生成AIに否定的な人物がアップルAI責任者だった
生成AI競争に出遅れたアップル、AIトップ交代で再出発へ

アップルは、機械学習およびAI戦略担当上級副社長のジョン・ジャナンドレア氏が退任し、しばらく顧問として勤務した後、2026年春に完全退職する予定だと発表した。後任にはマイクロソフト出身のアマル・スブラマニア氏が就き、アップルのAI部門を率いることになる。
今回のAIリーダーシップの刷新は、Apple Intelligenceにとって大きな転機になると思われる。もともとジャナンドレア氏は2018年にGoogleからアップルに移籍し、SiriやロボティクスなどAI分野を統括したことが、当時は大きな期待を集めていた。
しかし実際には、アップルのAI戦略は生成AI分野で競合他社に後れをとり続けている。とくにAIに重点を置いたSiriの大型アップデートは2025年春の予定から延期された後、ソフトウェアエンジニアリング責任者クレイグ・フェデリギ氏のグループやハードウェアエンジニアリングなど、社内の他部門に移管されているという。
ジャナンドレア氏は、ChatGPTが2022年に登場した際にも、チャットボットがユーザーに大きな価値をもたらすとは信じていないと発言したことや、自社製品に他社のAIモデルを組み込むことを禁じていたとの報道もあった。現在のApple IntelligenceはChatGPTやGeminiと連携する方針であり、まさに真逆である。
ジャナンドレア体制のもと、AI強化版Siriの遅れはiPhone 16の購入者から集団訴訟を起こされていた。またAIチーム内の組織的な混乱や、AIとマーケティングチーム間のコミュニケーション不足、研究者の流出も問題視されていた。ティム・クックCEOも「AI責任者ジョン・ジャナンドレアの製品開発実行能力に信頼を失った」として担当者を交代させたと報じられていた。
後任となるスブラマニア氏は、Googleで16年にわたり勤務し、Gemini開発のエンジニアリング部門を統括していたという。彼は今年初めにGoogleを離れマイクロソフト入りしたが、すぐにアップルに移籍したことになる。アップルのプレスリリースによれば、同氏はフェデリギ氏に直属し、「アップルの基盤モデル、機械学習研究、AI安全性と評価」などの重要分野を率いるとのことだ。
クック氏は声明のなかで、ジャナンドレア氏の貢献に「感謝している」と述べ、フェデリギ氏が刷新されたSiri計画を推進していると評価している。「クレイグのリーダーシップチームにアマルが加わることでAI体制はさらに強化される」と述べており、Apple Intelligence加速のテコ入れだと示唆している。
