盗難iPhoneが「音の鳴る高級文鎮」化したことも

ロシアで流出のM5 iPad Pro、アップルにリモート文鎮化される

多根清史

Image:Mr.Mikla/Shutterstock.com

アップルのM5 iPad Proが正式発表前にロシアで流出し、YouTubeで開封動画が拡散された一件があった。これら流出デバイスの多くが遠隔で “文鎮化” (使用不能)され、二度と使えなくなったと報じられている。

数か月前には、ロシアのYouTuberであるWylsacom氏がM5 iPad Proをいち早く入手し、外観やベンチマーク結果を公開していた。GPU性能はM4モデル比で30%以上向上していたものの、CPU性能の伸びは10〜15%程度にとどまるという内容であった。こうした評価は「新モデルは大きな進化ではない」という印象を与え、多くの消費者が旧モデルを選ぶ流れを生み、結果としてアップルに経済的損失をもたらした可能性がある。

大手掲示板Redditでは、ロシアで発売前に販売されていたM5 iPad Proが文鎮化されたとの報告が寄せられている。

投稿に添付された写真には、「あなたのiPadには問題がある/このiPadはサービスのためアクティベートできない。ネットワークプロバイダまたはAppleCareにお問い合わせを」および「再試行」と表示されていた。これはアップルが端末を文鎮化した際に現れる典型的なロック画面であり、不正入手品やリーク品がリモートで使用不能にされた状況である。公式サポートでも解除はできず、充電する以外は何もできない。

Wylsacom氏は入手経路を明らかにしていないが、BloombergのMark Gurman記者は「アップルの欧州倉庫から盗まれ、YouTuberに売られた可能性が高い」と述べていた。2022年のウクライナ侵攻以降、アップルはロシアでの製品販売を完全に停止しており、同国で流通するiPadなどはすべてグレーマーケット品である。

アップルが盗品をリモート文鎮化することは珍しくない。今年6月には、デモの混乱で米ロサンゼルスの店舗から複数の展示用iPhoneが盗まれた際、同社はそれらを遠隔ロックし警告音を鳴らしたうえで、「このデバイスは無効化され、追跡されている。地元当局に通報される。Apple Tower Theatre(店舗名)に返却するように」とメッセージを表示していた。いわば、派手に警告音が鳴り続ける高級文鎮である。

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