連邦予算を「2兆ドル」削減すると豪語していましたが…

マスク氏の「DOGEはもはや存在せず」米政府高官が述べる

Munenori Taniguchi

Image:Joshua Sukoff/Shutterstock.com

トランプ政権が発足したその日に発行された大統領令により設立された米国政府効率化省、いわゆるDOGEは、もはや権限を集約した実体的な組織としては存在しないことが、連邦政府人事管理局(OPM)のスコット・クーパー局長の発言で明らかになった。当初の予定ではDOGEは2026年7月までは存続するはずだった。

テクノロジー業界の大富豪イーロン・マスク氏と元共和党大統領候補のビベック・ラマスワミ氏が率いたDOGEは、政府機関の肥大化した財政赤字を1~2兆ドル削減することを目的とし、「より効率的で、より官僚主義の少ない、より小さな政府」を実現するために連邦官僚機構の「無駄、肥大化、閉鎖性」を排除するというのが建前だった。

DOGEのウェブサイトでは、政府関連の資産売却や、契約・リースの中止・再交渉、不正行為や不適切な支払いの抹消、助成金の取り消し、人員削減などによって、約2140億ドル(約33兆6000億円)のコスト削減を実現したと主張されている。だが、実際の成果をはかるための詳細な財務報告は公表されていない。

DOGEがもうひとつ使命として掲げたのは、政府職員の雇用を凍結・削減するという使命だった。トランプ大統領は就任初日に、移民局と公安機関の一部を除き、連邦政府機関による新規職員の採用を禁止すると述べた。しかし、クーパー局長はこれについても「もはや削減目標はない」と述べている。

大なたを振るうだけ振るったマスク氏は、5月に「特別政府職員」としての任期を終えて同省を去った。ただ、それは決して円満な別れではなく、DOGEの強引なコスト削減政策をめぐり、マルコ・ルビオ国務長官、 スコット・ベセント財務長官、さらにはトランプ大統領の首席通商顧問であるピーター・ナバロ氏を含む、政権高官らと衝突した後のことだった。

また、退任を決定的にしたのは、トランプ大統領が看板法案として発表した「大きく美しい法案(Big, Beautiful Bill)」と考えられている。マスク氏は、この法案がDOGEの活動に矛盾して政府支出を大きく増加させるものだとして公然と批判し、大統領選挙時には蜜月関係とも言われたトランプ大統領からの支持を失った。

予定よりも早くDOGEは解散してしまったが、米政府はトランプ政権が引き続き政府の非効率性を正すという使命を果たしていると主張している。ホワイトハウス報道官のリズ・ハストン氏はReutersに対し「トランプ大統領は連邦政府全体の無駄遣いや詐欺、不正行為を削減するという明確な任務を与えられており、その公約を積極的に遂行し続けている」と述べている。

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