持ち運びしにくそうな携帯ゲーム機が爆誕

レゴ風“巨大ゲームボーイ”を自作。EL画面でレトロ風表示を実現

多根清史

Image:LCLDIY

先日、レゴブロック製の「LEGO GameBoy」を改造し、実際のゲームボーイ用ソフトを遊べるようにした改造マニアが話題となった。それに触発され、今度は巨大なLEGO風ゲームボーイを制作したYouTuberが注目を集めている。

中国のハードウェアモッダー(既存ハードを改造する愛好家)であるLCLDIY氏は、改造版LEGOゲームボーイについて「画面が小さすぎ、ピクセルの粗さが目立つ」点に不満を抱いたという。実際、この改造機の画面サイズはオリジナルの約2.6インチからわずかに大きい約2.7インチ程度にとどまっており、現代のLCDパネルではドットがシャープに表示されすぎて、各ピクセルがブロック状にくっきり浮かび上がってしまう。

そこで同氏は、発想を転換し、巨大ゲームボーイを自作することを決意した。LEGOゲームボーイをベースに大型化した筐体を設計し、光硬化樹脂を用いた3Dプリントで約1週間かけて出力。LEGO風の塗装と組み立てを施したうえで、内部にはIntel 845チップセットのマザーボードを搭載し、エミュレーション環境で各種ゲームを動作させている。なお、著作権面をどのようにクリアしているかは明らかにされていない。

本作でもっとも注目すべき点は、「約10インチという巨大画面で、ピクセルをぼかしたレトロ調表示」を実現している点である。ディスプレイには一般的なLCDではなく、EL(電界発光)スクリーンを採用。これは電圧を加えることで蛍光体材料が発光する仕組みで、有機ELの前身にあたる技術だ。

ELスクリーンは自発光のため薄型・軽量である一方、数ミリ秒の残光を持ち、CRTに近いぼかし表現が可能となる。そのため、シャープすぎるLCDとは異なり、レトロゲームの荒いドットを柔らかく表示する用途には適している。

さらに同氏は、CHIPS 65548/5をベースとしたカスタムPCIグラフィックスカードも自作している。このCHIPS 65548は1990年代に産業用ELディスプレイ向けとして設計されたPCIグラフィックスチップで、現代のGPUでは扱えないアナログ同期信号を出力できる点が特徴だ。CRT風の柔らかな発光表現を実現するうえで、欠かせない存在となっている。

完成した巨大ゲームボーイは大型ボタンで実際に操作できるほか、本体に収納された外部コントローラーによるプレイにも対応する。Hackaday.ioのページでは、基板データやBIOS、STLファイルなども公開されており、3Dプリンターや自作スキルを持つ人であれば、自ら挑戦することも可能だ。

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