして運用終了後の回収またはより高高度にある墓場軌道への移動処置は、スペースシャトルをドッキングして行う運用計画だった。
当初はハッブルのほうが先に退役する予定であったため、スペースシャトルの運用が終了してしまうことは想定されていなかった。なおシャトル退役後、一度もハッブルの補修や軌道押し上げ処置は実施されていない。

この宇宙望遠鏡は今後数年間でさらに高度が低下し、いずれは大気圏に制御不能状態で再突入する見込みだ。ここで問題となるのが、路線バスほどの大きさがあるハッブルが再突入時に燃え尽きず、残骸が地球上に落下する可能性があることだ。
研究によれば、最良のシナリオでは望遠鏡は2040年まで軌道上に留まる可能性がある。一方、最も早い予測では、いまから3年後の2029年に再突入の可能性があると報告書は述べている。
最も可能性が高くなるのは2033年で、いまから7年後だ。研究者らは、残骸が落下する可能性のある範囲までは予測していない。もちろん、今すぐになんらかの対処が必要というわけではない。しかし、研究チームが指摘しているのは、地上の人々に影響がおよぶ可能性の許容値をハッブルが超えてしまうことだという。
地球の表面は大半が海であり、危険な状況になる可能性は低い。とはいえ、市街地に落下する可能性もゼロではなく、万が一の場合は陸地に落下して被害を発生させることも当然あり得る。
NASAが定める基準では、公衆へのリスクは「1万分の1以下でなければならない(NASA-STD-8719.14C)」が、ハッブルはこれを超えてしまうと予想される。研究チームは「もし残骸がマカオに落下した場合、その人口密度の高さから2~4名の死傷者が予想される。香港やシンガポールに落下した場合も、少なくとも1名の死傷者が予想される」と具体的な被害想定を説明している。
現在、チームは再突入時期に影響するリスク要因をさらに考慮した追加調査を行うよう推奨している。たとえば地球の磁気の乱れなどが軌道降下におよぼす影響なども考慮すべきだとされている。
SpaceXを率いるイーロン・マスク氏は以前、同社のCrew Dragon宇宙船を使ってハッブルの軌道を押し上げることが可能だと主張したことがあった。だがマスク氏はいま現在、そのことについて真剣には考えていないだろう。Crew Dragon宇宙船は2021年の「Inspiration 4」ミッションで、飛行士を乗せてハッブルよりも高高度に到達した実績があるが、ハッブルにドッキングする機構や、高度を押し上げるための余分なスラスター燃料を搭載するといった改造が必要になると考えられる。
ちなみに、日本の宇宙ベンチャー企業アストロスケールは2026年1月8日、NASAの次世代宇宙望遠鏡「Habitable Worlds Observatory(HWO)」への軌道上サービス提供の可能性を調査する新規案件に採択されたことを発表している。同社は、2023年にはハッブル宇宙望遠鏡の軌道押し上げについても、NASAに対し提案を行っていた。
- Source: NASA
- via: Interesting Engineering
