要らないケーブルTVネットワークが付いてくるから?

Netflix、ワーナー買収前にディズニー買収を検討、「割高すぎる」ため見送りの噂

多根清史

Image:Blossom Stock Studio/Shutterstock.com

Netflixがワーナー・ブラザース・ディスカバリー(WBD)の映画・TVスタジオおよびHBO Maxを含む部門を、約827億ドル(約13兆円)で買収する合意を発表したことは、ハリウッド史上最大級のM&Aとして注目を集めている。Bloombergは、この取引以前にNetflixが複数の買収候補を社内で検討しており、その中にディズニーも含まれていたと報じている。

報道によれば、NetflixはこれまでにもディズニーやFox、Electronic Arts(EA)などの大手メディア企業の買収を検討していたが、経営陣の意見が一致したことは一度もなく、結果としてすべて見送ってきたという。なお、EAはその後サウジアラビア政府系ファンドを含む投資家グループにより買収され、株式は非公開化されている。

では、Netflixがディズニー買収に踏み切らなかった理由は何か。そのひとつが “バリュエーションの差” であるとされる。ディズニーのような伝統的メディア企業は、Netflixと比べ株価倍率(PERなど)が割安で取引されている。こうした企業を大きな上乗せ価格で買収すれば、「Netflixの株主から見ると極端に割高な買い物に見える」。結果、Netflix自身の株価に悪影響が及ぶことを経営陣は強く懸念していたとされる。

また、共同創業者で会長のリード・ヘイスティングス氏は、大型買収を避け「ゼロから構築する」姿勢を貫いてきた人物である。Netflixは大規模M&Aなしでハリウッド有数の企業へと成長した経緯があり、大手メディア企業の買収には慎重だったとみられる。

今回のWBD買収がNetflixにとって好条件だった点として、「苦戦するケーブルネットワークというお荷物なしに、スタジオとカタログを取得できる」ことも挙げられる。ディズニーはESPNやNational Geographicなど複数のケーブル網を所有しているが、Netflixには不要と見なされていたようだ。

一方で、Netflix傘下となったWBDの映画ビジネスの行方には一部で懸念もある。これについてテッド・サランドスCEOは「何も変わらない」と強調する。

「これまで我々は映画ビジネスにいなかったので、多くを語ってこなかった。しかし取引が完了すれば我々はそのビジネスに参入するし、取り組むつもりだ。価値を壊すためにこの会社を買ったのではない」とのことだ

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