ディズニー・OpenAIともに「対Google」で利害が一致か
OpenAIとディズニーが提携。Soraでミッキーやダース・ベイダーが正式解禁へ

OpenAIとディズニーは、動画生成アプリ「Sora」においてディズニーキャラクターを正式にライセンス使用する「画期的な合意」に達したと発表した。
この契約は、ディズニーによるOpenAIへの約10億ドル規模の株式投資の一環であり、ライセンス契約は当初3年間有効とされている。さらにディズニーは追加の株式購入権も取得しており、将来的にOpenAIへの出資比率を引き上げる可能性がある。
これに加えて、ディズニーはOpenAIのAPIを活用し、Disney+向けの新たな製品やツール、体験を構築する方針だという。また、この契約の一環として、ディズニーは従業員向けにChatGPTを導入する。
OpenAIが9月末にiPhone向けに公開したSoraは、当初、ユーザーが生成できる画像や動画に関して制限がほとんどなく、事実上著作権フリーに近い状態であった。当初はオプトアウト方式、すなわち権利者から異議が出ない限り著作権のある画像や写真を利用可能とする設計だったが、各方面から抗議が相次ぎ、ほどなくオプトイン方式へと切り替えられている。
今回のライセンス契約により、使用可能となるキャラクターには、ミッキーマウスやミニーマウス、リロ&スティッチ、アリエル、ベル、ビースト、シンデレラ、ベイマックス、シンバといったディズニー作品のキャラクターに加え、ブラックパンサー、アイアンマン、ダース・ベイダー、ヨーダなど、マーベルおよびルーカスフィルム作品のキャラクター(アニメ版)が含まれる。公式には明言されていないものの、肖像権が絡む実在の俳優は対象外と見られている。
これらのキャラクターを使った動画は、SoraおよびChatGPT Imagesで2026年初頭から生成可能となり、その一部は厳選コレクションとしてDisney+で配信される予定だという。
これに先立つ11月の決算説明会では、ディズニーのボブ・アイガーCEOが、Disney+に生成AIを活用したユーザー生成コンテンツを導入する方針を明らかにしていた。あわせて、複数のAI企業と「生産的な対話」を行っていること、そして「知的財産を守る必要性を反映した」合意に到達することを望んでいると述べている。
Soraのローンチ直後、日本のアニメキャラクターが次々と生成される一方で、なぜかディズニー関連キャラクターだけが生成できないと話題になっていたのは記憶に新しい。水面下では、ディズニーとの交渉が続けられていたのかもしれない。
その一方でディズニーは、Googleに対して著作権侵害を理由とする差し止め要求書を送付している。Googleがディズニーの知的財産を無断で生成AIの訓練に使用し、YouTubeなどのサービスに組み込んで利益を得ていると主張し、数か月にわたる警告を無視されたとも述べている。
ディズニーの狙いは、ハリウッドにおけるAI利用の基準を主導し、協力企業を優遇しつつ、敵対企業には制裁を科すという立場を確立することにあると考えられる。一方のOpenAIも、著作権を軽視してきた姿勢から転じて「責任あるAI企業」であることを強調し、生成AI分野で最大のライバルであるGoogleをけん制する思惑があるように見える。結果として、両社の利害が一致した形だろう。
