無料配布ゲームをEGSでもらうのは浮気?
Epic GamesストアはなぜSteamに勝てないのか? ゲーム開発者が指摘する“大きな差”

PC向けゲームプラットフォームのEpic Gamesストア(EGS)が立ち上げられてから、すでに7年以上が経過した。
Epicは当初からValveのSteamを強く意識し、開発者に有利な収益分配(開発者88%/Epic12%。Steamは70%/30%)を打ち出したほか、ユーザー向けには独占タイトル(現在は例外的に残るのみ)、無料ゲーム配布、割引キャンペーンなどを展開し、クリエイターと消費者の双方を惹きつけようとしてきた。
その結果、今年初めには登録ユーザー数が累計2億9500万人を超えたと公式に発表している。しかし、それでもValveに大きな打撃を与えたとは言いがたい。Steamは2か月前、同時接続ユーザー数が4160万人を突破しており、この数字はSteamDBによって客観的に検証可能なものだ。一方、EGSには同様の計測手段が存在せず、実際の同時接続数はこれよりはるかに少ないと考えられている。
今なおSteamがEGSよりも圧倒的な支持を集めている理由について、あるゲーム開発者は「Steamは “家” のように感じられるが、EGSは単なる “店” にすぎない」と語っている。
これは、ローグライクFPS『Witchfire』を手がけた開発者Adrian Chmielarz氏が、テックメディアFRVRの取材で述べたものだ。
『Witchfire』は当初、EGSの時限独占タイトルとしてローンチされ、その後Steamでリリースされて大きな成功を収めている。同氏によれば、スタジオの資金が枯渇寸前だった時期にEGSからの資金援助が大きな支えとなり、1年の独占期間中にゲームを磨き上げ、Steam版では完成度の高い形で提供できたという。
そのうえで同氏は、ユーザーが基本的にEGSを自分の “家” として使っているわけではないと指摘。「意図的かどうかは分からないが、EGSにはユーザーレビューがなく、フォーラムもない。そこにあるのは “買うこと” だけだ。だから、感情的なつながりを持ち、関わることのできる店には常に負けてしまう」と語っている。
さらに、EGSが「ショップ」であるのに対し、Steamは「コミュニティ」だと説明。Steamにはガイド、ワークショップ、ポイントシステムなどが揃っており、ユーザーの感情的な投資を促す。「ここが自分の居場所で、ライブラリもここにある」と感じるようになるため、遊びたいゲームがEpic独占で出た場合、他の店に “浮気” しなければならない葛藤が生まれるというわけだ。
もちろん、Epicも時間をかけてストアを改善してきた。2025年のブラックフライデーには待望のギフト機能を導入し、最近ではクロスプラットフォームのテキストチャットも追加している。とはいえ、コミュニティ機能はいまだ十分とは言えない。Valveは立ち止まることなく自社エコシステムの改良を続けており、その差は埋まらないままである。
なお、12月24日現在、EGSでは通常価格5480円の『ブラッドステインド:リチュアル・オブ・ザ・ナイト』を無料配布している。期間限定のため、興味のある人は早めに入手しておくとよいだろう。
