アップルとサムスンは有利なポジション

DRAM高騰がスマホ市場を直撃、平均7%値上げ&性能引き下げか

多根清史

Image:iFixit

今後しばらくはDRAM(メモリ)価格の高騰が続くとみられるなか、スマートフォンメーカーの中でもアップルは比較的ダメージを受けにくいとの分析が報じられている。

市場調査会社Counterpoint Researchの最新予測によると、メモリ不足と部品コストの上昇を理由に、2026年の世界スマートフォン出荷見通しは「0.45%成長」から「2.1%減少」へと下方修正された。メモリ不足の主因は、チップメーカーがAIサーバー向けの高付加価値メモリの製造を優先し、スマートフォン向けの汎用DRAM供給を絞っている点にあるとされる。

この影響で、スマートフォンの部材コスト(BoM)はすでに10〜25%上昇しており、特に低価格帯のエントリーモデルでは、2025年初頭から20〜30%ものコスト増となっているという。これらのコストを価格に転嫁する、あるいは製品構成を調整した場合、2026年のスマートフォン平均販売価格は世界全体で6.9%上昇する可能性があるとされている。これは従来予想の3.6%から、ほぼ倍増する水準である。

こうした状況について、CounterpointのシニアアナリストであるYang Wang氏は、「アップルとサムスンは今後数四半期を乗り切るうえで最も有利なポジションにある」とコメントしている。両社は高い利益率と強力なサプライチェーンを背景に、コスト上昇を吸収しやすい点が強みだという。

一方で、HonorやOPPOなど低価格帯製品に重きを置く中国メーカーは、価格転嫁が難しく、市場シェアの維持と利益確保を両立させるのが厳しい状況になると分析されている。

このような逆風のなか、多くのブランドはコスト増を相殺するため、カメラ性能やメモリ容量といった仕様を引き下げたり、より利益率の高いプレミアム製品への誘導を強めたりする可能性があるとみられる。一方でアップルは、潤沢なキャッシュとサプライチェーンに対する強い支配力を背景に、少なくとも短期的には製品価格を引き上げることなく、DRAMコストの上昇を吸収できるとの見方が示されている。

もっとも、サムスンの半導体部門が自社モバイル部門からのメモリ長期供給要請を拒否し、さらにアップルに対してもメモリ価格の引き上げを検討していると報じられていた。それでも、アップルとサムスンはいずれも他のスマートフォンメーカーに比べてサプライチェーンとの交渉力が高く、主力となるフラッグシップ機の利益率も高いため、値上げ幅を抑えることを期待したいところだ。

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