訴えられるリスクに繋がりうるため業界も注目

任天堂特許、米国で再審査へ。『パルワールド』訴訟に新展開

多根清史

Image:: yalicn/Shutterstock.com

任天堂が『パルワールド』開発元のポケットペアを相手取った訴訟に、新たな展開が生じた。本件で争点となっている、任天堂の「サブキャラクターを召喚し、2つのモードのいずれかで戦わせる」という特許について、米特許商標庁(USPTO)が再審査を命じたと報じられている。

再審査は毎年一定数行われており、決して珍しいことではない。だが、ゲーム業界の特許や訴訟を深掘りするサイト「games fray」によると、今回のケースが “異例” とされる理由はいくつかあるという。まず、この任天堂の特許(第12,403,397号)は2025年9月に登録されたばかりであり、登録直後に再審査が命じられるのは極めて珍しいとのこと。

さらに、トランプ政権下で任命されたばかりのUSPTO長官が個人的な判断で再審査を指示したという事実も特筆すべき点だ。この人物は従来、権利者寄りの立場を取ってきたとされており、その決定は予想外だった。加えて、長官主導の再審査命令は「2012年以来」となり、実に十数年ぶりの事例である。

USPTO長官は先行技術として、2002年のコナミによる特許(US2002-0119811A1)と、任天堂自身が2019年に出願した特許(US2020-0254335A1)を挙げている。いずれも「手動モードと自動モードの双方で戦闘が可能である」という点を示しており、今回の特許の新規性を疑問視する根拠とされている。

games frayは、再審査の背景には業界全体からの強い反発があったと指摘している。実際、9月にUSPTOが本件特許を正式に付与した際、同サイトは「この特許が独占的に保護されると、既存の一般的なゲームメカニクスの採用が萎縮する」と批判ていた。その主張をきっかけに開発者やユーザーからの世論が高まり、再審査につながったとの見方もある。

任天堂には今後、2か月間の対応期間が与えられる。この間に第三者が追加の先行技術を提出することも可能だ。もし特許がそのまま有効と判断されれば、任天堂が一般的な戦闘メカニクスを事実上独占することになる可能性がある。

ただし、特許の要件は細部の条件分岐やフローに依存しているため、「実際にはそこまで一般的ではない」との指摘もある。いずれにせよ、ゲーム業界の法務関係者たちはさらなる先行事例を探すべく、動きを強めているようだ。

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