マッドマックスモードは一時停止や制限速度を積極的に無視するそうです

米当局、道交法無視のテスラ「マッドマックス」モードに関し調査入り

Munenori Taniguchi

Image:Tesla

10月上旬、米運輸省道路交通安全局(NHTSA)はReutersなどによる、テスラ車が50件以上の道路交通法違反と多数の衝突事故を起こしているとの報道を受け、FSDオプション搭載の対象車両288万台について調査を開始した。

初期の報告書ではテスラのFSDソフトウェアが「交通安全法に違反する車両挙動を誘発した」と述べ、車両が赤信号を無視したり、交通の流れに逆らって運転したりしたと報告された。

そんな折の10月16日、テスラは新たにFSDオプション搭載車に対して「マッドマックス」モードなる道交法を軽視し、積極的に一時停止や制限速度などを破るモードを導入した。このモードは、FSDによる運転モードでも特に速度高めで走行する「Hurry」モードよりも「さらに高速で、より頻繁な車線変更を実現する」とされている。

報道によれば、NHTSAはこれに対して「メーカーと連絡を取り、追加情報を収集している」と述べ、そして「運転席に座っている人間は、車両の運転とすべての交通安全法の遵守に全責任を負っている」とドライバーに対して忠告している。

テスラのCEOイーロン・マスク氏は、今年初めの政府効率化局(DOGE)での活動中、他の官公庁とともにNHTSAの職員削減も実施し、その際に「テスラに規制する」自動運転車の安全性向上チーム数名を解雇したと伝えられていた

テスラのFSD / Autopilot使用中の事故例は後を絶たず、つい先週もイリノイ州でAutopilotを使用して走行中のテスラ車が警官2人が乗るパトカーに追突する事故を起こしている。この事故では、テスラのドライバーがAutopilotを使用したまま居眠りをしていたと証言している。

「眠っていた」という主張はドライバーが自らの過失を認める発言であり、十分に反省しているようだ。だが、テスラオーナーのなかにはFSD / Autopilotは衝突を防止する機能があり、ハンドルに手を置いていなかったり前方不注視をしていても当然問題ないと主張する者もいる。さすがにそれは盲信と言うほかない。

テスラは製品のオーナーズマニュアルにおけるFSD / Autopilotの説明書に以下のように記している(以下はModel 3のもの)。

フルセルフドライビング(スーパーバイズド) では、常に道路に注意を払い、いつでも操作を引き継げる準備をしている必要があります。常に注意を怠らず、道路状況や周囲の交通状況に注意し、歩行者や自転車に注意を払い、常にすぐに行動できるように準備してください(特に見通しの悪いコーナー、交差点、狭い場所での運転時には注意が必要です)。これらの指示に従わない場合、損傷、重傷、または死亡の原因となる可能性があります。 フルセルフドライビング(スーパーバイズド) の制限事項および予測通りに作動しない状況をよく知ることは、ドライバーの責任です。

またその使用方法に関しては

不適切な使用が検出された場合、 フルセルフドライビング(スーパーバイズド) の使用は一時停止されます。詳細な情報については、「 オートパイロット の一時停止」を参照してください。

とも記している。今回の件で、もしドライバーが居眠りできるほどの長時間にわたり一切の警告が出ず、またシステム解除にもならなかったのなら、システムのドライバーモニタリング機能が何らかの方法で無効化されていた可能性も出てくる。テスラ車の場合、ドライバーモニタリングカメラがドライバーの視線をはっきりと捉えられなければ、システムはステアリングホイールのトルクセンサーでドライバーの覚醒度を判断するようになっているが、これは簡単な細工で無効化できることが知られている。

今回の事故に関して、管轄警察署の署長は「技術は進化を続けており、適切に使用すれば安全性を高めることができる。しかし、ドライバーは常に車両の安全運転に責任を負うことを忘れてはならない」と述べている。

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