乗ってみたくなる。
フレームが“分断”されているのに快適な自転車。どんな仕組み?

自転車といえば、お買い物用のママチャリから、長距離サイクリングに適するロードバイクまで、用途も幅広くその種類も多い乗り物だ。
これまでに数々の奇抜な発明品をDIYし地下トンネルを探検してきたコリン・ファーズ(コリン・ファースではない)氏が、新たなプロジェクトでサスペンションのないサスペンションバイクを製作した。
この自転車は見ればわかるとおり、本来ならつながっているはずのフレームが2か所で途切れており、青と赤にマーキングされたカップリング部品のような物が向かい合わせに取り付けられている。
この謎の部品が今回の発明ポイントだ。この自転車はサドルポスト付近と後輪フレームの間が可動するようになっている。それは通常のサスペンション付きバイクと同じ構造だが、後輪フレーム上部とサドルポスト間にあるはずのサスペンションがない。
そして、自転車の前半部分に目を移すと、こちらはトップフレームがダウンフレームとの接合部付近で途切れている。これは一般的なサスペンション付き自転車ならほぼ見かけることがない位置だ(自転車のフロントサスはフォーク部分に装備される)が、機構的には機能するようだ。
この謎のカップリング部分には、非常に強力な磁石が装着されており、色からはSとNが引き合いそうに見える。だが、実際には同極が向き合うように配置されているため、互いに接近すれば反発し合い、結果としてサスペンションのように機能する。
ファーズ氏は、最初はサドルポストの前後に磁石サスペンションを配置したプロトタイプを製作したという。しかし、磁石の力が弱かったために、互いに接触してしまい、サスペンションとしての効果は半減してしまっていた。

ファーズ氏は、この中途半端な出来映えに終わったマグネットサス自転車をMk.Iと呼ぶことにし、改良型を作ると宣言、まずはサスペンションのための磁石をさらに強力なものにすべく、特注で500kgもの磁力をもつ磁石を入手した。そして、それを磁力に影響されないステンレス鋼のハウジングに収めて、自転車のサス構造に取り付けた。
なお、このマグネットサス自転車Mk.IIの前方側のマグネット位置は、Mk.Iとは違いハンドルポストに近い位置へと変更された。ファーズ氏は、この変更は単にカメラ写りのためだと説明している。最初のバージョンでは、またがったときに自分の足に隠れてしまい見えないため、より機構がわかりやすい前方に移動させたのだという。
完成したMk.IIの試乗シーンを見れば、前後のマグネットサスが反発することによって、段差などの衝撃をうまく吸収しているのがわかる。ファーズ氏は「草地の上でも滑るように走る」と感想を述べた。
ただ、試乗の途中でマグネットサス自転車Mk.IIにも弱点があることがわかった。それは、フレームと後輪部分を接続しているのがサスを可動させるための関節部分だけであるため、車体前半と後半部分がねじれるようにしなってしまうことだ。

こうなってしまうと、磁石の位置ずれによって反発力も弱くなり、磁石同士がぶつかってサスペンションの意味をなさなくなってしまう。この点に関しては、なんらかのレールやシャフト機構を追加して補強することができるが、今回はYouTube的にフレームが途切れている絵でサムネイルを目立たせる必要があって今回はこのような仕様にしたと、ファーズ氏は正直に述べていた。
真面目に指摘すれば、この磁石サスの自転車は普通の自転車に比べると、危険なところがあるため、素人が真似して同じ物をDIYしようなどとは思わない方が良さそうだ。動画のなかにもあるが、非常に強い磁力をもつ磁石はうっかり近くの鉄製の物に近づけてしまうと、手指やその皮膚を挟んでしまいけがをすることになりかねない。また磁気カードや電子機器を近づけると故障してしまう可能性がある。
それでも磁石の力とさまざまな工夫によって、自転車に新しい機能を追加できることがわかるこの動画は、見ていて楽しいものだ。
- Source: Colin Furze (YouTube)
- via: New Atlas
