【連載】佐野正弘のITインサイト 第183回
+から2に。“毎年内容が変わる”au「マネ活プラン」は顧客に受け入れられるのか
昨今のインフレの大きな波を受ける形で、携帯各社が料金面で相次ぎ新たな施策を打ち出してきた2025年。2025年11月17日には「auバリューリンクプラン」などの新プランを既に発表しているKDDIが、再び料金に関する新たな施策を打ち出している。
それは “マネ活” 、要は通信と金融サービスを融合した料金プランに関するものだ。KDDIはこの分野の先駆的存在でもあり、メインブランドの「au」で2023年に「auマネ活プラン」を導入、傘下企業が提供する「auじぶん銀行」「au PAYカード」などと連携したお得な特典を用意したことで大きな話題となっただけでなく、自社金融サービスの契約増にもつなげている。
ただその後、競合が決済サービスの利用によるポイント還元を強化した “ポイ活” プランを相次いで導入したことから、KDDIも2024年にポイ活の要素を取り入れた「auマネ活プラン+」を提供。さらに2025年6月のauバリューリンクプラン提供に合わせ、「Pontaパス」などを追加した「auマネ活バリューリンクプラン」も提供されている。

だが今回は、さらにその内容を変更した「auバリューリンク マネ活2」「使い放題MAX+ マネ活2」を提供することが発表されている。なおauバリューリンク マネ活2と使い放題MAX+ マネ活2の違いは「Pontaパス」の有無のみであり、以後両プランをまとめて「マネ活2」と表記して説明する。
前身のプランとなるauマネ活プラン+やauマネ活バリューリンクプランとの大きな違いは、1つにauじぶん銀行との連携によるサービスが一層強化されたこと。その背景にあるのは、1つにKDDIが2025年にauじぶん銀行を完全子会社化したことであり、KDDI自身による銀行事業の強化がより強く求められるようになったことがあるだろう。
それに加えて銀行を巡る環境も変化しており、マイナス金利の解除やインフレによる家計防衛などもあって預貯金のニーズが高まっている。そこでマネ活2では、auじぶん銀行との連携をより強化するに至ったようだ。
実際マネ活2では、auじぶん銀行との連携によって新たに2つの特典が用意されている。1つ目は毎月普通預金口座に預けている残高に応じ、口座に現金がキャッシュバックされる「銀行預けて特典」。10万円以上預けることで適用され、50万円以上預けていれば最大で毎月550円が還元される。

2つ目は通信料金の支払いに、auじぶん銀行とau PAY カードを用いることで適用される「通信料お支払い特典」。auじぶん銀行の口座から支払うことでも毎月1100円、au PAYカードから支払い、その引き落とし口座をauじぶん銀行にしていれば、毎月1650円のキャッシュバックが得られることから、2つの特典を合わせれば最大で月額2200円のキャッシュバックが受けられる。

そしてもう1つ、マネ活2が以前と大きく変化したのがポイ活の部分である。auマネ活プラン+などでは、決済で還元されるポイントの上限額がau PAYカードとスマートフォン決済の「au PAY」とで別々に定められ、還元を最大限受けるには双方の決済利用額を考えて使う必要があるなど、複雑で分かりにくいとの声が多かった。
そこでマネ活2ではよりシンプルな仕組みに変更され、au PAYカードとau PAYの両方で還元されるポイントの上限が、合計で最大月額2500ポイントとなった。なお還元されるポイントは「Ponta」なので、他のサービスのように還元されるのが期間・用途限定のポイントではないことも、アピールポイントの1つとなっているようだ。

これら全てを合計すると、最大で毎月4700円相当の還元が受けられることになるのだが、では実際の月額料金はいくらになるのか。auバリューリンク マネ活2を例に挙げると、月額料金は9328円で、指定の固定ブロードバンドサービス契約で適用される「auスマートバリュー」を適用すると8228円。そこから4700円の還元分を差し引くと、実質負担額は月額3528円で済む計算となる。

もちろん還元を最大限適用するには、実質的にメインバンクをauじぶん銀行に変え、毎月の決済もau PAYやau PAYカードにまとめる必要が出てくるだろう。ただKDDIも長期契約して自社サービスを多く利用してくれる優良顧客の獲得・育成に力を注ぐ方針を示しているだけに、マネ活2はその戦略を体現するプランといえそうだ。
ただ一方で、発表直後より指摘がなされているのが、マネ活プランの更新頻度がかなり早いことである。2023年に最初のauマネ活プランが登場して以降、毎年新プランが投入されており、その都度内容も大きく変化している。
そしてKDDIの代表取締役社長である松田浩路氏も、「auの秋といえばマネ活のアップデート」と話すように、新プランの頻繁な刷新には意欲的な様子だ。実際松田氏は、顧客に向けた価値作りを頻繁にやっていく上でも、マネ活プランを「秋にアップデートしたものを出す気持ちでやってもらいたい」と、社員には伝えているという。

市場の変化が早く競争も激しくなっている状況下では、素早い動きが必要というのが松田氏の考えのようで、auの料金プランの基盤としてauバリューリンクプランがあることから、頻繁なアップデートがあっても「複雑になるとは思っていない」と松田氏は話している。
短期間で料金プランに変更が加えられることをユーザー視点から見た場合、弱点が早期に改善されるメリットがあることは間違いない。ただ一方で、メリットを得るには新プランへ頻繁に変更する必要があり、その都度前プランとの違いを比較しなければならないなど、多くの手間が発生し面倒に感じてしまうというデメリットもある。
それだけに松田氏は、「顧客を置き去りにしたい訳ではない」と話し、市場の動向を確認しながら、そうした態勢が受け入れられるかどうかをチェックしていく様子も示している。料金プランは一度契約したら長い間変更しない人も多いだけに、毎年更新されるマネ活プランをユーザーがどれだけ受け入れ、積極的に乗り換えてくれるのかは、KDDIが優良顧客を維持し続ける上でも重要になってくるだろう。
