市場に登場しなかった製品のエンジニアリングサンプルだった模様
未発表、20GBの「RTX 3080 Ti」がなぜか中古パーツ店で売られる。ただし公式ドライバーで動作せず

掲示板サイトRedditのユーザーTommyjones91氏が、中古PCパーツショップで2つのGeForce RTX 3080 Ti グラフィックカードを発見、複数個を購入した。
Tommyjones91氏は、最初はそれをVRAM容量12GBの通常の製品だと思っていた。PCに装着して起動してみた当初も問題なくディスプレイに映像が出力されたのだが、NVIDIAの純正ドライバーを導入しようとしたところ、どういうわけかインストールに失敗する現象が発生したという。
そこでフリーソフトのグラフィックカード情報表示アプリである「GPU-Z」を使い、購入してきたRTX 3080 Tiの仕様を確認。すると、VRAM容量が20GBもあり、おそらくはエンジニアリング用サンプル品だったことが判明した。ドライバーがインストールできなかったのは、それが公式サポート製品としてドライバーに登録されていなかったためだと考えられる。
Tommyjones91氏はこのグラフィックカードのひとつの外装を取り外して、実際に基板に乗っているチップを確認して、それがGPU-Zの誤認識ではなく、実際にGDDR6Xモジュールが20GB分搭載されていることも確認した。
そのままでは公式ドライバーでサポートされないため、せっかく買ってきたこのグラフィックボードが無駄になってしまう。そこで、Tommyjones91氏は公式ドライバーをインストールする際に必要で、この手のエンジニアリングサンプルには含まれていない識別子を追加付与できる非公式パッチがあることを知り、それを適用することで公式ドライバーのインストールが可能になったと報告した。
エンジニアリングサンプルとは、グラフィックカードメーカーが社内で動作検証をしたり、初期ソフトウェア開発用に製造される試作品のことだ。このようなグラフィックカードを使うことで、グラフィックカードメーカーは自社製品の製造ライン仕様を最終決定する前に、メモリ構成や電力的な制限、PCBレイアウトをあらかじめテストできる。
ただし通常なら、エンジニアリングサンプルは、用が済めばGPUメーカー(この場合はNVIDIA)に返却するか、または定められたとおりに破棄しなければならない。しかし、まれにこれらのサンプルがリセール業者の手に渡ったり、不用品として回収されたり、廃棄処理プロセスのどこかでだれかに拾い上げられたりした結果、数年後に中古市場に姿を現す場合がある。
今回の発見もこのどれかのパターンと考えられるが、Tommyjones91氏は購入時は通常のRTX 3080 Ti(12GB品)として売られていたとし、きちんと箱に収められていた様子もRedditに投稿している。
サンプル品とはいえ、製品としては存在しないRTX 3080 Tiの20GB版がなぜ存在するのかといえば、それはこの製品が作られた当時のGPU用途のトレンドが関係していそうだ。この製品が最新世代だった2020~2021年当時と言えば、現在のAIではなく、暗号通貨のマイニングが盛んに行われ、そのせいでGPU不足が起こっていた時期になる。そして、当時のうわさでは、マイニング向けとしてRTX 3080 TiのVRAM増量バージョンがいくつか登場するとの噂も出ていたという。20GB版はそのうちのひとつといえそうだ。
結局それは市販されることはなく、NVIDIAはRTX 3080 Ti用に用意したVRAMをRTX 3090または RTX 3090 Tiに割り当てることにしたのかもしれない。これら最上位製品のVRAM容量は24GBだった。
- Source: Reddit
- via: Tom's Hardware
